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レッスン20


えーん!ショック!!

私の淡い初恋の思い出が……!理想の王子様が!




まさかの遊び人で、そんでそんで――――いわゆる『ヤリ○ン』ってヤツになってしまっただなんて……!!


結婚して可愛い盛りの赤ちゃんがいるのに、浮気??


その上更に私にまで、声を掛けて来たなんて――――えーん、節操無しだよ~正真正銘の『ダメンズ』じゃん!




「優しいから女にモテたし、来る者拒まずで遊んでいたようです。男の間では有名でした。でもなぜか女子生徒の間ではそれほど評判は悪く無くて――――器用なのか口が上手いのか、あまり恨まれてトラブルに発展するって事は無かったんですよね」




うーん、聞けば聞くほどヒドイ。




でも女子の間の評判が悪くないっていうのは、何だかわかる気がする。物腰や語り口が柔らかくて、困った時に「うんうんわかる」って話を聞いてくれる相手って……恨まれないんだよね~。女子だったら好印象を持つ人も多いだろう。


「――――仕事に関しては……営業成績はかなりいいです。やっぱり器用なんですかね、女性に好かれる得な性格というか……。仕事は真面目にやっているようなので、薄々評判を聞いている上司も強く言えないみたいで。俺は親しくは無かったものの、学生時代と違って就職すればアイツも生活態度を改めるんじゃないかって勝手に思っていたんですが――――変わりませんでしたね。いや、むしろ悪化してます」


「悪化……そ、そうですか……そんな人なんですか、今の遥人君って……」


なんか口が笑ってしまう。

ショック過ぎて、気持ちとは裏腹にヒクヒクと強張った笑顔が貼りついてしまっている。




……確かに遥人君は優しい。




小松さんのセクハラに傷ついた私の心に寄り添って、スルリと入り込んできた。それから警戒心を上手く奪って、ホテルの喫茶店に混乱している私を誘いこんだのだ。

叩みかけるように言質を取られにくい曖昧な言葉で私を翻弄し、時に強引になって部屋に連れ込もうとした。


こんな営業マンに家を勧められたら、一時間後にはきっと印鑑ついちゃってるな……!!


きっと、営業成績は優秀に違いない。上司が注意できないほどだって言うのがまた、遥人君が調子に乗っちゃう原因になっているのかもしれない。




「それに――――これも言いたく無かったんですが、さっきの飲み会にも望月の彼女――――というか、浮気相手ですかね。そういう相手がいたんですよ。うっかり今後トラブルに巻き込まれると大変なので、伝えて置きます」

「……えええ!あ、あの中にって、私以外……女性は二人しかいなかったですよね」


嘘!あんな仲の良い同期会の水面下は、もしかしてドロドロとした昼ドラの世界が拡がっていたのか……!で、でもみんな如何にも出来る……!って感じで、サッパリしていて……不倫に嵌っちゃうようなタイプの人には見えなかったよ~~!


本当に、なんで?


そして、誰が……遥人君と仲の良かったのは、ずっと隣にいたのは――――も、もしかして、た、高橋さん??え?あんな良い人が?


でも、高橋さんと遥人君の掛け合いって凄く楽しくて、二人が普通に恋人同士だったとしたら、こんなにお似合いのカップルいないって雰囲気ではあった。


例えば――――遥人君と高橋さんが付き合っていて、だけど遥人君が浮気して子供を作っちゃうとする。……それで泣く泣く優しい高橋さんが自ら日陰の身になるコトを決意した……とか?


そういうシチュエーションなら、まだ分かる。だって、高橋さんって女の私だって惚れちゃいそうなほど良い人で……。


僅か三秒で私の頭の中に、高橋さんと遥人君の悲恋物語が出来上がった。

思い込みの激しい私の脳は、変に想像力に溢れてしまっているのだ。




でもでも……!きっと高橋さんは悪くないハズ……!




すっかりさっきの飲み会で『高橋さんファン』になってしまった私は、彼女を庇う気満々になってしまった。


「そ、それはもしや、高橋さんですか?――――でも高橋さんは」


絶対悪くない筈。そう付け足そうとした私の言葉を熊野さんは遮った。


「高橋――――?高橋はあり得ない。アイツは立派な彼氏がいるから。望月の相手は『いぶき』です」

「え?」




『いぶき』




熊野さんが呼び捨てにして、横に座って一緒に笑っていた、綺麗な女性。

如何にも『出来る女』って感じの――――

私はてっきり『いぶき』さんは熊野さんに気があるのじゃないかと、穿った見方をしていた。熊野さんも満更でも無いのかもって、名前を呼ぶ様子を目にして悲しくなって。

その後遥人君が言った意味深な台詞に動揺せずにはいられなかった。―――遥人君が喫茶店に行きたいって言って有耶無耶うやむやになったけれども……。


「『いぶき』さん……が?え?」


私はパチパチと数回瞬きを繰り返した。

『いぶき』さんと仲が良いのは、熊野さんじゃ無かったっけ?

あ、でも熊野さん『いぶき』さんと一緒に帰るハズって遥人君が―――


「あ、あの~いぶきさんは熊野さんと仲が良いって遥人君が……二人は一緒に帰る予定だから放って置いたほうが良いって。熊野さんも名前も呼び捨てで……ってあれ?そう言えば遥人君も呼び捨て……?」

「なっ違います……!『いぶき』は苗字です。伊太利いたりあの『伊』に風が吹くの『吹』で『伊吹いぶき』ですっ。名前を呼び捨てになんかしていません。」


熊野さんは、全力で……と言う感じで熱心に否定してくれた。

思わず肩の力が抜けてしまう。


「そうなんですか……私、てっきり……」

「ずっと伊吹も望月と付き合っていたようです。望月の本命が伊吹だったかどうかは分かりませんが、今の奥さんと付き合いも被っていて……結局奥さんの方に子供ができて、望月はそちらを選んだ事になるのでしょうが。まぁ―――とは言っても伊吹と奥さん以外にも、色々付き合いがあると噂で聞いた事があります。詳しくは知りませんが……」


『付き合いがあった』では無く『付き合いがある』だって。現在進行形だっ……!

あ……じゃあ、熊野さんが言っていた『御用達』って……


私は恐る恐る尋ねた。




「も、もしかして、さっきのあのホテル……遥人君の『御用達』って、う、浮気するための定番のホテルってコトだったんですか?!」




熊野さんは神妙な表情で、コクリと頷いたのだった。



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