第四話 ピンチなようです
「こおおおおおんっ!」
ほら来た。メロンパン投げ出して来やがったよ。
千尋は投げ出されたメロンパンを上手くキャッチして、目をこれでもかというほどに輝かせている。
「言ったね?言ったね?よし、ヤろう!今すぐヤろう!!保健室行こ!!うん、そうだ、行こう行こう!いっやああ、久しぶりのS●Xかー、興奮するぅっ!」
鯨は、今にも鼻血を出しそうな勢いで、俺の肩を掴む。
あー、もうダメだわこれ。
スイッチ入ってるわこれ。
てか、何故に誰も助けてくんないんだよ。
あたりを見回してみると、周りは女子が多くなってきていて、しかもその手には携帯やカメラ。
ま、まさかだとは思うけど・・・。
「うふふっ、鯨様の攻めが見られるなんて!しかも、ホモ!!」
「こん先輩が受けとか、超美味しいじゃん!!やばー、喘ぎ声すっごい聞きたい!」
「鯨様には劣るけど、こん先輩もちょっと美形・・・だよね!」
「あたし的には鯨様と薫さんの組み合わせが良かったけど、まあ、いいか。」
がやがやと廊下が騒がしくなる。
うん、やっぱりこの人たちアレだわ。
ホモが大好きな腐女子の方々だわ。
千尋とは少し違うタイプみたいだけどね。
こいつら、ついてくる気だろうな。
だけど、悪いが俺はヤらない。絶対。
俺は鯨に笑いかける。
「あっはは、鯨ったら誤解だよ!」
「誤解?」
鯨はきょとんと首をかしげている。
俺は笑いながら、続ける。
「それ言ってたのは薫だよー!お、俺がそんなこと言うとでも思う??」
「うん、思う。」
おい、真顔で言うんじゃねぇ。
俺もお前と同じみたいに思われるだろうが。
だけど、薫のせいに上手くしとけばなんとかここから逃げられる。
よし、あともう少し──
「あれぇ?どうしたの、こん、鯨。」
突如現れる幼気な声。聞き覚えのある、出来る事なら今聞きたくない声。
「あ、薫じゃん。」
さ、最悪だ・・・!
どうしようどうしようどうしよう!!!
嘘がばれたら鯨の好きなようにされ、腐女子の皆様からの熱い視線と、蔑む目がもれなくプレゼント。
それに加え、周りの人からの信頼も失われかねない。
あー、くそ。
「こんー、がんばれよー。」
「うるせええっ!もとはといえば、お前が元凶だろうが!佳蓮!!」