第三話 メロンパン争奪戦
「ちょっと、鯨!!これは私が先に目を付けてたメロンパンなの!あんたは黙って男のソーセージでも咥えてなさいよ!!
この変態ホモ照り焼き野郎!!」
「ああっ?ざけんなよ、お前こそそこに売ってる素朴なコッペパンか、佳蓮の○○○でも頂いてろよ!!二次元ホモオタク!!」
鯨と千尋はいつものように口喧嘩を繰り広げている。
しかも、人が多く集まる購買で、放送禁止用語連発。
俺と佳蓮は苦笑いしながら、二人の喧嘩を眺めている。
メロンパンが大好きな二人はいつもメロンパンを買うのだが、今日は最悪な事にメロンパンが1つしか売れ残って無かったのである。
購買のおばさんは困ったように笑った。
「こん、二人を止めて。っておばさんが目で訴えてるよ。」
佳蓮は肘で軽く俺の腕を突く。
おばさんはうんうんと激しく頷いた。
止めろだって?無茶言うな。
あの二人の喧嘩に巻き込まれれば、骨折じゃあ済まされない。
空手の黒帯を持つ千尋と、合気道をマスターした鯨。
そんな二人の喧嘩を止めるくらいなら、薫と一緒に女装してる方が段っっ然マシだ。
「無理無理。大体、佳蓮も知ってるだろ?あいつらの喧嘩を止めに入った後の、俺の末路。」
「あー、あれね。
うん、確か、両足両手骨折、頭にたんこぶが3つ、歯が5本抜けたんだっけ・・・。」
佳蓮はその時のことを思い出したようで、ひくひくと顔を引きつらせている。
あの時の俺は馬鹿だった。
普通の喧嘩とは違うことくらい、誰でも見て分かったのに。
千尋と鯨は集中すると周りが見えなくなるタイプだった。
お前らやめろよー。なんて、軽く止めに入った俺が馬鹿だった。
二人の肩を叩くと同時に、千尋のキックと鯨のグーパンチが俺の腹にクリティカルヒットした。
あの後、巻き添え喰らってボッコボコにされた。
走馬灯ってあるんだって事が分かった日だ。死ぬ覚悟なんかする暇も無かった。
「でも、どうしよ。このまんまじゃ私達お昼食べれないね。」
「そうだな・・・。」
考え込んでいると、佳蓮は「あ!」と声を出した。
どうやらアイディアが思いついたようだ。
悪い予感しかしないけど。
「くじらぁーっ!!」
佳蓮は叫ぶ。
が、勿論鯨は聞く耳を持たない。
しかし、佳蓮は続ける。
「もしー、鯨がパンを千尋に譲るならぁー、『俺の事をめちゃくちゃに犯してもいい』ってこんが言ってるよぉー?」
「・・・っは?」
悪い予感的中。
鯨はポカンと口を開けていたが、すぐにニンマリといやらしく笑った。