第一話 朝ごはん
「なあ、こん。腹減った。」
桜花は足をバタバタさせ、おかっぱをわさわさ揺らしながら暴れている。
「んー、待って待って!今できるから。」
俺は皿にハムエッグとミニトマトを乗せて、二人分をテーブルへと運んだ。
それと同時に、チンッというパンが焼きあがる音がした。
「はい、お待たせ!」
トーストを桜花の口元に差し出し、「あーん」なんてやってみた。
内心、胸の高鳴りが半端じゃない。
桜花のデレを見た日には、きっと俺は桜花を押し倒していることであろう。
「ん、ありがとう。」
しかし、桜花はツンデレ中のツンデレ、というか、ツンツンツンツンツンデレ位なもんなので、あーんはしてくれなかった。
「んお?お前料理上手だな。」
「そりゃまあ、一人暮らしだからこれ位できないとね。」
「ふーん。いい主夫になるな、お前。」
「桜花の滅多にないデレ頂きました!!
ついでだし、襲ってもいい?」
「ぶっ殺すぞ。」
桜花と暮らすことでいくつか分かったことがある。
まず、桜花は正真正銘の殺し屋。
年は6歳で、平安時代あたりの時に天皇に気に入られ、ボディガードという口実をつくって、天皇の元に置かれていたらしい。
色々あって死んでしまい、今は幽霊みたいな存在になった。
どうして死んだかを聞いたら、
「それは言えない。というか、もうそのことは聞くな。次また聞いたら両目潰す。」
と言われたので、知らない。
と、まあこんなところだ。
「おい、お前の親友が迎えに来たぞ。」
と、桜花はトーストを頬張りながらドアの方を親指で指す。
「うっそん。全然食ってない!」
「ぼーっとしてるからだ。あたしが食べておくから、行け。」
「うん、そういう問題?」
とは言え、友人がドンドンドンドン五月蝿いので行くことにした。
「それじゃ、行ってきまーす!」
笑顔で言う俺に、桜花は「おう。」とだけ答えた。