復興支援1
遅くなりました。ちょっと体を壊して入院してきますので、次もちょっと遅れるかもしれません。
リザードマンがドっと音を立てて倒れこむ。
これが神の尖兵で間違いは無いだろう。やりも業物のようだったが、溶かしてしまって勿体無かったかね。
それにしてもこいつはこいつで、目的も何もわからなかったね。
前回の奴はゲームの世界だと思って好き勝手してたようだが、こいつはこの世界のもともとの住人なのだろうか。
憑依とか人間じゃないものに転生とか色々考えられるが。
兎にも角にも後始末からだ。
この都市の復興、というと大げさだが。さっき拾った子のケアもしなけりゃならないし、翡翠も迎えに行かなきゃならない。
とりあえずニズヘグ氏に会ってくるか。
ああ、その前に生き残りのリザードマンがどうなったか確認が先だな。
「これはニズヘグさん、無事で何よりでしたね」
網を張りながら都市内を動き回り、リザードマンの生き残りを探している最中のこと。
燃えた家や瓦礫を撤去する人々がいた。それを指揮しているのがニズヘグ氏だった。流石に疲労の色が濃いがそれでも精力的に仕事をしているようだ。
なるほど流石に商会の会頭ともなると有能なのだな、と思わせてくれる。
「こ、これはアリス様。この度はなんとお礼を言っていいか」
そういって深々と頭を下げる。
「いえ、お気に為さらず。仕事、と言う事になっていますのでね。リザードマンの生き残りを探しているのですが、どこかで見かけましたか?」
「いえ、一応捜索隊を編成し探させて居ります。アリス様が敵のボスと思われる者を退治してくださり、後は散り散りに逃げていくのが確認できています」
あのボスが纏めていたのは間違いないだろう。さて、それならもう組織だって行動するような力は失われたと見るべきかね。
「ふむ、ではまあ一先ずは大丈夫でしょうかね。ああそうだ、手伝いましょう」
依頼主の心象は稼いでおいて損はないだろう。それに回復ならまあ得意分野だ。
ニズヘグ氏に頼み住民の怪我の状況を調べてもらう。前世で行ったトリアージのような事をしようと言うのだ。
トリアージは多数の傷病者に対する治療の優先付け、であり、基本的には簡単に区別がつくように造られている。
この世界の住人に当てはめるのもどうかと思うが、まあ効率は上がるであろう。
やはりニズヘグ氏は有能なようで、次々と怪我人が分けられていく。前世との違いは黒タッグ相当、つまり死者か治療不可能の患者が多い事だ。
「しかし、しかしだ!!! この回復魔術であれば死んでさえいなければこの通りよ!!」
前世ですら手術室を占拠し、その後の濃密治療をしてすら3割助かれば奇跡、となるような重傷者が見る見る治っていく。
前世の自分からすれば悪夢のような光景だが、魔術の万能性は全く恐ろしい。
まあおそらくは、あれもこれも全て高い魔力量が支えてくれている。
周りの話を総合すると、今の俺の魔力量は常人の100倍以上あるだろう。一流の魔術師でさえ10倍がいいところだ、という。
魔術師の魔力量が少なく感じるが、一桁違えば相当な物なのだろう。
俺はこの高い魔力量に物を言わせて、魔術や魔技を相当無茶苦茶に使っている。魔方陣の多重展開、連続発動、魔技にしても人力をはるかに超える力を出すのは骨だ。
高い魔力でムリヤリ動かしているのだ。相当無駄も多いだろうが、その無駄が気にならないほどの魔力量。全く物量とは恐ろしい。
つらつらと自分の魔力について考えながら治療していく。
幸いにも、あのリザードマンの尖兵は住民を支配する気でいたようだ。見せしめに殺してはいるが破壊の割に被害が少ない。
リザードマンが何故人間なんかを支配する気でいたのだろうか。何故だろう。正直この世界で生きていて一番不便なのがこれだ。
情報の流通量が以上に少ないのだ。多くの情報から取捨選択する、という前世で使ってきた経験が全く役に立たない。
大量に情報を並べられ、さあどう思う。ならば実にやりやすい。毎日やっていたことだ。
だが少ない情報を渡されても困ってしまう。仮にその情報が本物だとして、それを判断する、あるいは裏付けるソースが無い。
仮にその情報が偽者だとしても、それ以上の情報は収集できない。全く困った世界である。
今回の件で言えばリザードマンは他種族を支配するのか、しないのならば今回の行動は何だ。そういったものが調べられない。
もっとこう大図書館とか行って情報を収集しないトなあ。
そうこうする内に街中へ哨戒にでていた者達が戻ってくる。どうやら街中に潜んでいたリザードマンはすべて掃討出来たらしい。
一番最後になったのはやはり翡翠だった。翡翠らは立派に殿を務め、残っていたリザードマンを全滅させ、こちらに向かったとの事だ。
「よし、翡翠ご苦労だったね」
「主様……嬉しい……ご報告」
そういうと翡翠は耳元に口を寄せてきた。
それによるとあのリザードマンたちがねぐらにしていた洞窟。あそこは予想以上に深い深い洞窟であり。何かの魔術的な防御までかかっていた。という。
それだけで判断は出来ないが、先史時代の遺跡の可能性がある。というか今って何年名だろうか。
このもろもろの片づけが終わった後にでも行って見るか。
仲間内が皆戻ってきたので、大した労も無く災害復興は成った。もとよりは買いも小規模だったし。俺が戦った所が一番被害が大きい。何しろ『機銃掃射』重ねがけで文字通り更地にしてしまったからだ。
重機関銃の多重掃射なんてしたら瓦礫の山だ。おまけにこれも魔力に物を言わせて弾切れなしと来る。我が事ながら恐ろしい話だ。
一通り治療が終わった時には日が変わろうかと言う時間だった。
ニズヘグ氏の屋敷で報告のすり合わせをする。
「本当に、本当に有難うございました。皆様がこのような危急に居られた事、神に感謝したく思います」
「あれらは神の尖兵と名乗っていた。感謝するのはお勧めできませんね」
「何ですと!!」
「あれらが多々自称でそう名乗っているのか、それともこれまでにもあれらのような物はいたのか。ニズヘグさん、何か知っていますか?」
この世界の人間の認識を知っておきたい。今までの周囲は少々特殊な立場や種族が多くて、一般人の考えや情報などが不足していたのだ。
商会の会頭を一般人といっても良いのかは不明である。
「神の尖兵、ですか。古い文献、それこそ魔道科学の時代まで遡ると、その名前が出てくると言う話は聞いたことがあります」
「魔道科学、の時代ですか」
「はい、所謂崩壊前後の時代です。魔道科学の文献には崩壊の原因こそ、この神の尖兵であるとしています。が、詳しい事は何も判っておりません」
「そうですか…………」
かなり詳しく知っている気がするが、この程度は一般常識なのだろうか。そもそもが魔道科学なるものもはじめて聞いた、当然意味は判らない。
一旦そこで神の尖兵についての話は終了する。
次に復興支援等の話になるが、そうなると瓦礫撤去程度でしか役に立てない。先にも言ったが瓦礫自体は余り多くないので、そこまでの手はいらないのではないだろうか。
どちらにしても復興支援は手伝う、その後の身の振り方はその後で考えるとした。
ニズヘグ氏の様子から察するに、この都市に残ってほしいのであろう。
判らないでもない。今回の件でかなりの痛手をこうむった。それはこの都市の防衛戦力も例外ではなかろう。
この世界の情勢なんぞ全く判らないが、弱みを見せれば襲われる位は何処の世界でも一緒だろう。
互いのポケットに手が入っていて殴れない、という段階まで進んではいないはず。
ともかく残るかどうかは話し合ってからだね。




