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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
84/105

中隊長の話


「これは今回の謝礼と、聞いているかも知れませんが、盗賊団退治のための部隊への参加要請のための金です」

「討伐の部隊、ですか?」

「ええ、流石にこの規模の盗賊団を1チームや2チームではどうにも出来ませんでな。この都市にある騎士団と冒険者のチーム・そしてうちの私兵を編成しての討伐を考えております。今は少しでも戦力が欲しい、聞けば貴方がたはたった2人で20人を圧倒したとか。ぜひ、お力をお借りしたい」


「流石に可笑しな話だと思いますね。確かに盗賊を撃退はしましたが、ここまでの金を詰まれるほどとは思いませんし、そこまで切羽詰るほど盗賊団が強いなら、もっと本格的に編成を見直すでしょう。本当は何をさせたいんでしょうかね?」

 当たり前すぎる質問に商人はにこっと笑った。悪徳商人顔なので悪い企みにも見えてしまう。


「いやいや、まあ怪しいでしょうなあ。正直に言いますとな、これは顔つなぎの意味合いなんです。こうしてパッと見ただけで大したもんだと判ります。お連れさん、御2人とも人間ではない、でしょ?」


「おっと、見る人がみれば判るとはいえ、貴方は夜族か何かで?」

 エリスは何かそういったオーラを出しているらしく、判る人にはすぐ招待が露見する。琥珀は良く見ると肌の質感などが人形だ。


「人間ですよ、まあ商人ですから、多少目が利くとは自負してます。それでまあ貴方がたは儲かりそうだ、これは完全な勘ですがね、意外と大事な物で」


「ふーむ、此方が出来るとしたら魔物の素材などをギルドではなく、此方に卸す事くらいですがね」


「くっくっく、十分ですよ。ギルドの専売に近いもんですからなあ。しかし、そんな事したらギルドに睨まれますよ?」


「もう、手遅れなので。決定的に敵対しない限りはランクも上げたいので向こうにも持っていきますがね」


「それは当然そうでしょう。それでもありがたい、という話ですよ。それにまあ、ほとんどお礼のような物です。本当に、助けてくれて有難うございました」

 商人はもう一度深々と頭を下げた。結局理由は判らないが、思いがけず大金を得られた。

 この大金なら討伐に参加するのも止むなしだろう。一応琥珀に頼んで情報収集をしてもらう。


 商人に情報を問うと、忙しいので外さねばならないと言う。結局、この家の私設部隊の中隊長で、一度討伐に行った人間に話を聞くことが出来た。




 盗賊団の情報、ということで全員に集まってもらう。というか、商人との話し合いが終わったので、全員が集まった部屋に中隊長さんを呼んでもらったのだが。


 商人と会見した部屋ほど豪奢ではないが、リビングのような広い部屋で、少々大所帯になってきた面子がそろっても結構な余裕があった。


 ソファーに座る。両脇にはエリスと琥珀、肩の上には翡翠、そして輝夜は床に座って俺の脚にしなだれてくる。ソファーの後にはグラン・シュラ・ノワールが威圧感凄まじく立っている。


「なんだこれ、どう見ても悪役じゃあないかね」

「こういうの、好き」

 意外にも琥珀が発端だったようだ。


「良いですな、こうして並ぶと我ら幹部の様に見えて大変に誇らしいです」

「うん、それは確かにあるな。しかし何で俺が真ん中に?」

「お兄ちゃんは、幹部で、一番えらい?」

「はい、その通りです。分家筆頭のグラン長兄は最高幹部と言うところでしょう」


 なにやら後ろの方でも盛り上がっている。


「うーむ、これだと見た目のインパクトに欠けよう。こういうのはどうだ?」

 足元で絡まっていた蛇君、改め輝夜はその身を蛇に変じると体に巻きついた。


「あ、こら! 兄さんに絡まらないでよ。私の接地面が減るでしょ!」

「良いではないか、見た目のインパクト最高じゃぞ?」

「いやいや、君、確かにインパクト最高だろうけども、これでは俺が食べ……」

 予想通りのタイミングで中隊長はやってきた。


「………………」

 彼は一度ドアを閉め、しばらくすると何事も無かったようには行ってきた。そのころには此方も何事も無かったように座っていた。暗黙の了解で、俺と彼は頷き合ったのだった。




「当商会所属の私設傭兵部隊『齧りつく(ニベル)』の第2中隊長であります」

 若干引きつった笑顔で挨拶をする青年。鍛えこまれた体躯に、傷だらけの皮よろい、腰の剣とまさにファンタジーな傭兵だ。


「宜しく願います。冒険者チーム『ケイオスクロスクラン』、リーダのアリスです。ニズヘグ氏に依頼されて、盗賊団討伐隊へ参加することになりました。と言っても、ごらんの規模ですので予備兵力程度に考えて頂ければ、と思います」


「いえ、馬車を助けて頂いた件は聞いております。一度とはいえ討伐に参加した者としては、大変心強いです。何しろあれらは強い」

 中隊長は眉をしかめて身震いした。


「そもそも、この商業都市ザイルはその名の通り、商業で成り立つ町です。その中でも3つの商会がトップに立っています、当ニーズヘッグ商会もその一つです」

 3つの商会はそれぞれ、ニーズヘッグ・ラタトスク・フレスベルグであり、それぞれ手広く商いをしている。そして領主はそれぞれの商会主からの任命を受けるため、実質この3つの商会がこの都市を支配している。


 ザイルは相当大きな都市であり、まさに都市国家という威容を放っている。近隣の農村や港を支配しており、立派な国だ。つまり俺が先ほど会ったのは、この国のトップの一人と言うことか。


「そんな都市でありますので、各商会が施設の傭兵部隊の名目で軍隊を持ち、領主の騎士団は極小規模なのです。あの盗賊団が現れたのは半年ほど前でしょうか。最初は小規模な盗賊団だったのです」

 

 話によると、最初は極普通の人間による小規模な、何処にでもある盗賊団だったそうだ。団、と言うのも憚られる程の小物。特に何の警戒もせず、領主が持つ小規模な騎士団による殲滅作戦が取られた。


 しかし、なぜかそんな小物相手に騎士団は全滅。ほうほうの体で逃げ出し、損耗率4割の大惨事となった。


「そのときに初めてリザードマンが確認されたのです」


「リザードマンってのは独自の文化を持っていると言う話ですが、そんな奴らが人間と群れを?」

「判りません。ただ人間の方は度重なる討伐でもう残っていないでしょう。リザードマンのほうは増え続けています。いくらリザードマンが卵生で、卵を孵す環境が良くても、すぐに大人にはなりません。何らかの方法で増えているのだとは思いますが」


「それが積もり積もって数百体か。正確な数は、判りますか?」


「いえ、正確には。ただ400は超えているでしょう」


「それで今後も増える可能性があると、なるほどさっさと討伐したくなる訳だ」

 眼鏡で鑑定したリザードマンの生態に、そんな情報は無かった。『鑑定真贋』でないと判らない様な情報なのかね?

 それにしても、実に厄介だ。俺と集団戦は相性が良いとはいえ、どうなる事やら。



 その後、リザードマン1体1対の強さや、根城にしている場所の情報を聞いて中隊長は退室して言った。


「さて、如何かね。君たち」

 方針としては情報収集してから、と言う事になっていたので確認する。すでに報酬は先渡しになっているようだが、正直契約した訳でもないのでなんとでもなる、と思うんだが。



 結論としてはやはり、参加する、と言う事になった。

 シュラの言った、収入が必要、と言うのも勿論だが相手の繁殖能力がなんらかのスキルだったら? たとえばあの少年のように『神の尖兵』であるなら、放置すれば面倒な事になるかもしれない。


 本来なら危うきには近付きたくないのだが、あの少年も放置すればもっと巨大な軍を持っていただろうし、モンスターも強化してきただろう。

 今回の盗賊がどんどん増えるなら、早めに叩き潰したい。盗賊団が神の尖兵である確証も無いのだが、どちらにせよ増えるなら早めにつぶした方がいいだろう。



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