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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
8/105

長虫

連日投稿している感がありますが、少ないながら読んで頂けている様で幸いです。もし宜しければ、ご意見・ご感想など頂けると、作者は調子に乗ります。

 

他の作品を読ませて頂きまして、1話が長いように感じましたので調整しております。

もう駄目だ。人間かって聞くって事は、もう人間以外の何かだもの。まあ目の前にいるのが巨大な爬虫類だもの、基本的にもう駄目だね。

 目の前にいたのは巨大な蛇だった。前世では蛇なんて殆ど見なかったが、写真等で見たことのある蛇よりも巨大だった。推定8M以上で成人の大腿程度の太さがある。

 さて、どうしようかね。魔力が十分なら勝機もあるだろうが、今の魔力ではなあ。

 とはいえ、殺されることは出来ない。妹君にはまだ自活の術が無い、ここで死んでしまっては妹は元の虐待児に戻ってしまう可能性すらある。他人の人生に干渉して助けた、という事は少なくともその一生に責任を負う事態だ。流石にここで死んでしまうのは無責任だろう。

「人間がこんなところで何をしておる?」

 幸運なことにいきなり襲っては来ないらしい。爬虫類が人語を解するってのは解せないし、発声器官はどうなっているんだ、とも思うが話合いの余地は有るかもしれない。

「自分は近くの村に住むアリスという者です。狩人を生業としており、この森へ出入りしております」

 そういって深々と頭を下げる。人語を解する蛇ってのは俺の感覚では、神かその眷属だろう。助命嘆願を除いても謙る必要がある。

「そうか、そこに転がるも狩りの成果か?」

 蛇はくいっと顎で熊をさした。実に器用なもんだねえ。

「いえ、そうではありません。ここに来た途端にこの熊に襲われまして。撃退したものの疲れて果てていた所です。よもや、蛇様の獲物でありましたでしょうか。もしそうならば大変な失礼を……」

「いや、そうではない。ふむ名乗りが遅れたの、許せアリスとやら。我はこの森の主イーグルの眷属である」

「はっ、自分の如き矮小な身に勿体無きお言葉」

「のうアリスとやら、そう硬くなるな。人間と話すことなぞ、我も久方でのう。互いに名乗りあったからには我らは友であろう」

 やけに親しげな蛇だね。しかし直ぐに殺されるということは無さそうだ。

「重ね重ねのお言葉ありがとうございます」

「堅っ苦しいのう。おぬしそこな獣を仕留めたのであろう? なぜそうも謙る」

 この熊重要人物だったりしたのか? 強かったしねえ、少々まずい事態かもね。

「察しの悪い身ゆえ、用件を端的に願います」

「ん、そうか」

 蛇さんは頷いた風だ、細かい感情の機微までその表情と仕草でわかる。全くファンタジーの世界は面白い。

「我の用件はその獣よ。最近森に入り込んだ魔獣でな、人間ももちろん襲うがそれ以上に手当たり次第獣を襲いおってのう。我が上役殿より討伐の命を受けたのだ。しかし、正直我は戦いが本分ではない。さりとて何もしない訳にもいかず、仕方なく様子を見るためにこの熊を追っていた、ということなのじゃ」

 見た目のソレと違って随分と砕けた蛇さんだね。戦いが本分ではないか……。考えたこともないけど、確かに蛇が熊と戦うのは辛いかねえ。

 まあここで大事なのは、何とか殺されずに済みそうだという事だけだがね。

「はっ! 謀らずもお役に立てた様で何よりでありました。この熊の遺体は献上致しますゆえ、どうぞお納めください」

「ほう、くれるのか。それは有り難い事、我も上役殿に顔が立つという物よ」

 フッと安堵した、その弛緩した空気を悟られたのか、蛇さんは目を細めて問うた。

「主は何を怯えておる。我に食われるのが怖いか?」

 蛇は笑ったようだった。

 人外と対した経験は圧倒的に少ないからねえ。怖いね。とはいえ、ただ殺されるのは御免だ。せめて足の一本でも献上すれば許してくれないかね。

「怖いです、願わくば命ばかりはお助けを。対価として熊と、不足であるなら腕、あるいは足の1本を差し上げますゆえ」

「ほう! 主は命は惜しむが身は惜しまぬのか。今まで食い散らかした人間とは大分違うのう」

 笑い声の気配か、つくづく器用な蛇さんだねえ。

「足は惜しいですが、命はさらに惜しいです」

「面白い奴、面白い奴よ。いやいやあいすまなかった、主のような人間と話したのは初めてでのう、からかってしまった」

 蛇は大笑し鎌首を大きく動かした。やれやれ、パワハラとかセクハラとかやってる方はこの程度の考えなんだろうよ。

「からかいついでに教えておくれ、主は何故に命を惜しむ。いやいや、もちろん生きとし生けるもの須らく命は惜しいが、主のそれは何か違うような気がする」

「ご慧眼……」

「それはもうやめい。主は今より我と対等である。これは願いでなく命である、我からの最後の命である」

 つまらないことに随分と必死だねえ。ただまあ此方も疲れるしな、そう言ってくれるならそうであろう。俺は元々チキンハートなんだ、コンだけストレスが掛かったら、小物特有の切れっぷりを披露する所だ。

 俺はフーっとながいため息をついた。

「判ったよ君、判ったとも。改めて自己紹介をしよう、アリス=キャロルリードだ。好きに呼んでくれたまえよ」

「くふ、全く違う雰囲気になったのう。そうじゃ、ソレでよい」

 軽く頷いて熊の毛皮に寄りかかる。疲れた、もう1週間くらい働いた気分だ。ああもう、誰も彼も死ねばいいのに。

「君の下らない冗談のおかげで此方は疲労困憊だ。人間はか弱いんだから、あまり弄ってくれるなよ」

「むう、あいすまん。我も人と話すのは久方でのう、加減が判らんかった」

「ああ、それはもう良い。次からは無しにしてくれ給えよ」

 ため息交じりの俺の言葉に、蛇はなぜか嬉しそうに頷いている。爬虫類の気持ちを察するのは難しいねえ。

「うむ、きっともうしないと誓う。で、主よさっきのことを教えておくれ。いやまあ我はこのまま世間話を交わすのもいいと思うがの」

「世間話はともかくだ、俺には妹がいてねえ……」

 会ったばかりの爬虫類に身の上話をすることになろうとは、人生は何が起こるか分からないが、前の人生では絶対に起こりえなかったことだね。

「ふむ、主の思考はとても10歳そこらの年とは思えぬの。我の言った事ではないが、何かこう、無機質な、ソレこそ爬虫類のような物を感じる。とても10年で得る物ではあるまいよ」

 本当に鋭い爬虫類だねえ。前世とあわせてもう40歳児だよ。それにまあ前世でも今世でも親に捨てられたりなんだり、見たくない物と聞きたくない物ばかりで育ってきたからねえ、そりゃ達観もするかね。

 たまに何もかも話してしまいたい衝動に駆られる。ここは俺のいる世界ではないのだと、泣き言を言いたくなる。漫画読みたいし、小説の新刊も出てるだろうし、ゲームやったりアニメ見たり、特に来期は好きだった漫画のアニメ化があったんだ。とか、色々と言いたいことはある。

 ただそんな事は狂人の戯言に過ぎないし、理解も得られないだろう。前世だって理解を得られていたとは言いがたいがね。

 簡単に言えば、ホームシックのような物だ。妹君に泣き言はいえないので、この新しく出来た友達に協力を願おう。

「君、これから言うことは真実なんだがね」

「ふむ」

「決して俺の気が狂ったとかではない、まあそう思ってくれても構わん事ではあるが」

「前置きは良いぞ、話してみい」

「では、話すがね。俺は前世の記憶がある、君らは前世って判るかな」

「ぬう、主は前世憑きか」

 前世憑き、ねえ。まさしく前世で何件かそんな事例を読んだな、信憑性はさておいて読み物としては楽しかった。

「その概念がこっちに有るのなら有り難い、そのものずばり前世憑きだね」

「前世憑きと言われる話は偶に聞くが、主のようなものは珍しいのう。多くは狂を発して廃人になると聞くが」

「そりゃ違うだろうよ、仮に前世憑きが俺と同じように冷静だったなら、そいつらは他人になんて話はしないだろうね。冷静になれなかった一部が狂人への道を歩む、と言うことだろうさ」

 これはちょっと前から考えていることだ、前世の記憶を持っている者は俺以外にもいるんだろうが、それらは外から見ても決して判らないんだ。まあ、別に良いんだがね。他人をおいそれと頼れるほど、余裕はないからね。

「なるほどのう。主のいた世界はどんなじゃった?」

 好奇心旺盛な蛇か、珍しい物がいるなあ。

「世界を……説明するのは難しい、こことは何もかも違う世界だったかね」

「何もかも」

「うん、そうだねえ」

「妹には言わんのか?」

「言ってどうにかなる物ではないでしょうよ」

「いや……そうかもしれんな。妹は聞きたいと思うがの」

「そんなものかね。まあそれは良いや。で、どうするんだね君」

「ん? 何の話じゃ?」

「俺の背凭れになっている哺乳類のことだよ、爬虫類君」

「おう、忘れとったな。ただ貰うのでは面白くなし、何か欲しい物はないかの」

「そうだねえ、逆に聞くとどんな物なら貰えるの?」

「ぬう、そう聞かれるのは初めてじゃの。そうさなあ、主が欲しがりそうな物と言えばその熊の目玉はどうじゃ?」

「お断りだよ!」

 どんな嫌がらせだよ。目玉って直ぐ腐るんだぞ。

「いやいや、その熊の目玉は高級品じゃぞ。魔力を増幅する作用のある輝石のようなものじゃ」

「ほう、魔力増幅、つまり杖代わりの宝石か。そいつは確かに欲しいね。このまま抉り出せばいいのかね」

「主は極端から極端への性格なんじゃのう。ただ取り出しても駄目じゃよ、我が後で取り出しておいてやる」

「ああ、そうしてくれると助かる。こんな化け物相手にしてただ働きではね、かなり悲しいからね」

「話は尽きぬが、そろそろ行かねば。のう主よ、また会って話せるかの?」

「君、俺と友達になったんだろう? なら直ぐに会えるよ、今日はお互い忙しいからねまた明日にでも詳しく連絡方法を決めようじゃないか、この場所でいいだろう。そこの大穴が目印だ」

 先ほど熊が体当たりで崩した崖の辺りをさす。大穴はどうにも洞窟の入り口らしい。塞いでいた岩を砕いて後ろにあったものが出てきたのか、天然の物にしては不自然だ。なんか貴重品でもあると有難いんだが、俺一人では迷うからな。蛇君についてきてもらうとしよう。

「我から頼んでおいてなんだが、主よ人ならざるもに対して気安いのう」

「友人は選ぶ性質だが、選別基準に人間かどうかは入ってないからね」

 そういって立ち上がる、大分回復したようだ。だが、痛いは痛い。何処と言うわけではないが、体が軋む感じだ。

 さっきの体当たり、壁で受けた筈なのに俺にまで衝撃が来たことに対して、少々考えては見た。

 どうにも俺の炎は魔力で生み出しているのではなく、魔力の形態変化の様らしいね。壁はまだ俺の体から離れていないので、俺ごと押されたんだ。手に持った棒を押された感覚だろう。だから体全体に圧が掛かった訳だ、その性で体が軋む。

「俺は帰るよ、又明日な、蛇君」

「そうか、では又明日」

 俺はそう言うとヨタヨタと歩き出した。ぜひとも回復に魔力を廻したい所ではあるが、いまだ魔力の残量は心もとない。回復するまで待ちたいが、正直蛇君は怖いのだ。友達にはなっても友人にはなってないからね。

 ちなみに俺の中では、親友>友人>友達>家族>知り合い>知ってる、というランクわけが出来ている。知ってる、のランクは顔と名前が一致する程度、友人は実はかなり高ランクだ。生前は6人しかいなかった。

 生前の孤独な人生の影響か、俺は人を信じすぎないことを心がけている。まあこの場合は蛇な訳だが、人と蛇とどちらが信用できるか、と問われても自信を持って蛇だとはいえないからね。しかし、そうはいっても友達だからね。理由無く反故にしたりはしない、明日までには体も治そう。

「ぬう、考えてみれば今日は只働きか。ボランティアが何より嫌いなこの俺ともあろうものが」

 ああ体が痛い。全身筋肉痛のような痛みだが、あの体当たりの衝撃だとするなら、高エネルギー外傷じゃね、これ。内臓系は大丈夫だろうか。まあ外科系の傷なら魔法で何とかなるだろうし、独歩でいけるってことは概ね酷くは無いはずだ。でもまあ歩いてきた人がすぐ死んだ、見たいな事例も合ったし油断は出来ない。

 とりあえずざっと見たところ盛大な腫れや内出血は無いから骨折はしていないだろうし、末梢まで暖かい上に心拍数は平常値で落ち着いているので、重篤な内臓の損傷もないだろう。

 痛いのは我慢しよう。我慢だ……麻薬ちんつうざいが欲しいな。

話が進みません。つまらない話にお付き合いいただき感謝しております。

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