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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
79/105

魔獣支配

 やはり魔力は気軽には上がらないようだ。気をつけた方が良いみたいだね。

「気軽に魔力の話をしただけなのに、何とも大袈裟な事になってしまったよ。軽々に人に話せないようだね」

「はっ! 決して漏らさぬ様お願い致します。大国が囲い込みに躍起に成ることでしょう。可能かどうかは別として、煩わしい事に成るかと」

「そのようだ、気を付けるとするよ」



 翌日、出発する事になった。まずは予定通り馬車を仕立て、拠点になりそうな場所を探して放浪する事に成る。

 目的地は他国にある商業都市である。一番近いのは商業都市イルであるらしいが、此処はギルド長の管轄区だ。別に何か仕出かした訳ではないが、あまり腹を探られたくない。近くなくては駄目と言う事も無いので、そのまま他国に行く事とする。


 いきなり他国に行くといっても、特に問題なくいけるらしい。関所らしき物はあるが、ギルドの身分証で通れる。元々不法入国などの概念に乏しいのだろう。

 なので、準備も無くいけるのはいいが、そこに行くまでの食料等は是非とも必要である。予定外の森暮らしで備蓄は心許ない。

 

 幸いにしてこの森を挟んで目的としている国があるようだ。徒歩で三日も歩けばその国の外周部に位置する町があるそうだ。

 国内なら乗合馬車の様な物もあるそうだが、国外になると数も減る。貿易の隊商でもあるまいし、自由に行き来できるといっても早々大人数で移動する機会は少ないだろう。

 逆に言えば、大人数の流出入がないから、適当な管理なのかもしれない。



「移動手段が徒歩と言うのは、存外しんどい物だねえ。大分慣れたとは思っていたが、徒歩三日とか良く距離が掴めんよ」

 大体日を跨ぐ事に成るから、一日どのくらい歩く計算なのか。

「このメンバーは皆健脚。普通よりは速くつく」

「俺を例外として欲しいところだ」

 実際に例外とされて、バロックに乗れ、と言われれば、やっぱりもう少し歩く、と答えるだろう。ただの我侭、愚痴である。


 幸いにして今は初秋なので、歩き易い気候ではある。加えて影に収納しているので、荷物が無い。これ以上の好条件は無いのだから、頑張って歩くしかない。



 特に問題もなく歩く。夜間の見張りは交代で行おうとしたのだが、ノワールが眠らなくても大丈夫な体をしていた為一任した。と言うよりもノワールが希望したんだがね。

 見張り、とは言ってもエリスが居るからな。正直何かに脅かされるって事は無い。今後の練習もかねてエリスには自重をお願いしている。


 エリスが居ない状態でも、見張り位はやれたほうが良い。



 現在向かっているのは、森を挟んで反対側に位置する国だ。この世界はとにかく土地が広く、食物の育成や肉の確保など、食糧事情も悪くない為領地を巡っての戦争と言う物がおきにくい。

 起き難いだけで起きない訳ではないが、少なくともこの隣の国とは問題ないだろう。


 森を挟んだ二国間周囲の環境は比較的平和だ。この世界で当たり前のように居る魔獣共も弱い物が多い。

 別の国では魔獣が大量に居る、魔の森・迷いの森等に囲まれていたり、峻険な山脈に隔てられたりしている。その為隣国と争う余裕も必要も少ない、と言う事だろう。

 何かあった際には協力しなければ成らないから、尚更だ。


 まあそんな訳なので、他国に行くとは思えないほど入国のチェック等はゆるい。元々冒険者等が居る時点で、相当に流動的なのだとは思う。


 野宿はテントを使用しているが……これ寝辛い。何しろ床は地面だ。ごつごつするし寒いし。慣れているからどうでも良い事なんだが、長期の移動になれば、地味に体力を奪っていくだろう。



 森は比較的歩きやすく、特に問題もなく、予定通り3日後にはその国の最初の町に到着した。



 最初の町はその国の外周に位置するため、今まで居た町との差異は感じられなかった。早々に宿を取って、必要物資を買い込む。

 移動に必要な、水、食料などだ。

 これは現在自分の影に収納しているけど、俺が死んだ時の事とかを含めて、馬車を買ったらある程度そちらに収納するようにしよう。


「やっぱり干し肉とか、乾燥野菜とか、良くてベーコン。保存食だから仕方ないにしても、味気無い物だね」

「うーん、兄さんには美味しい物食べて欲しいんだけど、ある程度持ち歩くなら仕方ないのかもね」 

 保存食を前にして感想がもれる。今までだって大した物を食べている訳ではないから、まあ贅沢と言えば贅沢だ。一応冷蔵庫、のような物は魔方陣で代用できるらしい。魔力枯渇で死に至るのだから、早々普及はしていないが。



 シュラに渡した、魔法の袋だが、容量はそこまで無いことがわかった。水を入れた樽3つ分位で一杯になった。重量なのか容積なのかは判らないが、食料等を入れるには不足だろう。

 元々が回復アイテムが入っていたものだし、用途が違うと考えたほうがいい。


 ともかく収納用影を作っておいて本当に良かった。荷物を持っての移動なんて相当疲労するだろう。



 今目指している商業都市だが、別に商業都市と名乗っているわけではない。物流の中心に位置し、色々な商品を扱っているので、そう呼ばれているのだ。

 物流の中心と言うことは街道が整備されている、と言うことである。なので、都市に近づけば近づくほど、歩きやすくなり、ところどころに野営用の広場まである。


 魔物も定期的に駆除されているためか、あまり遭遇することは無い。この世界は本当にいたるところに魔物が降り、人間が駆除できるのはほんの一部の地域である。その事を考えると、相当力を入れているんだろうな、と思う。



 それでも魔物は完全に駆除できないらしく、夜間狼の襲撃を受けた。


「以前の森林狼かね?」

「そのようですな。彼奴等はどこにでも降りますし、いくらでも増えますので」

 火の前でノワールと話す。網にかかって気づいたのだが、ノワールだけでも対処できるようだ。


「主人様」

 ノワールに任せる、と言おうとしたとき、フードの中の琥珀が顔を出した。右肩にのって耳の横から声を掛けられた。とても可愛い。


「ん? 何かね?」

「魔獣支配を試したい」

「ああ、あの少年から奪った能力か。如何使うものなのかね?」

 少年はその能力で、トロルを大量に使役していたが、具体的にどのような能力かはよく判らない。

 

「痛めつけて、魔力を流す。自力と魔力、自我が強いほど従いにくい」

「ほう、強制的に従わせるのかね?」

「支配した後も、自由意志はある」

 なるほど、魔獣を集めてみるのも良いだろう。


「では、やってみてくれるかね? 痛めつけるのは此方でやっても良いのかね?」

「別に構わない。でも翡翠も体を使ってみたい」

 そういえば翡翠は進化したんだった。試してみたいのだろう。


「んー、君、無理はしないでくれよ? 危なくなったら助けるが、まあそれまでは一人でやってみると良い」

「主人様の評価が低い」

 翡翠は少ししょぼんとすると、気を取り直して地面に降りた。


「主人様の評価を、上げてもらう」

 決意したように呟くと、翡翠は以前にも見た刺々しい狼の姿になる。確か、ランドドラゴンだったか。


 

 翡翠は爬虫類に似つかわしくない、低い唸り声を上げながら狼の群れへと向かった。

 狼の群れは此方からは見えない。自分は網で、ノワールは何らかの方法で位置は捕らえている。


 網での動きを視覚化すると、翡翠が一方的に狼を嬲っているのが見えた。今の翡翠はライガー位大きく、動きも早く力も強い。氷の魔術を使っていない所を見ると、全く本気ではないのだろう。

 それでも狼を圧倒していた。まあ、元々そう強くない魔物だからね、実力の程は伺えないが、以前と比べると格段の進歩だ。



 しばらく翡翠の成長を微笑ましく見ていると、そのうちに翡翠が一頭の狼を銜えてこっちに来た。

 なんだろう、猫が獲物を見せるノリだろうか。もう死んでいる様に見えるんだけど、治せって事かね。


「主人様、支配に成功した、快く配下に加わると」

「君の認識と現状には相当の差異があるようだねえ」

「褒めて。褒めて主人様」

 こちらの苦笑交じりの苦言は意に介さず、翡翠がしきりに頭を差し出してくる。まあ、配下に加わったという結果があれば狼の意思はどうでもいいか。


「おお、失礼したね君。翡翠君良くやったぞ、君見違える様に強くなったじゃないか」

 よーしよしよしよし、と翡翠をワシャワシャと撫でまくる。これで毛が生えてたらさぞかし和むだろうが、翡翠の体皮はザラザラだ。まあ冷たくて気持ちいい。


「あ、ん、んふー」

「おお、君、実に色っぽい声を出すね。ウリウリ」

「んー、主人様……好き」

「……翡翠」

「……しゅじんさまぁ」


「それ以上踏み込んだら半分にする」 

 翡翠とイチャイチャしていたら、後ろからの凍てつく様な声で我に返された。こういう時、琥珀は割りと寛容だ。付き合いが長いだけはある。

 よって必然的にエリスであるが、流石に闇の精霊は眠っていても敏感だ。


「君、翡翠は戦果を挙げたんだから、これは正当な報酬だと思わないかね?」

「竜種と子供作る気?」

 声は静かなのになんて重圧、おそらく声に魔力乗せてるな。

「いやいやまさか、だがスキンシップは大事だよ」

 一瞬にして凍ってしまった翡翠のために言い訳をする。なんとなく一応エリスが正妻、と言うことになったので、それなりに怒りの筋は通っているんだが。


「………………わかった。戦果を挙げたら、ご褒美がもらえるのね」

 暫く考えていたエリスが、そういって頷くと俺の隣に座り込んだ。


「……略取とってこい

 ボソッと呟いて、強く手を握ったかと思うと上の方からボトボトと何かが落ちてきた。

 大体予想は出来ていたが、それは森林狼であるらしかった。

 エリスは残り物、と呟く。つまり翡翠が支配した狼の群れの残りと言うことだろう。それにしても、20頭前後いる。


「翡翠君、君、これだけ支配できるかね?」

「多すぎる。群れのボス一頭を支配して、群れを動かすなら」

「おお、それで結構。やってくれ、ご褒美はまた今度な」

 そう告げると、翡翠は地面に突っ伏して前足で頭を抱えてしまった。猫とかが良くやるポーズだが、割とかわいい。


「しかたない。闇の姉様が先」

「すまんね」

「……ごめん、翡翠。あとで貸したげるから」

「姉様、それは姉様の権利。気にしない」

 そういうと翡翠はまた小さなトカゲに戻り、ボスと思わしき狼に乗って群れの纏めに入ったようだ。

 それなら此方はエリスを甘やかすとしよう。

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