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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
71/105

対人戦

突然の攻撃と、それ以上に衝撃のある敵の言葉。一瞬で頭が熱くなり、体は冷たくなる。。

「逃げろ! 全員町まで戻れ! さっさとしろ!」

 叫びながら魔法陣を展開。多重展開して目を眩ます。

「に……」

「質問は後。撤退する、急いで。アリスは足止めする気」

「しかしそれでは!」

「いいから!」

 混乱する皆を琥珀が掴んで引きずっていく。さあ、時間稼ぎをしよう。



「ひでえな、PKはありだったか?」

「プレイヤー? PK? 何の事だ。俺の友人を操っているのはお前か?」

「ああ? NPCか、イベントか?」

 悪い予感はもう止めようかな。プレイヤー、PK、NPC。ここはゲームの世界か? 

 いや、考察は後だ。こいつが文字通りのプレイヤーなら、大分まずい事になる。


 落ち着いて相手を見る。若い男だ、私見だが中学、いっても高校程度の年齢だろう。青年と言うより少年だ、それも幼い印象を受ける。 

 足元にはトロルと思われる死体が山になっている。どんな方法か知らんが、『機銃掃射』からアレを盾にしたのか。


「なんにしろ敵だな、お前か俺のファミリア部隊を潰したのは。最初の町の攻略で梃子摺るなんて、バランスわりいな」

 油断無く構える。どうしようかね。新たに得た魔術である、質量を伴っての重火器乱射、をしてもいいけど、どの程度魔力を食うかよく判らん。さっさと検証するべきだった。

使役獣召還(サモン・ファミリア)!」

 無数の魔法陣が辺りに輝き、おびただしい数の魔獣共が召還された。ああ、構えてないで攻撃するべきだった。


「さっきの娘達こたち可愛かったな。後でテイムしよっと」

「『機銃掃射』多重展開」

 最悪の事態だ。此処で殺しておかないと。こいつがプレイヤーであるなら、エリスさえ危ない。蛇君がこうなんだから。


「おい、何だよそれ!」

 弾幕に対して悪態をついているが、それを受けるトロルに思ったよりもダメージが無い。どうも野生そのままではないらしい。何らかの補正を受けている可能性が高い。

 まずいな、実にまずい。即時殲滅が此方のやり口なのに、ぜんえいも無しに、どうするかね。


 距離をとって考える。

「町を襲ったのもお前だったか。俺はアリス。お前は何者だ?」

 時間稼ぎに話し合いだ。見たところトロルは30前後、一緒に召還されたゴブリンは流石に耐え切れなかったらしい。


「お前にいっても判んないと思うよ。でもまあ俺はあの町を落とそうとソロプレイをしてたのさ。最初の町から難敵が居るなんて、デスゲームにもほどがあると思わない? 前情報ではこの町攻め落とすと闇精霊の仲間が居たらしいんだけど、もう無理かな。まだ落とせてないし」


「目的は何だ。何故町を襲う、いやその前にどうやって魔獣どもを」

 ちょっとうそ臭いがヒッカかってくれないかな。

「目的って、そういうゲームじゃないか。お前に言っても判んないかなあ。テイムって判るか、おい?」

 ゲームだと、どうやら彼はそう思っているらしい。彼が正しいのかどうか、検証は後だ。

 テイム、字面だけで判断するなら魔獣や魔物を仲間にしたという所だろうが、この数は多すぎる。ならば少なからず普通じゃない能力だろう。俺の仲間でも危ないか。亜人がテイム出来るかは不明だが、エリスや翡翠はまずいだろう。


「ゲーム? 何を言っている?」

「ああ、良いんだ良いんだ。NPCには判りっこない。テイムはどうだ、おい?」

 ニヤニヤと嗤いながら話してくる。恐らくは余裕の表れだろう、大分饒舌だ。此方としては有り難いが。

「テイム?」

 俺の疑問に対して、奴の笑みは深くなった。見下しているのだろう。


「しらねえよな? お前らには判らない神のご加護だ。選ばれし者の力だ!」

「神のご加護だと? 殺戮者め」

 どの口が言うんだ、という状況だがまあ良いだろう。

「なんだよ、ゲームなんだからしょうがないだろ? まあいいや、どうせ此処で死ぬんだし」

 そういうと右手を高く掲げる、どこぞの指揮官気取りか。



 網を後ろの木に引っ掛けて体を引っ張る。障害物が多い地形でのみ有効な高速移動、出来たら平地でも再現したい。

 手が振り下ろされると、生き残ったトロルの群れが突っ込んできた。

 トロルは騎兵に相当する物だと勝手に思っていたが、この圧迫感は恐ろしいな。


 木の上まで行って、プレイヤーの少年に『機銃掃射』で牽制しつつ、トロルを仕留めにかかる。

 一匹づつ潰そうとして、二匹潰したところ突然枝が折れた、いや切れた(・・・)。落ちそうになってとっさに網を掛け飛ぶ。

「器用な事するな。NPCにしちゃやるもんだ」

 何時の間にか剣を手に持っている。あいつが切った? 斬撃を飛ばしたとか、そういうことか? さっきの溝も恐らくは。

 漫画かよ、見えない物なんてどうすりゃいいのか。取りあえずは障壁を張りつつ、トロルを殺すしかない。


「それにしても強いな。ここ初期配置に近いんだし、もっと弱い連中しか居ない筈なんだけどな」

「さっきから判らん事を、居ない筈ってのは誰が決めたんだ」

「あ、神様だよ神様。良いの良いの、どうせ経験値にしかならないんだから。いや、ひょっとするとイベントか? こんなの記憶に無いぞ」

 既存のゲーム? いや、後だ。


 障壁越しにトロルを撃つ。かなり頑丈だが、流石に魔力をこめた単体用の『対物アンチ・マテリアルライフル』には耐えられない様だ。 

 そしてトロルも障壁を越えられないようで、徐々に数を減らしていく。

 さて、この後どうするかな。あの少年を捕獲して情報を得たいが、拷問か……少女のほうが良かったな。


「ごぶっ!」

 突然血を吐いた。後から後から血が出てくる。

 何だ!?

 きられた? 障壁に何か当たった様子も、抜かれた様子も無い。斬撃では無い?


「まったく、人の近衛ボロボロにしやがって。あーあ、強化しても下級のトロルじゃこんなもんか。しかし、ひでーイベントだな。こんなのチート無きゃどう仕様もねえよ、負けイベントって嫌いなんだよな。まあいいや、その分可愛い子ファミリアに出来そうだし」


がでな、こどを(勝手なことを)

「まだ生きてんの? しぶてー、わらえるわ。やれ」


「がふ」

 蛇君が槍を持って突っ込んできた。胃の辺りを刺される。物凄い吐き気と共に血を吐き出す。刺された箇所から血が流れ出していく。気持ち悪い。

 血が流れ出して気づいた。最初の攻撃では血を流していない。剣を振るったのは見た、なら、恐らく、切断の過程を省いているのか。でたらめで、正に反則チートだな。


 だが生憎とこっちもチートだ。具体的にはエリスのお蔭で早々死なない。今だって明らかに致命傷なのに生きている。

今はこの不死身を活用しよう。


 相手にわからないよう、死んだ振りをする。もちろん治癒はしている。血の総量が心配だが、魔力で代用できるだろう。

 しかし参った、斬撃の過程を省略しているとしたら、遠距離攻撃のアドバンテージは無い。

 それに近くで守っているトロルは防御特化なのか、ほとんどダメージが入ってないようだ。

 

「この糞チート野郎め、おら、死んだか! おい! 俺はテメーみてえな反則野郎大っ嫌いなんだよ! おら」

 どうしようか悩んでいると向こうから近づいて来て、殴る蹴るの暴行を始めた。何とも好都合、取りあえず死んだふりだ。

 これでどこか体を掴めれば起死回生の一手を撃てる。下手な反撃は命取りになる。それにしても、反則野郎とは

……お前が言うな! まあ確かに此方も反則であることは否めないがね。


「ととっ、死んだか。オイ、もう行くぞ、糞蛇」

 何を思っているのか、腹に槍を刺したままの俺を蛇君が見ている。その蛇君の頭を殴り、少年が進む。

 蛇君の手が動いた。服の裾をつかみ、少年を引っ張った。

「あ?」

 不意に掴まれた事に驚いたのだろう、少年は年相応の少し高い声で不思議そうに後ろを振り返った。


「ありがと」

 意識してか無意識か、蛇君の作ってくれた一瞬の好機だ。

 今。血と傷塗れの体を起こし少年の腕をつかむ。

「え?」

 

 ぐじゅっ。


 湿った音と共に掴んでいた左腕を潰した。出来れば利き手らしい右手を掴みたかったが、位置関係上仕方なかった。

 今でこそ空想魔術が強力になり、使う機会が少ないが元々魔術による熱の発生に強みを持っている俺だ。指向性を持った熱で、人間の腕一本落とす位はわけない。


「あ、ああ、あ、ぐうああ……」


「ぼえっ! っふう。痛みで脳が焼けるようだろう」

 喉にたまった血の固まりを吐き出して立ち上がり傷を修復する。

 少年は意外にも機敏な動きで、痛みを押して飛び退いた。


「あ、お前……お前あああああああああああああああああああああ!」

 痛みか怒りか、絶叫と咆哮の中間のような叫び声を上げる少年。

「人殺そうとしてんだから当然だろう。全く、好き勝手殴りやがって」

「くそ、くそっ! チート野労! 今、今殺してやる」

 少年は腰の袋から、明らかに入らないであろう薬を取り出し飲む。……落ちた腕が生えてきやがった。

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