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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
68/105

「一編に言われると良く判んない」

 流石に多いから。それが怒涛のように頭に響く、結構つらいが演算器が処理してくれている。


「兄さん英雄だって、流石、兄さんは完璧だなあ」

 エリスがうっとりと言ってくるが、これは心底思っているのが恐ろしい。

 いきなり称号を獲得してしまった。網に掛かる気配は遠ざかっていくし、向こうにしても流石に今日は突っ込む気になれまい。少し整理しよう。


 魔術強化を行いますか?


 あ、はい、少しお待ちください。



 結局その日は見張り要員を置いて撤退した。

 敵の被害は甚大だ。言うなれば騎兵に類する突破力を持った兵科の一部隊が全滅、文字通り全滅したのだから。

 敵にどの程度の戦力があるかは知らないが、これは無視できないだろう。たとえどれほどの大戦力でも、一部隊が成すすべなく全滅した、という自体は大きい。


「ふむ、実に……疲れたね」

「兄さんかっこ良かったよ」

「トロルを100匹単位で殺しておいて、その程度で済むのは異常」

「今更です、人形の姉さま。主人様は英雄」

「実際に称号まで得るとは、生きている内に神の声を聞くとは思いませなんだ。まったくアリス様は規格外もいいところ」

「すごい、人です。神の声、なんて、物語の類、と、思ってました」

 口々にほめられる。もっとほめろ、実に良い気分だ。


「神の声、とは何ですかな?」

 骨の人が付いてきてなかった。



 骨の人、骨蝋さんは正式我等がチームに編入された。短期間で結構な大所帯になったものだ。

「骨、聞こえなかったの? 兄さんが称号を得た声」

「は、精霊様。その様な物は全く、真に申し訳なく」

 ふむ、何で聞こえなかったのだろうか。俺以外の面子が聞こえるのは、チームだからかと思っていたが。

「チームは関係なかったか」

「は、チームとはそもそもギルドが勝手に行っている事。神の声に干渉し得るような物では」

 成る程、確かに。


「おそらく、血族の方が問題。血族というより、アリスの認識的には眷属に近い。だから誤認された」

「つまり、過日の名づけが原因であると。確かに名前は支配関係を決定する事もあります。われら兄弟も支配下に入ったという認識がありました」

 話に乗れない骨蝋さんにグランが説明している。


「おお、成る程。つまりは血族としての距離と言う訳ですな。精霊様の偉大なる兄君様。どうか、この矮小なる夜の者にも眷属となる栄誉をお与え下さい」

 どう思う、と家族会議をする。特に問題はないらしい。唯、グランたち兄妹が筆頭であるので、序列は一番下という事になる。

「全くもって構いません。グラン様もシュラ様もどうぞよしなに」

「ギルドの認定官ほどの方にかしずかれるのは、不思議な気分ですな」

「でも、当然。私達、の方が、主家に近い、から」

「当然でありますとも。偉大なる精霊様方により近いのです、偉大なる方々よ」


「まあ、当人が良いなら良いか、名前……」

「兄さん待って。骨に言っておく事がある」

「ははあ」

 エリスの言葉で、骨蝋さんが平伏した。

「まず、偉大なのは兄さんであって闇の精霊である私ではない、間違えるなよ。そして何より重要な事だ。兄さんを裏切るなよ、そんな事をすれば死が救いに見える様な目に永遠にアワセテヤル」

「畏まりまして御座います」

 丁寧だなー。


「気を取り直して、名前を付けようと思うが、骨蝋さん本名は?」

「は、骨蝋、ボーン=ワックスと言うのは昔自分で付けた名でして、本名という物を持ちません。どうせならば0から決めて頂けるなら、全くの幸いに御座います」

「そっか、じゃあまあ、今後頑張ってという事で、エリス、付けてやってよ」

「兄さんがそういうなら。でもよく判らないよ、兄さんみたいに翻訳機能ないし」

「何か、多機能家電みたいに言わんでよ。いいよ、俺が訳すから適当に付けて」

「じゃあ、私の庇護に入るみたいだし、黒の骨?」

 このナチュラルな中二感が天然で出せるのは素晴らしい。


「お、何かかっこいい響きがあるぞノワールオスってのは?」

「ノワール=オス、で良いか」

 エリスが骨の人を見ると気を失っていた。感激か狂喜か、崇拝している人から名前貰ったらそうなるかも。

「えっと、ファミリーはどうする? グラン達みたいに少し変えるの?」

「エルフの習慣ですと、離れるほど変化していき、血族と認識され辛くなっていきます」

「上手いね。さてでは、ルナからえっと、グランたちはルーナだから……」


「特に、変化、に、規則は、ありません。なんと、なくでも、大丈夫です」

 考え込んでいると、シュラから助けが来た。と言ってもな……ルーナに何か足せば、立場が判り易いかな。

 ルーナ……ラテン語で新月の事をルーナ・ノワと言うらしい。もう良いか。フランス語とラテン語混ぜると不自然しかないけど、まあ良いか、別世界だし。


「ノワール=ルーナノワ=オス、と命名する」

「くどいね」

「くどい」

 側近二人からは不評だが、まあ二人もそこまで拘りは無い様で、許してくれた。

 ノワールは目が覚めて号泣していた。骨だけど。 



 ノワールが目を覚ます前、称号について検討しておく事にした。

 魔術強化を行いますか? 

 称号、世界から与えられる名誉らしく、様々な効果が……魔術強化を行いますか?

 ……はい。


 魔術強化とやらを行う事にする!!

 

 魔術強化の内容を決定して下さい。


 よく判らんが、自分で希望を出せるらしい。これを機に今まで出来なかった事を希望してみる。

 それは、俺の使う魔術に、任意で質量を持たせることができる、と言うものだ。

 未だに俺の魔術は質量を乗せられない。爆発力と熱量・硬度で補っているが、質量があれば更に強力になるのだ。


 強化内容が受理されました。任意で0g~1000000gまでの重量付加が可能です。重量が重くなるほど魔力消費量が増加します。

 

 1000kgって。高質量兵器まで再現できるよ。望外の喜びである。


 

 一瞬気が遠くなるような感覚まであったが、気を取り直す、文字通り。

 称号の詳細を確認する。

 

 虐殺者:大量の敵を一度に倒す事で入手できる。自陣より多い敵に対して各種補正。


 蹂躙者:一方的に大量の敵を蹂躙する事で入手できる。自陣より多い敵、自分より弱い敵に各種補正。補正効果にて威圧効果、任意で発動可能。


 殲滅者:大量の敵を一匹残らず殺す事で入手できる。敵に対して各種補正、魔力量増加。

 

 無慈悲:殺さなくても良い相手を殺す事で入手できる、入手条件に虐殺者必須。敵に対して威圧効果、任意で発動可能。


 威圧:自分より弱い相手を弱体化、および硬直状態にする事ができる。力量差により可変。


 射撃高揚トリガーハッピー:大量の敵を遠距離攻撃で倒す事で入手できる、遠距離攻撃に補正。


 英雄:虐殺者・蹂躙者・殲滅者・無慈悲を同時に入手し、さらに一定以上の敵を一人で倒している事で入手可能。魔術使用に補正、魔術強化可能、身体能力補正。



 なんとも、かなり色々得たもんだ。幸いにもと言うべきか、ある意味当然なのか、今の戦闘方法を後押しする効果が並んでいる。射撃高揚トリガーハッピーは特に有用だ。他のも有用なんだろうが、願わくば有用になるようなシチュエーションにはなりたくない。

 英雄は質量付与だけでも有り難いが、身体能力補正があるのが強みだ。俺の身体能力はゴミみたいなもんだし。

 もしかすると此れで、シュラに接近戦で勝てるかもしれない。

 驚愕の事実であるが、今の俺はバロックにすら負ける、魔術ありでエリス・琥珀と互角か少し下。例えば琥珀なら、今日の群れに単身飛び込んで、皆殺しにするくらいやってのける。

 武器が傷んだり、数が多かったりで時間は掛かるし、その間に町に進入されるだろうから、状況にはあっていないが。




 称号の確認を終えて思う。大分化け物になったな、と。悉く遠距離戦特化になり、大規模を相手にした虐殺に強みを見せる。まあ、俺の目指すものが何であれ強いのは良い事だが、俺は何処に行こうとしているのか。


 エリスたちは口々に褒め称える。グランやシュラまでがだ。新規加入のノワールは絶賛気絶中である。

 力の比重が高いこの世界だ、強いと言うのはそれだけで良い事なのだろう。俺もこの家族を守らねばならんし、強くなるのは吝かでない。ただ、当初思っていた強さと大分乖離したなあ、と思う。


 原因はおそらく魔術だろう。俺の魔術はほとんど現代兵器を元にしている。

 空想魔術なんだから、もっと色々や利用はあるだろうと思う。だが、近代・現代兵器とは一定の戦果をあげている、殺す事と壊す事に特化した技術の結晶なのだ。

 有史以前から研鑽してきた叡智・技術の結晶だ。攻撃に関してこれ以上の物を考えるのは骨である。そもそも、ほとんど全ての技術は、軍事転用される。兵器とはその場所と時代で最も進んだ技術の塊なのだ。

 もちろん臨機応変に対応するため、手数をもっと増やそうとは思っているが。



「流石に疲れたね。魔力使うのは精神的にくるよ。ま、あの大群前にして精神的にきてなかったら、もう壊れてるって事だがね」

「兄さん、落ち着いて見えたけど、怖かったの?」

「当然だね、恐怖を感じるとテンションがおかしくなるんだよ」

「アリスは昔からそう。焦ると変になる、対処は一応冷静なんだろうけど」

「まあ、そう言ってくれるなよ。疲れたからもう寝るよ」

 ノワールはグランとシュラの家で引き取ってもらった。そのうち拠点なんてものも作りたいね。

 

 疲れただろうから、とエリスが眠らせてくれた。

 ストンと意識が落ちていく。余計な事を考えなくて良いので、大変に助かる。



 2・3日目は特に大きな事も無かった。流石に初日の打撃は聞いたようで、散発的に偵察らしいゴブリンがウロウロしているだけである。見つけ次第殺しているが、ほっといても構わない気すらする。



 4日目の夜の事である。

 最大で1週間の時間稼ぎを依頼された4日目。早ければそろそろ他の町の冒険者とやらが到着するだろう。 

 国の軍隊である騎士団は流石にまだだろうが、足の速い冒険者であればそろそろだろう。


 敵の規模と時間経過で楽観していたのは事実だ。だがまさか、敵が中から出てくるとはね。


「なんとも、悲惨な物だね」

「至る所に敵性反応あり。恐らくあれは……」

「ふむ、あれは、 這いずる人、かね」


 至る所に這いずる元哺乳類。魔物、這いずる人だ。

 様々な原因で生まれるとは聞いていたが、突然町にあふれるのは普通じゃない。しかも、このタイミングだ。


「ま、とりあえずギルドに行こう。遅い時間とはいえ誰かしら状況を把握してるでしょ。ギルド長なら居てもおかしくない」

「うん、そうだね。全員で行くの?」

「正直、もう駄目だろうからね。ギルドとの話し合いが拗れたらすぐ脱出するから、全員で行こう。あ、でも何も荷物まとめてないな。琥珀、君、荷物纏めて来て貰える?」

「判った、嵩張る物はおいてく」

「よろしく」

 琥珀ならこの程度の魔物に囲まれても大丈夫だろう。エリスでもいいけど、琥珀の方が安心できる。エリスは手元においておきたい。



 這いずる人は、その名の通りに這いずっているが、意外にも早く動くので結構邪魔になる。その都度倒しているが、こういう時に自分の能力の偏りが気になる。

 接近戦でも使えない事は無いがね。もう少し接近戦特化の能力があってもいいかと思う。魔力の形態変化である魔技は、接近戦に向くけど威力が低い。威力を出そうとすると疲れるし。


 益体も無い事を考えているとギルドに付いた。ギルドの周りには這いずる人がたかっていて、ギルドの扉を引っかいている。

「どうしようかね、俺がやると一帯吹き飛ばしそうだから、誰か片付けてくれるかね?」

 称号で得た質量がどの程度影響するのか、出来たら確かめてからにしたい。ゴブリンの偵察兵では正直違いは判らなかった。

「はーい! はいはい! 私がやるよ! 兄さん、私、私」

「どうしたね君、テンション高らかに、まあ良いよ。じゃあエリス、頼んだ」

「任せて兄さん。『深く、暗く、沈め』」

 テンション高いエリスが、なにやら呟く。こいつの魔法はカッコいいと言うか中二だ。

 テンション高い理由は、今が夜なのとさっきまで俺が抱いてたのと、俺の役に立てるってところかね。



 後で聞いたらあの魔法は、自分より弱い物、まあこの辺の基準はかなり曖昧らしいが、とにかく弱い物を影の中に引きずり込む物らしい。

 影は何の影でも良くて、夜ともなればほぼ無差別に引き込めるとの事。ホント夜の闇の精霊とか卑怯だと思う。

「流石でございます精霊様」

「エリス、よノワール。兄さんに仕える限り、そう呼んで良い」

「………………はは!」

 感に耐えぬという様子でノワールが跪いた。


「アリス様、ギルドの扉を開けてもらいました」

「お、ありがとう。グラン、シュラは大丈夫か。結構えぐい事になってるが」

 町の至る所に魔物がいて、それを蹴散らしながらの移動、しかも魔物は人型だ。俺とエリスと翡翠は問題ない。翡翠なんて外套のフードで寝てるし。

 グランも戦士として生きてきたなら問題ないだろうし、ノワールはよく判らんが、アンデッドにオタオタする骨ってのは想像しづらい。残るはシュラな訳だが。


「エルフは人の形をしていますが、森の種族であります。自然の動物と同じと考えてください。敵に同情するような間抜けはおりません」

「ああ、成る程、それは然り。考えてみれば、姿形で一喜一憂するのは人間位なものか」

「まあ、流石に同種を相手にするのは忌避感がありますが、敵であれば容赦は必要ありません」

 まあ大丈夫そうだ。世界が違うんだし、倫理観も違うのだろう。



 ギルドの中は魔道具の明かりがともされ、それなりに明るかった。

 俺たちが中に入ると、職員らしき人がドアにバリケードを積み上げる。完全に篭城する勢いだな。

「お疲れさんです。ギルド長か副ギルド長居ます?」

「はい! 上に!」

 あまり見ない職員が緊張気味に答える。初日の虐殺見てたら、こちらは化け物でしかないし、仕方ないのだろう。


「お疲れ様です」

 気軽に副ギルド長の部屋に入る。ギルド長も居るはずだ。

「ああ、アリスさん」

 非常に疲れた様子でギルド長が座っている。

「お疲れですねえ、まあ無理も無いでしょうがね。詳細はどの程度把握してます?」

 町を防衛する目的で時間を稼いでたのに、よもやその町中から魔物があふれる事になるとはね。心労は察して余りある、お気の毒だ。

 因みに、俺を眠らせて見張りをしてくれていたエリスの話によると、這いずる人は町中から突然現れたとの事だ。夜であればエリスの索敵範囲と精度は俺を軽く超える。恐らく正しい。

初期の頃の投稿の分割を行っております。投稿数が増加しますのでご注意ください。

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