表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
66/105

魔獣

秋も半ばである。あいも変わらず魔獣・魔物の類を狩っている。

 魔獣被害は続いている。だが夏の終り頃には一旦小康状態になり、秋の初めには殆どなくなった。まあ油断していたと思っていいだろうね。

 今、ここしばらくの拠点であった町は、大量の魔獣・魔物の群れに襲われつつあった。


 我等が故郷がある森の方から、わらわらと魔獣が湧き出している。

 ゴブリンの群れと思われるが、部隊行動と思わしき統率性があり、ゴブリンキングが複数体いる。つまり通常の群れではないと言う事だ。

 今見えているのはゴブリンの部隊だけだが、網に掛かっているのはもっと多様な反応だ。混成部隊ということらしいが、あまり記録には無い事態のようだ。

 


 事の起こりは1月ほど前になる。

 魔獣被害が小康状態になったため、原因調査が計画された。ギルド側は調査専門に組織したチームを用意した。

 ギルドが俺達の探索能力を知らなかった為に用意されたものだ。

 彼等は探索を開始した。前例が無い事も有り、何をどう調査した物か見当も付かない。そのため町の周囲から範囲を広げて、満遍なく調査することにしたそうだ。

 そもそもが調査、という概念自体曖昧な世界だ。町の周囲に普段と変わった物・事が無いか調べた程度だったが、その後森に目を向けた。

 

 この町の周辺で見通しが悪く、まあ怪しいといえば怪しい。主なんて者までいる深い森だし。

 順当に周囲から潰していった結果ではあるが、原因らしきものを発見した。原因と言って良い物かどうか、彼等は森に集まりつつある魔獣の群れを発見したのだ。


 その報告をもってギルドはパニックに陥った。町がパニックにならなかっただけでも、中々の物ではないだろうか。



 調査や町の住人の避難などで、結局調査開始の1月前から数えて3週間経過している。

 今は対策会議とやらに参加させられている訳だが。

「さて、では悪いが俺等はこれで」

 報告を聞き、相当数の魔獣が群れているという現状、正直此処に残るのは危険だろうね。

「待て! 貴様ら町を見捨てる気か!」

 町を見捨てる、実に慧眼である。

 町を見捨てようと立ち上がった時、会議に同席中のギルド幹部が声を荒げた。


 因みに同席しているのは、ギルド長・副ギルド長・書記官・認定官・調査報告の冒険者・筆頭冒険者(これは俺達である)である。

 声を荒げたのは書記官の人。認定官はなんと骨の人である。カードを作ったとき、エリスにビビリまくっていた人で、骨蝋さんだったか。

 小さな町の小さなギルドだから、幹部といってもこんなものだ。普通ならこれに監査官・会計官などあるらしい。


「見捨てる? 実にその通り、悪いがそこまで付き合いきれんね」

「き、貴様!」

「何事も命あってだ。扶養家族もいるのでねえ」

 家族、か。なんとも妙な気分になる。俺が、家族、ねえ。



「やめろ」

 掴み掛ろうとした書記官を手で制する。ギルド長だ。

 副ギルド長の依頼でハンターを開始した後。コンスタントに増える戦果報告で気になったのか、ギルド長と会う機会があった。

 その時聞いたのだが、ギルド長は幾つかのギルドを統括して長と名乗るらしく、一つ一つのギルドは副ギルド長が責任者らしい。 

 

 今いるギルド長も例外ではなく、5つの町のギルド長を勤めている。その内の一つは商業都市イル、という有名で大きな町らしく、それなりに有能で権力のある人物らしい。

 この世界・この国においては大きな町は独立した自治区のような物で、イルくらいの町ならかなりの力を有するらしい。


 で、目の前のギルド長だが妙齢の女性である。髪は短く、怜悧な目とスラリとした体躯である。胸元が人並み以上に大きくなければ美男子といってもおかしくない。

「私の管轄区のギルドにはすでに召集を掛けた、王都にも騎士団の派兵を頼んでいる。せめて援軍が到着するまで、協力して貰えんだろうか、筆頭冒険者殿」

 ギルドが各国、各町でそれなりの権力を持つのはこう言う時の為だ。

 各町の防衛を肩代わりし、無理なら時間を稼ぐ。つまり目の前の女性は其れなりの権力を有し、其れなりの権限を与えられていると言う事だ。


 

 実に厄介な事この上ないね。逆らえば面倒だし、逃げるにしても、ギルドは国家間をまたぐ組織であるからね、これも面倒だ。だがだからと言って命には代えられない。

「悪いね、繰り返すが命が大事だ。今は守る対象もはっきりしてるし、余計な事はしないでおきたい」

「では、命令です。断れば、今後ギルドの冒険者があなた達を付けねらうでしょう」

「はあ、まあ、そりゃそうだよねえ。ここで君らを皆殺しにしても良いんだが、その場合の対応策くらいあるだろうし、面倒だなあ」

 ギルドにある程度の強硬姿勢が無ければ、冒険者の集まりなんて防衛の役に立つはずが無い。軍隊と違い個人主義の集まりだ。命令の根拠は力ずく、という事になるんだろうね。


「さて、拒否権が無い状況で最初にお願い、なんてぬるい事をする馬鹿どもは非常に腹立たしい」

「お前!」

「黙れよ、書記官君。後先考えず皆殺しにしても良いんだよ? まあ、現状逃げ切れるか不明であるからして、今回は君らの言い分を飲もう。勿論、相応の報酬は貰う」

「具体的には?」

 

「ギルド長!」

 報酬の話に入ろうとしたのに、うるさい書記官君だな。

「緊急時の依頼については必要最低限とするのが原則ですぞ」

 たまに聞く話だが、それは無い。はした金で命が賭けられるか。

「原則は大事ですが、それは今通せません。この方々はリスクを避ける事もしますが、決してリスクを恐れるだけではありません」

「買い被りでしょう。皆殺し、などと粋がっていますが、出来る訳がない」


「確かに、まあ、そんなリスキーな事はしないよ。君一人痛めつけて逃亡する位はしそうだけどもね」

 地味にイライラする書記官に苦言を呈する。ギルド長もその辺りは判っているのか、きつめに窘めている。

「申し訳ありません。報酬の希望をどうぞ」

「まず、最高級の馬車、それと金、加えて……」

 意味ありげに骨蝋さんを見る。実はこの会議に呼ばれる前に、骨蝋さんに色々聞いていたのだ。

 その時に、もし報酬を選べるようなら是非とも自分の身柄を貰って欲しいといわれたのだ。


 身請けして欲しいって、流石に引いた。何しろ骨でおっさんである。結構な勢いで引いた。

 あわてた骨蝋さん曰く、自分たち夜族、いわゆるアンデッドの類は闇の精霊に奉仕するのが至上の喜びなのであると。

 自分たちは闇の精霊の恩恵で生命を得ている、格上の相手に仕えることが喜びなのであると。

 加えて、自分はネクロマンシーの技術を持っている。条件はあるが、使い勝手の良いアンデッドの軍勢を作れる。との事だった。

 

 今回の件で判るように、この世界はいろいろと危険だ。自分の自由になる軍(あるいは群)を持つ事は有用だろうし、戦いは数が物を言う。そしてアンデッドなら喪失を恐れる必要も無い。

 まあ、エリスと琥珀の意見も聞いて、別にいても問題ないとの許しを得たので勧誘させてもらう事にした。


「そちらの認定官は優秀な魔術師と聞いています。彼を貰い受けたい」

 骨のおっさんを貰い受けたいって、声に出して言うのは結構なダメージを負うな。因みに、骨蝋さんは魔術師である。魔法は使えない、一応彼は人間の骨というルーツがあるらしく魔術を使う。

 人間よりも魔力は高く、魔法陣の数も豊富だがエリスや俺ほどの利便性は無い。まあ戦闘能力よりもネクロマンシーの能力に期待する面が大きい。



「そ、それは……」

 ギルド長が言いよどんでいる。決して俺の趣味を誤解されて引かれている、ノデハナイトオモイタイ。

 まあ、認定官と言うのは結構重要なポジションらしいし、骨蝋さんは寿命が無いからベテランだろうし、手放すのが惜しいのだろう。きっと。

「ギルド長、私は結構ですよ。私と引き換えに戦力が手に入るなら、良い取引です。手段を選べる状況で無し、それにギルドとも其れなりに繋がりが出来るでしょう」

 カタカタと下顎がなる。骨は手術でも肉と血に塗れてほとんど見えない。頭蓋骨の頭頂側は綺麗に見えるが、眼窩とか見えないから、見ていると少し得した気分になる。


「……本人がそう言うなら」

 おそらく骨蝋さんの態度から察したと思われる。割りとあっさり認められた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ