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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
平凡な冒険者気取り
56/105

自己紹介

更新遅れまして申しわけありません。

ご都合主義が続きます、力量不足でありますが、よろしければ今後とも読んでいただけるとありがたいです。

 出鱈目な診断とオカルトな対策でよくもまあ生き残ったものだ。それは彼の運によるところだろう、だから。

「目の前で土下座とか、止めてくれ給えよ。それは一種の脅迫だよ? 言ったとおり君の生存は君の運によるところだ」

「いや、あんたが助けてくれなければ俺は死んでいた。そしてきっとこいつもな。だからあんたは俺たちの恩人だ、……ありがとうございました」

 深々と頭を下げる、それを止めて欲しいのだがね。それにしても良い声で礼儀正しい男だ。

「君を助けたのは妹君、ああ俺の可愛いエリスが望んだからだ。さっきも言ったろう、それがすべてだ。妹君の気まぐれとその場に居た俺が治療可能だったこと、全くの偶然だ、気にすることはない」

 当然このくらいで納得する相手ではなく、結局のところ恩を感じ、命を助けられたからには主と仰ぎ使えると、なんとも古風な要求をされてしまい、何もかもめんどくさくなって受け入れた。



「はあ、まあ旅は道連れ世は情けだ。君らが付いて来るなら、それを認めるに吝かでない。だが、ひとつ」

 付いて来るなら構わない、だがしかし、忘れてもらっては困ることもある。

「俺を裏切るなよ」

「御意のままに」

 精一杯威厳を持ったつもりだが、やはりこの背格好では無理か。というよりも向こうが上手の様な気がしないでもない。

 自分でも良く判らない内にエルフの兄妹が仲間に加わった。

 面倒な一件に巻き込まれたと思ったものだが、今後さらに面倒になるというわけだ。




 その夜はいったん解散した。

 エルフの彼の病体は安定し、彼の妹の精神も安定した。お互いが落ち着いたことでまあ色々と話すこともあろう、ということだったが、実のところは俺の精神が限界だっただけだ。

 低出力の魔力を長時間使う、特に問題のある行為とは思わなかったが、連続使用ということが相当の負荷を掛けたらしい。自分で判るほど精神が疲弊している。具体的には一人が辛くて仕方ない。寂しさ、という形で発露した精神のゆがみだろう。ちょっと寝たくらいでは回復しないというわけだ。


 寂しい、という感情とは古い付き合いだ。付き合いの長さで言えば、実は琥珀よりもさらに前から。

 まあ付き合いが長いだけだ。決して仲が言い訳ではない、できれば会いたくはなかったね。

 息苦しい閉塞感と、針のような緊張感、そしてなんともいえない退屈加減。寂しいという感情は、俺にとってそのような発露を取る。まあもちろん人恋しさ、というものもあるが、どちらかというとそれは対処療法に必要な処方の様な物だ。



「だから、まあ。君が来てくれてありがたく思っているよ」

「アリスが寂しさを感じる前から、私のほうが付き合いは長い」

「俺の思考にまで嫉妬するようになったか、なかなかに愉快だね」

 部屋のドアを開けて琥珀がたっていた。快い気分を感じることができる、最も古い付き合いの人形だ。


「今日は妹君がくると思っていた」

 彼女たちはローテーションで俺と寝る事を取り決めている。至らないことで申し訳ないが、彼女たちの秩序は俺はノータッチだ。


「エリスは我侭言ったから、一回飛ばし」

「俺は気にしないけど、君らには君らのルールがあるんでしょうなあ」

「もちろんそれもある。でも今日はアリスを甘やかしに来たの。エリスにはまだ無理」

 琥珀はいつもの無表情だが、口の端をゆがめて笑った。得意げな表情に見えなくもない。

「君は一見厳しいけど、俺に甘いからな。まあそういう妄想の産物な訳だが」

 古い付き合いであるこの人形は、主に俺の意向を受けて割りと俺に甘い。


「アリスが落ち込んでると思って、甘やかしに来た」

「それはありがたいね……」

 実際精神的な負荷は結構なものだ。長時間の魔術行使、というか魔力の運用はもともと脆弱な俺の精神を痛めつけるし、そもそもが本来的な意味で治療というものを行ったのは初めてなのだ。

「軟弱な俺は相当しんどい」

 自虐的な笑みを浮かべて琥珀を見る。

「しってる。軟弱な様は変わってない」

 僅かに微笑んで、琥珀はベッドにもぐりこんだ。琥珀は俺の妄想の産物、甘えた事も有るし、苛めた事もあるし、戦った事もある。思春期にはちょっと言えない様な事もした。


「よもや、現実に君に甘やかされる日が来るとはねえ。まったく人生は面白い」

「うん。私のアリス」

 何が嬉しかったのか、琥珀はまさに甘やかす様に言うと俺の胸に顔をうずめた。もうちょっと身長差が欲しいな、その差こそが幼女趣味(ロリ)の真髄なのだから。

 すばらしくカスな事を考えつつ、思った以上に安心しつつ、その日は眠りに落ちた。




「さて、まあ。事情でも聞いて、いろいろと話し合ってみるかね」

 翌日、救命したばかりのハーフエルフの兄妹を家に呼び、全粥程度の朝食の後切り出した。

 ごたごたして忘れてたが、そもそもは食事を貰いに来たんだった。そこから至ってこの結末とは、強引にも程がある。


「改めまして、命を助けていただき、ありがとうございました」

「あ、ありがとうございました」

 ハーフエルフの兄妹が深々と頭を下げる。それにしても兄のほうは良い声をしている。


「いや、結果として助かったがね、9割方死んでたと思うよ。昨日も言ったがね、実際助かったのは君等の幸運によるところだ」

「そうであったとしても、手助け頂けなければ完全に死んでおりました」

「なら、君の妹に感謝するんだな、ハーフエルフ君」

 

「は、もちろん感謝します。若様、ひとつ質問をよろしいでしょうか」

「若様とか、止めてくれハーフエルフ君。アリスで良い、アリスで」

「ありがとうございます、であれば……我らも名乗ることをお許しください」

「あ、ああ、はいはい。どうぞ。申し遅れましたがアリス=キャロルリードだ、よしなに」

 思えば名乗ってなかったか、それに鑑定結果でハーフとわかったが、不振だったかな。ある程度特徴のある容姿だから、早々まずい事はないと思うけど。


「は、アリス様から名乗りを頂戴しありがとうございます。私の名はグラン=リヴィエール、ご賢察の通りハーフエルフです」

「わ、私はシュラム=アコライト、です」

 兄妹はまた頭を下げる。実にやり辛い。

 グラン=リヴィエール(大きな川)シュラム=アコライト(泥中のトリカブト)ね。エルフは自然を尊ぶようなイメージがあるが、それが反映されているのかね。

 因みに名前の意味までわかったのは、言語翻訳の力だ。



「堅苦しいのは抜きだ。アリスと呼んでくれ、グランとシュラとでも呼ぶから」

 勝手な思い込みで兄妹だと思っていたが、名前からしたら違うのか? いや、兄弟だって名乗ってるよな。その辺の事を聞きたい。


「我々は厳密には兄妹ではありません。私は父がエルフ、母が人間の間に生まれたハーフですが、妹は純血のエルフです」

「妾腹、というところかね?」

「ハイ、ただ複雑なのが正妻は人間のほう、自分の母なのです。不幸なことに我々が貴族であったことが面倒の元でした」

 君らは貴族だったのかよ。確かに仰々しい名前ではあったが。


「正妻が生んだとはいえハーフエルフの長男と、側室が生んだとはいえ純潔のエルフの長女。人間の御家騒動とまでは行かずとも、やりにくい現状ではありました」

 正妻が他種族、ねえ。そこに愛は感じるが……あまり宜しくないんじゃないのかねえ。せめて純潔のほうが正室なら特に問題は起こってなかったと思う。

 正直この手の問題。いわゆる跡継ぎがどうのとか、純潔がどうのとかって事については全く理解できない。


 理解できない、という点においては彼らも同様だったらしい。

「そもそもが、数が少ないエルフの集落において、貴族だ平民だ、と分けて考えること事態が滑稽でありましょうな」

「まあ、君らは種族の壁があったと思うがね。御家騒動が嫌で逃げたという訳か」

 何も2人で逃げなくても、妹の方は家継いでも良いと思うが。


「いえ、それも原因の一端ではありましょうが、直接の原因は……」

 グランが言いよどむ。これまで実に良い声にふさわしく、淀みなく話していたが……。

「我等不明の至りでありますが、兄妹にあるまじき感情を得てしまいました」

「私たちは、恋人です」

 グランが言い辛いのを見て取ったのか、シュラが後を引き継いだ。ふむ?


「貴族の近親婚など、珍しくもないと思っていたが、エルフでは違うのかね?」

 地球の感覚、それも適当な文書で適当に収集した知識によると、貴族などの血族として一家を成しているような場合、近親婚は早々珍しくなかったと思う。もちろん現代の話ではないが。

「地域の差もあると思うけど、アリスの言っているのは人間特有の話だと思う」

 困ったときの琥珀が説明してくれた。まあ地域差といわれれば、そもそも地元にエルフは居なかったわけだが。


「そもそもが人間と一部の生物以外、基本としてあるのは種の保存本能。だから近親婚によるリスクなどを察知して、本能的に忌避感を持っている」

「仰るとおりです。我々の間でも兄妹の愛などは禁忌。我等は禁を犯した咎人です、幸いにも里に露呈する前に逃げること叶いましたが、そのためにこの有様です」

 という事は、里ではこいつらを探しているのか? 後々面倒になるかな。まあ今考えても仕方ないことかな。


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