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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
平凡な冒険者気取り
52/105

お隣さん

短いです。次話はなるべく早く投稿します。

 琥珀の説明によると、意外にもあの烏は強敵だったらしい。人間への脅威度が少ないので中位となっているが、実際には上位の魔獣でもいい位らしい。

「あれで脅威度が低いのかね?」

「あの魔獣は賢い、人間の集団を襲わないし、やり過ぎると報復される事も知っている。街道を旅する人間が1人2人啄ばまれても、それは大した事ではない」

「なんとも、恐ろしい価値観だが、実に納得できる」

 

「兄さんよく見たら、疲れ果ててるけど怪我少ないね?」

 妹君の言うとおり、倒れ込むような疲労に比べて怪我は少ない。たぶん魔力の形態変化に伴うリスクだと思う、と説明する。

「魔力については何故か殆ど研究がされていない。でも、大昔の研究者が似たような研究をしている」

 たぶん研究記録が少ないのは、秘匿されているという事と魔力の絶対量の少なさから、十分な症例報告ができなかったんだろな。

 研究とか面倒だったな、と思いつつ琥珀に先を促す。

「魔力を魔法陣に流して発動するほかに、魔力その物を変化させて魔術に似た事象を起こせる。便宜上魔技と呼ばれているそう。使える人間も教える人間も絶えて久しい、失伝した技。アリスは何時も訳の判らない物を持ち出してくる」

 その魔技とやらによると、魔力とは粘土の様な物であると説く。外に放出するのには粘土を千切って投げるだけだ、肉体的には負担は無いが少しづつ粘土は減っていく。魔力の形態変化は、そのまま粘土細工だ。魔力はそのままだが粘土を練って形にするのに負担がかかる。

 魔力の量が大きいほど、粘土も大きくなり成型に労力を要する、ということらしい。


 粘土、ねえ。追々研究が必要だな。

 それはさておき、翡翠君のお披露目がまだだ。2人とも進化したとは察しているだろうが、翡翠君は現在俺のフードの中で羽を休めている。

「さて、これが新翡翠君である」

 フードの中から引っ張り出す。爪を引っ掛けて、手足を限界まで広げて抵抗していたが、この子も寝起き悪いな。


「姉様方、初めてご挨拶する、します。翡翠=キャロルリード……です」

「ふむ」

「……」

 妹君も琥珀も一言呟くと黙ってしまった、値踏みする様に翡翠君を見ている。実際値踏みしているのだろうか。

「ひ、翡翠の序列は三番目、空十字血盟うちで三番目です。決して姉様方の邪魔はしません」

 翡翠君が恐怖で縮こまっちゃってるよ。2人からのプレッシャーとか考えたくも無い。

「…………良いよ」

「しかたない」

 長いこと沈黙していた2人が同意の言葉を吐いた。

 いったいどんな心理戦がそこであったかは良く判らないが、少なくとも翡翠君が仲間として受け付けられたと言うことだろう。

「感謝します。闇の姉様、人形の姉様」

 翡翠君には判っている様だね。



 帰ってきて休憩やら説明やらお披露目やら、色々とやることが多くて、夕食の時間が結構ずれ込んだ。

 相変わらずの薄暗い部屋で円卓に就く。固いパンと香辛料のきいたスープ、そして少々の肉。贅沢とはいえないが、この世界では十分過ぎるほどの糧、ありがたく頂きます。


 食事中は会話することも多いが、ふと空白の時間が来るときもある。

 この空白の静かな瞬間でなければ、ドアをたたく音に気づけなかっただろう。

 

 ほとほと、ほとほと。


 遠慮がちにドアがノックされる音がした。今の時刻は21時過ぎごろだろう。この世界の常識はしらねど、まあ誰かを訪ねるには遅い時間だ。

「琥珀、部屋の反対からの侵入を警戒して。妹君と翡翠君は窓を、ドアは俺が開けるから」

 何を脅えているのかと言われるだろうが、夜中(という時間でもないが)に訪ねてくる知り合いなんて居ない。ドアを開けたらグッサリ、なんて事があっても不思議じゃない以上、警戒は必要だ。

 もちろん網は張ってあるが、それを潜り抜ける厄介な相手が居ないとも限らない。

 まあ、今回の緊張と警戒はすべて無為に終わったわけだが。



 ドアを魔力でゆっくりと開けると、そこに立っていたのは妹君達より少し大きい、14・5歳位の女の子だった。だいぶ痩せており、体調も悪そうだ。貧血なのだろうか、フラフラしている。

「あ、お隣さん」

 妹君が声を出した。そういえば前に聞いた、お隣さんが可愛いから話しかけるなよ、と釘を刺されている。

 今回の件は許してもらおう。



「どう、しました。こんな時間に」

 当たり障り無くたずねる。夜分に訪ねて来るだけで嫌な予感だ、あまり好き好んで首を突っ込みたくは無い。

「……食べ物」

「ん?」

「食べ物、分けて貰えませんか?」

 実に異世界、今までで一番の実感である。

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