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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
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俺VS親 ※残酷な表現があります

駄文ですがよろしく願います。

残酷な表現が出てきますので注意してください。

帰宅した。妹を落ち着けて帰ってくるのに手間取ってもう暗い。まずいなあ。

 普段なら食事の時間だ、これから準備するとなると色々と面倒なことになる。特に父親が帰ってきているとなると、妹に被害が及びかねない。

 さて、どうするかね。正直に言って話術で相手を騙すのは苦手だ。そもそも交渉に当ってこっちにカードが無い。最悪の場合、力押しかね。まったく頭が悪いと嫌になるな。

 ま、相手の態度しだいだな。

「君、少し待っていてくれ給えよ。先に入って様子を見てくる。決して置いていく訳じゃないので、ちょっとだけ待っててね」

 予防線を張った言葉に、妹が頷いた。冷静になってみれば、妹も現状を理解しているということかね。

「ただいま」

 妹の頭を一撫で、覚悟を決めてドアを開ける。まったく遅くなって怒られる、なんて事は20年以上昔の話で覚えて無いねえ。

「何処ほっついてやがった!」

 中に入った瞬間父親の怒声が響いた。何かにつけて怒鳴る奴と、キーキー金切り声で喚く奴は嫌いだね、話し合いにならないからね。

「手前だけか、女はどうした!」

 山賊みたいな話し方だな。自分の娘、しかも11歳児を女って。

「外に居るよ。こんな時間まで連れまわしたのは俺だからね、お叱りは俺が受けようと思って」

 さらっと言ってみる。口は半笑いで、大げさに肩をすくめる。

 全く反省してませんよ、お前のこと舐めまくりだよ、と態度で示す。こちらに怒りが向けばそれで良い、俺の目的は達成される。しかし、意図せずに嫌われることは良くあったが、嫌われる態度ってのは良く判らんね。それが判らなかったから、嫌われたわけだが。

「手前! 親に対してその態度は何だ!」

 親、ねえ。良い思い出ないなあ、仮に生前あったとしてもお前らは嫌いだ。いや、生前に親を大事にしていた人間なら、妹と親を和解させようとか、馬鹿なことを考えるのだろうか。

「親?」

「何だこの野朗!」

 これだ。馬鹿は扱いが楽で良い。唇の端を歪める、自前の嫌な笑い方と、相手の言葉を聞き返すだけで激昂する。この次は、

「何とか言え!」

「ぐっ!」

 ほら来た。腹への打撃。妹の内出血瘢は全部服で隠れる所についていた。法整備のされてない、こんな寒村でも、寒村だからこそ世間体が大事かね。

 打撃が来ると判っていて、それなりに備えたつもりだったが……やはりこの体格差と膂力の差、加えて俺も体を鍛えてた訳ではないから筋力が……。まだ腹で良かった、横隔膜は動くから呼吸は出来る。呼吸が出来るなら、言葉が出せる。

「すいません。許して、妹も俺も、反省してます。すいません」

「けっ、馬鹿がいきがりやがって。さっさと飯にしろ」

 馬鹿め。生意気な奴が殴られて掌を返した。これだけの事で納得しやがった。本当に馬鹿は扱いが楽で良い。

 次は妹をどうやって中に入れるか、だが。

「妹を呼んで、直ぐ作ります」

 表面上とはいえ親に従って、裏で妹を甘やかす。ダブルスタンダードな態度は早々続けて良いモンじゃない。さっさと独立しないと。

「おい、それとな。お前きょう俺と部屋を替われ」

 さりげなく外の妹を呼んで台所へ逃げようとした時、背後からそんな声が投げられた。妹は無表情で俺の手を強くつかんだ。また視界が白黒に暗転する。

 ここだけの話し、看護師という職業は割りと好きだ。別に患者がどうの、命がどうの、というご立派な理由ではなく、緊張感とか緊迫感とかそんな理由だ。だから、冷静である事は得意だ。

 目の前で血をダラダラ流して苦しんでいる人が居ても、その人の家族が泣き喚いていても、自分で千切れた指持ってこられても、腕が落ちようとも、目の前で大出血されようとも、心臓が止まろうとも、冷静に対処できる。神が認めた冷静沈着さだ。スキル効果で俺は大体冷静に考えられるはずだ。

 後から考えると、軽率だった気がするよう無しないような。まあ妹がドアの内側に立っている状況で、そんな言葉が出たら、もう一回同じ状況でも、今度は冷静に同じ事をするよ。

「お父さん」

 妹が後で曰く。優しい声色で耳貸して、と手招きしたそうだ。訝しげでは会ったが、父親が耳を寄せた。そして、俺は耳を焼いた。

「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 今の魔力の質なら、人間大の有機物くらい消し炭に出来る。もちろん魔法なのでコントロールは容易だ。

「おま、おまあ、おまえ……」

 耳を押さえてのたうちながらこっちを見ている。ここは変に良く覚えている、別な部分が冷静だった。

「お前、明日からも稼いでもらわないといけないから。手足は焼けないし、目も駄目。鼻と耳は無くても機能は残るから、良いよね」

 そういって掌から立ち上がった炎が父親に向かう。

「オア、親、親に向かって……」

「悪いね。俺は血縁なんてこれっぽっちも信用して無いんだよ。お前の役目は明日からも金を稼いで俺と妹を養うことだけ。何大丈夫1年経たないで出て行ってあげるから」

 父親の目は俺の炎の切っ先に向いている。ああ、硬質化させれば武器・防具としても使えそうだな。

「おま」

「発言は許可しません」

 そういって反対の耳もそぎ落とす。耳は簡単に取れる、後ろから前に向かって引けばいい。弓道の事故とかで偶に来た。

「ぎいいいいいいいいいいいいいいい」

「明日からも今までどおり、金稼いで来るんならここまでにしてやる。断るなら、お前を生かしとく意味はないな」

 聞いているのかいないのか。父親はもがくばかりで答えない。

「あんた! お父さんになんてことを!」

 存在感の薄かったお母さんではないですか。さっきの父親の発言を確実に聞いていたのに、父親を庇うとは。

「君、お母さん君。家事は妹が出来るし、正直君は要らないんじゃないかねえ。妹の害にはなってなかったので別に生かしておいてもいいんだが……煩いこと言うと焼くぞ」

 母親は黙った。言葉で黙るんなら性犯罪者庇うんじゃねえよ。

 性犯罪者は死刑でいいと思うんだよな。もしくは両手を切り落とすとか、最悪去勢して歯全部抜くとか。前世では人道的にどうの、とか入ってたが、重犯罪者は人間扱いしなくてもいいのに。

 まあ、それは俺にも言えることだけどね。妹から怖がられたらどうしよう。致し方ないかね、俺も傷つける側にまわったんだから。

 俺がどうあれ、性犯罪者で性的虐待で神聖なロリに手を出した三重苦の目の前の男を許す気はない。もちろんどれか一個でも極刑ものだがね。馬鹿な奴、せめて大人しくしていればこちらも何もしなかったのに。

 ああ、どうしようかな。明日から遠距離狙撃に悩む日々か。根回しは早々に行うか、口止めするか。俺はともかく、妹の安全だけは確保しないと。カッとなったとはいえ面倒な事になった。

「てめえ、このくそ餓鬼が!」

 おっとしまった。考えと母親に気をとられた。父親が壁にあったボウガンを構えている。

 まずいなあ、この距離でボウガンなんて迎撃できないぞ。基本的に遠くから仕留める、事を想定して訓練してきたから防御はおざなりだし。まあ、近距離なら先手必勝だろう。

「なあ!」

 父親が吃驚している。俺の弾丸は炎そのものだからね、当れば燃えるし、弾速もそれなりだから目では見えないね。

 さて、収拾つけないと。逆上されるとまずいからな、妹を炎の手でつかんで部屋の隅に立たせてその前に出る。

「おい、動くなよ。今の見たか? こっちは飛び道具がある。魔力もそれなりにあるからまだまだ撃てる。要求はさっき言ったとおり、金を稼いで食事を出す。それだけだ。期間は1年で良い。断ればこの場でお前らを殺して、村長にでも親がいなくなったって泣きつくことにするよ」

 母親が父親に寄り添って傷を見ている。父親は座り込んで驚愕の眼をしていた。

「理解してもらえないと困るので説明するぞ。俺は空想魔術師だ」

 あれ? 名乗り上げるのってかっこよくない? まあ実際は自分の手の内をさらけ出すのは馬鹿だが、はったりは必要だろう。

「俺の炎は人間2人くらい跡形も無く燃やせる。形跡さえ無くせば、死人にくちなしだ。適当にごまかせるさ」

 死にたくなければ言うことを聞け。全く持ってこんな恫喝しか出来ない頭が嫌になる。まあ切欠が切欠だから致し方ないか、そこで引く方がイライラしそうだ。でもまあ、やってしまったんだからここは収めないとな。

「親にこんなことして、それでも養えってのか!」

 御説ごもっとも。でもな、

「娘の体に女を見るようじゃ、親っていわねえんだよ、おっさん。それに勘違いしてないかね、お前ら選択権なんてねえんだよ。生きるか死ぬかだ。要求の呑むなら床を二回叩いてゆっくり立て、1分経っても動かないなら焼き殺す」

 ゆっくり数を数える。60をカウントしたらこいつらを焼くのか。流石に死刑執行を自分でするのは怖いな。怖い。できるなら要求を呑め、まだ死にたくないだろう。頼むから。

 コンコン。

 床が叩かれた。一瞬気が抜けて意識が飛びそうになる。だがまだだ、まだ演技をしろ。迫真の演技を。

「結構。ではこれからもよろしく。早々、万が一にも誰かにしゃべったら殺す、次に妹に何かしたら殺す、もちろん俺に危害を加えても殺す。空想魔術師を相手取ることがどんなに危険か、理解しないうちは大人しくしていたほうがいいね」

 はったりも限界だ。何だ自分結構繊細じゃないか。でもここで倒れたらすべてご破算、ここは耐える。

「では今日は食事という気分でもないし、ここまでにしようかね」

 父親の傷を回復させる。耳の再生は出来ないが火傷の治療は出来る。

「これはサービスだ。くれぐれも変な考えは起こさないようにね」

 最後は満面の笑みでそういった。両親は対照的に、暗い顔で椅子に座っていた。俺も部屋に帰ろう、流石に限界だ。

 部屋に入った。すぐに窓から外を伺う。両親が誰かに今回のことを密告すれば此方がやられる。それは避けたい、しかしこちらは独り、四六時中監視継続するわけには行かないね。さっき考えた魔力の探査が出来れば、寝てても気づくことが出来ると思うが。

「兄さん」

 妹が腕に抱きついてきた。父親の暴言と俺の暴力を目の前で見て、かなりきつい事になったかな、と妹を見る。

「兄さん、死にそうな顔をしているよ」

 そういって頬に手を這わせる。冷たい手だ、と思ったところで自分の顔が火照っている事に気づいた、手先や足は感覚がないくらい冷たいのに。

「兄さん、眠って。今日は私が護ってあげる」

「君、そうも行かないんだよ。彼らが大人しくしているか見張ってないとね」

「父さんが狩りにいく振りをして逃げたらどうしようもないし、さっき兄さんが私のために怒ったとき、もういいやって思ったの。兄さんがいればもう何にも要らない、兄さんと一緒なら死んだって良い。でも、兄さんが苦しいのは許せない」

「君、俺は別に苦しくないよ」

 妹君、君鋭いじゃあないか。笑っているのに、これでもポーカーフェイスは得意なんだがね。

「嘘、苦しそうだもの。兄さんの事ならいつも見ているから判るよ」

「君、他人を殺して・傷つけたらその事で苦しむことは出来ないんだよ。これは俺の勝手な考えだけどね。少なくとも相手を殺そうとしたなら、自分も殺されること、傷つくことは当然なんだよ。傷ってのは心の傷もだ」

「兄さんも勘違いしているよ」

 さっきの俺の台詞を引用か?

「兄さんの考えはどうでもいい、私が耐えられないの。一緒に寝て、ね?」

 なるほど、全く君は優しくて聡い女だよ。俺は甘やかされると堕落する駄目人間だからねえ、君のような妹はよろしくないんだよ。

「君の方こそ。今にも死にそうな顔してるよ」

 実際顔色が悪い。目の前で兄貴が父親の耳を、それも自分のことで焼いたら、それはそうなるかね。唇には血が通ってない、小刻みな震えに加えてフラフラしている。血圧が下がっているのか。

「うん、知ってる。だからお願い、兄さん、一緒に寝て?」

「わかった」

 ああ、糞。結局俺も耐えられないか、まあいい。俺の罪悪感なんて、父親の耳よりも価値がない代物だ。

「でも、今日はここで寝るよ」

 内側に開けるタイプのドア、そのドアの横を指差す。部屋に入ると死角になる部分だ。今日位は夜襲に備えてもいいだろう。

 妹は黙って頷いた。判っているのかは不明だが、この子は頭がいいから察しているのだろう。きっと、俺が怯えている事も判っているに違いない。

 壁に寄りかかって妹を手招く。横に座った妹の頭を太腿の上に。膝枕だ、一度やってみたかった。ちょっと立場が逆だけど。

「ねえ、兄さん」

「ん?」

「私はここで死んでも良い」

「物騒だね」

「起きたら皆夢でした、なんて事が怖いの。幸せが、痛い」

 その真意は判らなかったがそれ以降の会話はなかった。妹君はやはり疲れていたんだろう。直ぐに眠ってしまった。俺は眠れない。

 幸せが痛い、という感覚は理解できる。彼女も俺と同じで臆病な性質なのだろう。いつか幸せの象徴として俺は殺されるかもしれないが、まあそれならそれでいいだろう。

 それにしても眠れない。まあ怖がってるから寝られないのは判っていたが、生前も不眠症で薬飲んでたが、薬が恋しい。まあここまで神経が高ぶっては薬でも眠れないだろうけど。

 どうせ眠れないんだから、さっきの練習の続きをしよう。この練習は何処でもできるからいいな。

 魔力を少しずつ広げる、薄く薄く広げていく。なんだか今度はスルスルと広がっていく。広げた魔力の網に掛かっている物が手に取るようにわかる。もちろん両親もわかる。大人しく部屋で寝ているようだ。

 何故だ、殆ど魔力も消費せずにかなり広範囲に広がっている。目標の1kmには届かないが、迫る勢いだ。

 理由を考えるなら、危機意識だろうか。死にたくない、という俺の意識に反応したか。とりあえずどうでも良い、感覚はつかめた。この精度なら明日から狩りにいける。その前にやることは色々あるけど。

 死にたくないか。いつ死んでも良い様に思っていたんだが、やっぱり死を意識すると怖いもんだね。かといって、あそこで怯え竦んでたら、妹君がどうなったか判らないし。

 大事な一人の為なら、そうでない百人が死んでも良い。それが俺の大本の考え、それは揺らがない。ああ、なんつうキチン野朗だ。大本の考えと行動が乖離している。幾らビビッててもやることはやる、そうしないと後悔するからねえ。


 SIDE:エリス=キャロルリード

 心が壊れそう。

 兄さんは本気だ。本気で私と一緒に居てくれるんだ、歓喜と狂喜で狂いそうになる。

 もう死んでも良い、この喜びの瞬間を永遠に留められるなら今死ぬのが良い。今、兄さんとともに死にたい。

 でも駄目だ。兄さんは怖がっている、死にたくないと全身で言っている。

 残酷な割りに怖がりだ、でも良いや。私に優しければ。

 今だってそう、私が寒くないように暖めてくれる。幸せが痛い、兄さんが欲しい。

 兄さんを守らねばならない。私以外に渡してはならない。

 私はもう何も怖くない。

 SIDEOUT


感想など頂けると大変うれしく思います。

ゴミみたいに弱い心ですので、どうかお手柔らかに。

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