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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
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強い者不意打ち

走ることしばし、流石に大きく迂回したんで多少時間が掛かったが蛇君を見つけた。一人で戦っている様だが敵は遠くから弓と魔術を中心に攻撃しており、蛇君は防戦一方の様だ。まともに遣り合えば蛇君の方が強いんだろうが、相手にまともにやる気はないようだね。

 まあ当然だね。強い物相手にまともに戦うのは褒められたことじゃないし。


「ええい! 鬱陶しい奴らめ」

 蛇君はあまり冷静にはなってないようだね。爬虫類は冷血なんだから冷静な気がするけど。

「兄さん……駄目よ」

 妹君が悲しそうな眼で見ていた。いや、違う駄洒落とかじゃないし、というか心の声に突っ込みやがった。

「蛇君! 大丈夫かね!」

 無かった事にしよう。それが最善だ。何もかも無かった事にするのが一番良い。

「な! 主何をしておる、逃げよ! こいつ等の数は多い、此方は我一人だ。この作戦は破綻しておる、逃げよ!」

「否、作戦は順調だ。囮になるのが俺等か君等かの違いしか出ていない。残るはこいつらだけだよ」

 蛇君は驚いた表情だ。因みに蛇君は人型である。

「それにしても君、無事で何よりだよ。『機銃掃射』」

 蛇君の隣に立ち迎撃する。これで発動限界だね。まだ魔力は有るけども魔法陣としての発動は出来ない。

 隣にある蛇君の緑色をした頭を撫で、無意識で髪を梳く。さらさらだ。多少の違和感があるが。

「ぬ、むう。……何とも、大した威力よの」

 銃弾に抗い、あるいは倒れふす敵を見て蛇君が言った。若干下を向いて戦場に似つかわしくない発音だが、照れているのか! とっさに頭を撫でるなんて大罪を犯してしまったが、照れているなら不問にしてもいいかな!


「殺すことだけに特化した武器が元だからね」

 冷静さを取り繕うのは得意分野だ。医療職舐めんな。

「ゴブリンキング」

 琥珀の言葉にふと見ると残ったのは其れだけらしい。恐らくは蛇君と話しているうちに琥珀か妹君が何かしたのだろう、エリート共も死んでいる。

「君等2人でやれるかね?」

「無論です」

 琥珀はそう答えると妹君と共に王様を殺しに行った。弾雨にさらされてフラフラだし、万が一にも遅れをとることはないだろう。その間にこっちの話だ。



「蛇君、君本当に無事でよかったよ」

 ここだけの話だが、実はこの蛇君を気に入っているのだ。あからさまな態度を一瞬前に見せていてここだけの話もないがね。

 気に入っている理由は特に無い。俺の人選はいつもそうだ、気に入るか気に入らないか。前世の友人にも犯罪者がいたし、別に何とも思っていない。つまり人格や人種、性別、もしくは種族ですらどうでも良く、気に入るときは気に入る物だ。


「蛇君」

 無意識に繰り返していた。まずいね、自分で考えるよりも本気なのか?

「あ、ああ。うむ、ありがとう。主が来てくれなかったら流石にもたんかったよ」

「良かった。雀の涙のような俺の魔力でも役に立ったようだね」

「馬鹿な、2000に迫る魔力量を誇る子供など、普通おらん」

「君、魔力量なんて測れるの?」

「有る程度はな。それよりも我が上役殿が心配だ」

「上役殿?」

 始めて会った時にもそんな事を聞いた気がする。

「森の主様じゃよ。我は個人的にそう呼んでおる」

「詳しく説明したまえよ」

 蛇君に寄れば、俺の予想通りヤスデは裏切り者だったらしい。意外だったのは狼もそうだったということだ、イヌ科なんだから忠義を尽くせよ、とも思ったがどうも主様に力を認めてなかったとか何とか言ってたらしい。

(α症候群みたいな物だね)

 そしてヤスデの情報が偽りでありこちらに急を告げることも出来ぬまま蛇君は防戦一方、どうにかこうにか防いでいたらしい。



「いくつか解せない点もあるが、まあいい。取りあえずは森の主様を助けるとしようかね」

「否、主は逃げよ」

「ほう」

「あの2体は我よりも強い。恐らくは我は死ぬだろう。主はそうなって欲しくない」

「却下だ。君が死ぬなんて恐ろしい事は許しておけない。君、どうかそんな事は言わないでくれよ」

 実にらしくなくて鳥肌物だが、蛇君にはこの位の演技があっても言い。それに結局のところそれに尽きるのだ。自分が死ぬよりも重要他者が死ぬほうがよっぽど恐ろしいだろう。

 しかしまあ、蛇君が死ぬのを阻止するために妹君と琥珀を危険にさらしているんだから始末に終えない。もっと自分を鍛えて俺1人で対処できるようになると良いんだが。今はそんな場合ではないね。

「我も主に死んで欲しくはないんじゃ!」

「確率の問題だね。君一人で行くのと四人で行くのと。まあ議論の余地はないよ、勝手についていくだけさ。さて案内してもらおうかね」

「……勝手にせい」

 蛇君は諦めたように呟いた。可愛すぎ。


「どういうことよ、よりにもよって爬虫類と兄さんが仲良くなってるよ!」

「実に憂うべき事態……でも」

「なによ」

「エリスは精霊、実体の有る幽霊みたいなものだし、私は有機体で構成された人形。爬虫類が一番主様と近いという大惨事」

「いや! いやいや! おかしいでしょ、爬虫類よ! なんていうか進化系統上かなり昔に喧嘩別れしたんだよ?」

「問題は主様がそれを気にしないということ。主様は虫が苦手、その点は安心」

「何処に安心を求めてんのよ! 仮に虫に勝っても其れはもう敗北だよ!」

「主様を絡めとるには人手は1人でも多いほうが良い。仲間に入れる」

「人手……誰一人として人がいないよ」

「主様は奥が深い」

「馬鹿兄さんめ」


 全部聞こえております。ハーレムに人間が一人もいません。仲間に入れるとかなんか物騒な話をしておるね。後で埋め合わせはしないと。

「で、蛇君どっちだ?」

「このまま真っ直ぐ、直ぐ近くじゃ。油断するなよ、あやつ等は我と違って戦闘に長けておる」

「了解」

 四人でそろそろと進む。

 


 ウオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーン!

 


 うお! 壮絶に吃驚するな。狼の遠吠えか、流石に昔飼ってた豆芝とは迫力が違うね。そういえば彼が死んでから死ねたのは救いだった。彼を一人にするのも心苦しかったしね。

「狼の吠撃じゃの。声に魔力を乗せてぶち抜くんじゃ」

「てことは攻撃対象がいるんだね」

「急ごう!」

 蛇君がダッシュで向かおうとするのを慌てて止める。手を掴んだらヒンヤリシタ。

「あ、やっぱり蛇君は冷たいねえ。夏とか本体で俺に巻きついて」

「な、何を阿呆なこといっとるんじゃ。狼の攻撃対象は上役殿の結界ぞ。急がねば。どうしてもというならやってやらんこともない!」

「こっちは風下だぜ? 匂いで探れない、魔力も皆出してない状態だ。気づかれてない可能性が高いのに態々前に出る事はないよ。ぜひ頼むよ、そろそろ熱くなってくるからな!」

「おい馬鹿共、真面目にやれ」

 琥珀のマジ切れにビビル。

「あ、はい、すいませんでした」

「でした」

 蛇君が後に続く。いやすごく可愛い。

 

 さて、本当に真面目にするとしよう。姿が確認できるのは狼だけか。

 後ひとりは気になるが、まずは単純に強そうな狼からだ。ヤスデなんて草食だからね、関係ないかもしれないけど。

 目標補足全長5Mはあろうかという巨大な狼だ。

なるほど、狼の目標は前に見えるは透明の球体か。あれが結界なんだろうね。

「次に息を吸い込んだときに仕掛ける。いいね」

 無言で頷く2人、蛇君はポカンとしているようだ。

「……今」

 ぼそっと呟くように発して魔力を集中する。連発ではなく一発に魔力をこめた狙撃弾だ。

 死角を取るためにどうしてもほぼ真後ろに陣取るしかなかった。頭が狙い辛いが彼女らの攻撃で頭を上げてくれるといいんだが。

 二人が行った。音もなく飛びあがり大上段から切りつける。

「がああああ」

 背中を切りつけられて狼は僅かに頭を上げた。

 ガス!

 狙撃したとは思えない音だが、どうやら毛皮を抜けなかったようだ。だが流石にダメージは大きいだろう。

「手を止めるな! ここで仕留める」

 俺も残り少ない魔力を駆使して狙撃を続け、2人も縦横無尽に切りかかっている。あのお二方飛ぶように動くっていうかほぼ飛んでる。一撃一撃が重いし絶対に相手をしたくないね。

 

 俺が見るに、本性を現すと攻撃力が向上する代わりに動きが大分制限されているようだ。まあ犬だの蛇だのヤスデだの武器はもてないしどうしたって手数は減るよね。

「おのれ、おのれおのれ! 不意打ちとは、クソ! 己ら、誇りのないゴミ共め!」

 ついに狼は倒れ伏し恨み言を言い始めた。

「君と正面気ってやりあうメリットがまるで見当たらない。主人に尽くさなかった犬なんて価値がないしね」

「貴様に誇りはないのか」

「ない。役に立たない物は持たない主義だ」

 前世でもプライドは全くなかったね。プライドなんて看護師には邪魔なだけだし。特に今世の様な結構簡単に死にそうな世界では全く役にたたんだろう。

「……呪われろ。屑め……」

 事切れた。俺の口元は恐らく歪んでいるだろう。自分の考えがピタッと嵌った時は実に良い気分だ。それが敵を駆逐した時なら尚更。

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