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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
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防具屋は普通

相変わらず進みません。正直無くてもいい位かも……。


「さて、あとはコート、というが外套だけど何処にあるかね」

「先ほどの武具店は明らかに武器の比重が高かったですからね、通常の武具店であれば購入は可能でしょう」

 君等も買うかい? と尋ねたが服が隠れるから嫌だという、寒さや雨露はどうとでもなるらしい。

「琥珀はともかく、妹君は寒がってたと思うがね」

「寒かったら兄さんにくっつけるでしょ。兄さん暑いとあんまり抱き締めてくれないんだもの、夏は嫌い。でも、寒かったのは本当だよ。兄さんを好きになってから精霊としての能力も使えるようになったからね」

 初耳だが、確かに能力が使えてれば霜焼けだのチアノーゼだのは無かっただろうし、あのクソどもを難なく殺せたんだろうがね。

「この機体は非常に低温に弱く、摂氏15度以下での活動は困難」

「いや、何とも長閑な気候だよそれは。どこの熱帯地方での活動を想定してんだよ。べつに何度でも抱き締めるくらいしてやるから」

 速攻抱きつかれた。

「外では駄目。目立つから」

 君らは非常に目立つんだよ。綺麗で可愛いんだから。さっきからチラチラ見られるんだよ。まあ軍服姿の黒い少女と大きな杖を突いた白い少女は実に良い眼の保養になるだろう。

「ねえ、君たちそんな男じゃなくてこっちで遊ぼうよ」

 となればこんなナンパもやってくるだろう。これは一応お約束だ。基本的にはこんなナンパはありえない。まあ俺はやったこと無いから判らないが、そもそも男連れをナンパって定義がおかしい。大体妹君たちは12歳位にしか見えないはずだ、戦国時代の倫理観しか持っていないのか屑ども。あまり俺が言えることではないが。

 いや、まてよ。もしこの世界での倫理観が妹君たちを対象にしても良い、と言う事であれば俺は初めて日の下を歩けるのではないだろうか。誰憚る事無く12歳児は天使だと、可愛いは正義であると言えるのではないか。

「しね」

「いね。ロリコンども」

 俺の淡い期待は妹君の言葉で打ち砕かれた。この世界の妹君がそう発言したのだ、やはり俺は日陰を歩く雑草野郎なんだ。

 にしても綺麗に決まったな。今は2人とも実に機嫌が良い。だからナンパしてきた男共は命拾いだ。

「いやあ、かっこいいね。そっちの坊やにはちょっともったいないよ」

 だから頼むからもう行ってくれ。

「エリス」

「琥珀がやって、兄さんと離れるのいや」

 もう2人はどっちがやるかで話し合っている。あえて漢字に変換はしないが。

 やるとなると俺から離れる、それが嫌だと議論は白熱する。

「お前らのせいで、兄さんから離れた」

 結局は妹君が負けたらしい。怒りからか声はボソボソトしていて顔は俯いている。高次機能障害を患った脳なら、もしかすると恥らって見えるかもしれない。

「お、じゃあどこいこうか」

 暢気にそんな事をいう三人の男。高次機能障害を患ってたか。

 妹君が即時抜刀。俺の目では追えなかったが石畳の地面は綺麗に切り裂かれていた。もう居合いとか使ってるよ。かっこいいなあ。

「黒の試し切りにはいいかな」

 ああ、かっこいいなあ。そこの3人切り殺してくれないかね。きっと綺麗にスパッといくと思うんだが。

 けどまあ、法律は守ったほうが良い。

「おいで」

 片手を広げてそういうと、妹君は実に嬉しそうに抱きついてきた。

「刀はしまってくれたまえよ」

 怖いから。いや、よく切れる刃物ってのはなんかこう凄みがあるね。

「お兄さん方、この辺で良いでしょうかね。妹は疲れているようなので」

 あれ、俺かっこよくない? 両手に美少女侍らせてクールにキリッと、いや確実にカッコいいね。

「カッコ付けないほうが良い」

「兄さんは無理しないで」

 否定された。敗北の味は苦い。いつかリベンジしてやりたいが、この2人カッコいいんだよねえ。

 ポカンと呆けた顔をしている兄さん達を無視して歩き始める。外套を探さないといけないからね。

「とりあえず、適当な防具屋でも見ようかね。まだ金に余裕があるし」

「適当にといっても……後1軒有る程度」

 そりゃそうか。町に武具店が複数あるなんてのも嫌だが、この世界の需要を考えるとそうでもないのかね。

「いらっしゃい」

 そんな訳で適当に見つけた店に入る。まあ選択肢は無い訳だが。

「外套を探しています。防水と防御に重点を置いて、出来れば収納ポケットが多いといいんですが」

「坊主が着るのか? 一応魔法陣で着られないことはないが」

「ええ、お願いします」

 店主は渋い顔をする。まあ、12歳だからね。普通防具は求めないよね。

「まあ客は客だ、金さえ貰えば文句はねえよ。予算は?」

 良いねえ、やはり世の中金だよ、金。さて、予算か。武器がかなり安く仕入れられたからな。

「金貨1枚まで」

「外套一着にそんだけ出せりゃ、良いのがあるぜ」

 店主は一転して良い笑顔で置くに引っ込んだ。いいね、金さえ有ればって思考は好きだなあ。

「こいつだ。雨天蝙蝠うてんこうもりの皮膜を魔術で縫い合わせてある。奴らは雨の日に好んで飛んでるんだが、その皮膜は水に強い耐性を示す。おまけに魔物の皮膚なんで耐刃性も強い、どうだ?」

 店主が持ち出したのは黒い外套だ。色々見させてもらうと、両胸の内外、脇、後ろ、など至る所にポケットやそれに類する物があり、耐久性もいいようだ。試しに着てみるとズシッと重いがこの重みが好みだ。

 着てみると大きかった外套がスルスルと自分サイズになったのは驚いた。やはり知識と実践では違うな。

「よくお似合いですよ。中二病」

「おい、やめて。薄々感じてるんだから」

 抑揚の無い声で言われると、ものすごい非難されている感が有る。

「何故態々外套を?」

「合羽代わりってのも本当だけど、なんか好きなんだよね重い服がね。なんかこう安心感がある」

 ま、恐らくは終ぞ得られなかった抱き締められる感覚とか、何らかの安心感とかの代償行為なんだろうね。もしくは存在の軽さを代償しているか、どっちにしても碌な理由ではないがね。

「で、どうするんだ?」

「ハイ、頂きます」

 琥珀エモンに見ていただいた結果として、性能的に嘘偽りはない様なので購入した。まあこの重みと収納の多さだけでもいいものだ。好み的には防弾も欲しいが、この世界に銃なんてあるか判らんし今のところ良いだろう。

「兄さん真っ黒だね」

「エリス、触れてはいけない。病気だから」

 妹君は琥珀の言葉に首をかしげているが、確かに真っ黒だね。

「前世での悪い癖が抜けてない、よくお似合いですよ」

 また抑揚の無い声で褒められた。敬語が痛い感じ。

「悪い癖というなよ。泣くぞ、深刻な感じで」

 外套を羽織った姿はまさに黒ずくめだ。ひざ裏よりわずかに下まで伸びた外套のすそはすっぽりと体を包んでいる。多少明るい色のズボンを履こうとも遠目には真っ黒だろう。ズボンも明るくないし。

 この外套はズシッと重くて好きだ。通気性もよくそう暑くない。

 外套を買った後も細々とした日用品を買っていて遅くなった。村では手に入りにくい物や琥珀の私物だったが、結局は妹君にも色々ねだられてかなりの時間が掛かった。

 今は宿に戻って戦利品を品定めしている。結局もう一泊することになったが、まあいいだろうね。別に好き好んで帰りたい場所でもないし。

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