武器屋
あまりにも話が進まないので連投します。
二人が寝たのを確認してベッドから這い出す。この2人人間じゃねえから寝返り打たないんだよね。非常に神経使う。まあ気づかれてはいるんだろうけどもね。
さて、サボっているとは言っても魔力の継続的な上昇は避けてられないからね。使えば上がるということは、使わなければ衰えるという可能性を含んでいるからだ。
本当は新技を開発したいところだが、こんな所では無理だ。朝まではまだ間がある、5時間あれば完全回復だ。
しかし、宿の一室でというシュチュエーションでは出来ることに限りがある。今の俺の魔力の質がどの程度か、客観的に判断する指標がないため不明だが、少なくともこの宿を灰にできるくらいは有り、魔力量もそれを実行できるだろう。
まあそんなことになったら一瞬にしてお尋ね者だ。モラルがどうのというよりも、リスク管理の面で法律は守ったほうが良い。
犯罪者にならずに訓練をする、つまりは外的に影響を与えずに魔力を消費すれば良い。幸いにも俺は空想できるので何とかなるだろう。加えて前々から考えていたお約束を実行したい。
お約束、つまりはアイテムボックスだ。RPGの基本、何でも入る不思議な袋。
現実的な話、旅をする装備の重量がネックになる。長距離を移動しようと思えばそれは無視できない。琥珀に聞いた話では、重量軽減とかの袋はあるらしいし、四次元ポケットに類する物もあるらしいが効果は小さく、恐ろしく高価らしい。
まあないなら作ってしまおうと考えてはいた。さて、問題はやはり質量保存の法則かね。イメージの問題と言うならこれもまたイメージで誤魔化せる筈だ。もともと固執している訳でもなく、刷り込まれているだけだ。
そんな訳で影に落とし穴を作るイメージで押し通す。人型の決戦兵器が落ちていった感じで。
影に魔力をためてその魔力に保存する感じだろうか。俺の影を底なし沼にして、後は取りたいものがすぐ取れる空想をすれば良い訳だ。やっぱ空想魔術の汎用性は異常だ。
影に魔力を半分くらい流し込んで確認してみる。指をつけると水面のように波紋が浮かんだ。水面というよりは液晶のディスプレイのようだ。
これはいける!
テンションの高さに任せて高々と上げた指を影に突き入れた。グキッと音がして嫌な感じに指が曲がる。突き指だ、きっとそうだ。取りあえず治療してみなかったことにした。
にしても、これは水溜りよりも浅いかね。魔力で空間を作ること事態はできたが、奥行きが全然ない。発想が間違ってないなら方法が間違っている、だが見たところ方法も正しいように見える。となれば量が足りない、かね。
どうやら俺の持つ空間操作は難しい、と言うイメージが中途半端に採用されているらしい。こつこつとやっていくことが好きな思考も、もしかしたら影響があるのかも。これからこつこつと影に魔力をこめる日々なのだから。
因みに卵の方も忘れてはいない。半分ずつ注いでいる。これは卵の上限を疑っているからだ。
急速に注いで割れる、とか勘弁して欲しい。
魔力を使い切ったのだから罰ゲームの番だ。1時間の枯渇症状に耐え切って何とか回復した。声を出しては居ないはずだがばれてるだろうな。気配察知に敏感な2人だ。そっとして置いてくれるのなら有り難い。
結局全魔力を浸透させても影はその面を波立たせるだけで深くも広くもなってない。方法論じたいが間違っている気がするが、まあ所詮訓練のついでだ目標が達成できるのなら副産物のほうは又今度でいいだろう。
1時間耐えたおかげで疲労困憊だ。もう動くことも間々成らない、というか動きたくない。というわけで此処で寝る事にする。独り言を呟いて丸くなる。直ぐに睡魔がやってくるだろう。俺は丸くなって寝たい派なんだ。ベッドの上で仰臥位とか眠りづらいから。
丸くなって愚痴る。添い寝が辛いとか思っても見なかったね、ハーレムってもっとこう夢いっぱいなものかと思ってたよ。いや、もちろん夢は一杯なんだが大分胃に厳しい。制酸剤が欲しいくらいだ。
うつらうつらして来る。前世では不眠症だったが、流石に深夜に1時間ももがけば眠くもなる。おやすみなさい。
起床。普段通りだ、こんな町滅んでしまえば良いのに、と思う。ああ、眠い。
普段どうりでない点があるとすれば、床に寝ている点だけだね。両サイドに依存型ヤンデレが2人くっついているのも普段どうりだ。態々俺を仰臥位に体位変換してからくっ付いて来たんだろう。体中が痛い。
「……おはよう」
「おはよう兄さん」
俺が起きるのを待っていたかのようにそう声をかけてきた。実は心配で寝てないとかだろうか。馬鹿な。
「中々起きてこないから心配したよ」
「主様……」
体を起こす暇もなく2人にきつく抱き締められた。予想はあたったんだろうか。妹君はある程度慣れているんだろうが、それでも肩に歯を立てている。
琥珀のほうは言葉すら出てこない有様だ。昨日の罰ゲームはそう派手ではなかったがガタガタと震えていたからね。見慣れないと不安にもなろうという物だ。
「主様」
物凄く腕が痺れる。かなりの圧迫を受けて腕の血流がなくなってるようだ。琥珀とは会ってまだ間もないけども、普段は無表情だ。その琥珀が歯を食いしばってうわ言の様に俺を呼ぶ。
ああ、なんて言う愉悦。素晴らしき状況。自分の唇が歪むのを止められない。誰かに心配されるのは好きだ、心配されたい。前世では全くそんな事はなかったからね。
まあ、ただそうはいっても愛情を確かめるような行為は厳に慎むべきだ。これは実体験からも明らかだ。
「ごめんね琥珀。吃驚したね」
「取り乱した」
正気に戻った琥珀が起きた。それにあわせて妹君と俺も立ち上がる。
『魔力値が規定量を超えました。世界からの恩恵として魔力値が上昇し、スキルが送られます』
スキル:魔方陣構築を入手しました。
魔方陣構築:任意の魔術を魔方陣として固定できる。多重展開や任意での発動制限等も出来る。魔方陣の制御は魔力によって変動する。
「琥珀う、なんか入手したんだけど」
「聞こえた。今のは『オラクル』、スキルや称号の入手を伝えられた」
琥珀の話によると普通は聞こえないらしい、今回は同じパーティーなので聞こえたんだろう、とのこと。
「なんで『闇精霊の祝愛』は聞こえなかったんだろう?」
「な・に・か・に、夢中だった」
実に薮蛇であるなあ。ここは話題を変えるに限る。
「で、魔方陣とやらはどうやって使えばいいんかね」
あ、又俺のことを可愛そうな子を見る目で見てる。この世界の常識をたずねるときにはそういった眼で見られる。やめろ、そんな眼で見るな、泣くぞ。割と深刻な感じで。
「話が面倒。朝食と買い物が先」
「ふむ、琥珀が言うならそうなんだろうね。ではそうしようか」
その後朝食を食べた。この世界に来てからご飯を食べていない。米がくいたい、別にパンが悪いわけじゃないが、日本人は米が無ければ生きていけないんだ。それでも俺は元々があまり米を食わない食生活だったので耐えられている。通常の日本人ならすでにアウトだろう。
まあ無いもの強請りはここまでで。朝食は終了。次は買い物か。人ごみ、嫌だなあ。
「さて、最初に服屋さんでも行こうかね」
「どんな物を?」
琥珀に聞かれた。琥珀は人形の元を通して記憶の共有をしていたが、それは完璧ではない。俺が知られたくないこと、俺の興味のないこと等は記憶されないらしい。そうであるならば服の好みなんて判らなくて当然だ。生前も今も、服装なんて物には一遍の興味もないんだから。
しかし、今は服を買おうとしている。理由は着心地が悪いからだ。固めの布と皮で補強された村の普段着は丈夫だ、だがゴワゴワとして肌に擦れるし、モチベーションがミルミル削られる。
「まずは着心地だね。ついでまあ丈夫な方がありがたい」
「その二つは基本的には両立できない。魔方陣構築で改造した方が良い」
「ほう、便利な物らしいね」
「それはもう」
服屋さんを探すと規模の違うものが何店かめについた。琥珀によると、オーダーメイドの服を作る店、新品を売る店、中古を売る店、ということらしい。基本的には貴族や金持ち以外は中古の服だそうだ。
まあ、新品の服でも銀貨5枚くらいが最高級らしいので手持ちで買えるだろう。
「妹君と琥珀は服装の好みとかある?」
「兄さんの好みは?」
「教えて」
まあ、予想は出来て居たんだ。しかし、個人的にはファッションセンスは皆無だから困る。周りを見渡しても地味な服装が多いからそこまで考えなくてもいいかとは思うが。
極個人的な好みであれば琥珀は銀髪に合わせた黒い服、妹君は黒髪に合わせた白系の服、が髪の色を強調して好きだ。髪、特に長髪が大好きだ。
以上のようなことを言ったら納得してもらえた。深く頷いていたので、早まってしまったかもしれない。
「いらっしゃいませ」
新品専門店に入ると丁寧に挨拶された。やはり一般的には高級品なのだろう対応が良い。
「本日はどのような物をお探しでしょうか?」
普段使いの服は普通中古で良い為、新品を求めるのは何らかの目的があることが多いそうだ。だから、態々聞いてきたんだろう。
「あ、ええーと、普段使いできる着心地の良い服を一人3~4着くらい探してます。予算は金貨3枚くらいまでで」
「左様で御座いますか、ありがとうございます。君たち、お嬢様方に御付しなさい」
なんかカッコいい執事風の店員さんが後ろにいた女性店員さんに声をかける。かしこまりました、と2人の店員が琥珀と妹君の傍に来た。琥珀はともかく、妹君は人見知りだが、大丈夫かね。
「私はとにかく白を基調とした服をお願い、他の色は一切必要ないので」
「黒をメインで、それ以外では暗い色を中心に」
心配は無用だった様だね。2人ともさっきの俺の発言どうりに服を選んでいるようだ。まあ、店員さんも付くしヤバゲなものは選ばないだろう。さて、俺も選ぼうかね。
「若様はどのような服をお探しでしょうか」
若様とか、どうなんだろうか。貴族か大店の息子と思われているんかね。
「失礼、私は一般庶民ですのでどうか若様は勘弁願います」
「は、失礼いたしましたお客様。どういった物を御探しでしょうか」
さすがに対応にそつがない。にしても、どういったものを御探しでしょうか、は俺が聞きたいよ。
「あまりゴワゴワしない服を、色や形は特に……あ少し余裕のある大き目の服がいいですね」
「かしこまりました」
と、そういって店員さんがいくつかの服を見せてくれた。適当に見繕って上を3着購入。ズボンの方は村で使っている多少ゴワゴワする布でも特に違和感がないので良いだろう。
俺の方は終わったが、まあ当然の様に向こうは済んでいない。幾度か意見を聞かれたが、俺から見れば差異がほとんど判らない物だ。2人とも一応女性ということかね。
結局それから1時間以上は掛かった。女性二人の初の服購入、というイベントの難易度を考えれば、まあ早かったほうではないだろうか。
妹君は白を基調とした服が多い。白と淡いピンクのブラウスが1枚づつにワンピースが1枚、ワンピース着用時にはスカート? の下にタイトな黒いズボンを合わせるようだ。ブラウスの時には少し余裕のある、やはり黒いズボンを合わせている。計5着。
琥珀は黒だ。軍服のようなピシッとしたジャケットとスカート、ジャケットはポケットが多い。その下には薄手のシャツを着るらしいが、此方を3枚購入。計5着。
琥珀は基本的にはジャケットとスカートをメイン出来るようだ。人形であるので老廃物で汚れないからかね。妹君は適当に白い服を着まわすようだ。
「ありがとうございます。全部で金貨3枚と銀貨3枚ですが、多くご購入いただきましたので、金貨3枚でいかがでしょうか」
値引きしてくれるなら特に文句はない。適正価格も知らないが、まあ大きく外れては居ないだろう。
「はい、ありがとうございます」
そういって代金を払い退店する。琥珀はジャケットとスカート、妹君はワンピとズボンをすでに来ている。
俺はTシャツのような服を着ている。今は暖かいからこれで良いだろう。あとは防具としてのコートとかジャケットを羽織ることになるだろう。
「次は武器か」
「すぐそこに武器屋がある。そこで良いと思う」
琥珀がすかさず情報を教えてくれる。服と髪を褒めまくったので二人とも機嫌はいいはず。実際に服は可愛い、まあ琥珀はカッコいいか、ので褒めるのに苦労はなかったし、何より髪が綺麗に映える。良き哉良き哉。
「なんか、物凄く入りづらい」
武具店アンフェール、翻訳機能のお陰で判るんだが、これはフランス語辺りで確か、地獄だと思う。
「餓鬼の来る所じゃねえ、帰れ」
お約束通りの対応だね。まあ確かに12歳の子供の来る所ではないはな。
店主はドワーフなんだろう。俺よりも背が低いように見える。だが、その体は筋骨粒々で岩が座っているようだ。
店内は意外なほどに広い。壁には大小さまざまな武具が置かれて居るが、中心は不自然に閑散としている。
「来るかどうかは此方が決めること。余計なことは良い。刀はある?」
意外にも強気な妹君。この子は俺以外のすべてが嫌いらしい。
「ある。東方からの旅人が売っていった物でこの辺じゃ珍しい。が、売るかどうかを決めるのは俺だ、帰んな餓鬼共」
その言葉に妹君から例の禍々しい気配が立ち上った。どうもこれは魔力らしい。これは推測だが、闇の魔力が禍々しいのではなく、家の妹君が禍々しいんだろう。
魔力に気おされたドワーフがたじろぐ気配が擦る。
「外見でしか判断できない、節穴のような眼を持つ矮小なお前に今一度だけ言ってやる。刀を出せ」
「くっ」
ドワーフが気おされる。ここは一つ妹君をしかるべきだろう、強引に過ぎる。
ポコン、と軽く叩く。ポカンとした顔で振向いた後涙を浮かべて抱きついてきた。
「兄さんがぶったああ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、捨てないでください捨てないでください……」
物凄い鬼畜感があふれる謝罪をされている。恫喝外交か。
「君、大丈夫だよ。君が俺を殺しても俺は君が大好きだ、でも誰彼かまわず威嚇するのは感心しないね」
「はい、ごめんなさい」
涙目で素直に謝った。可愛いなあ、食べてしまいたい。
「ドワーフさんに謝りなさいな」
「ごめんなさい」
こちらも素直に謝った。
「いや、確かに俺の目が節穴だったらしい。まさか闇の精霊様とはな」
「おわかりに?」
「ああ、ドワーフは土や鉱物の精霊と親しい。精霊の気配ってのはわかる。まあ、闇を見たのは初めてだ、めったなことじゃあお目に掛かれねえ。あんた、何もんだい?」
「おれ自身はしがない一般人ですよ。たまたま妹が精霊ってだけです」
「そうかい。まあ俺は武器のことしかわからねえ、そういう事もあるだろうさ。どれ、ちょっと待っててくれ」
そういってドワーフは置くから長い袋を持ってきた。長大な竹刀袋を解くと中から、これまた長大な刀が出てきた。大太刀または野太刀と呼ばれる類だろう。1m半はあろう。流石にこれは使えないんじゃない?
俺が思うまもなく妹君は持っていた。重さなどないかのように片手で太刀を振る。本来は両手持ちなんだろうが、剣速が半端じゃないため威力は十分だろう。
「エリス、魔力で包んで……闇で支配する感覚」
妹君は琥珀の言葉に判った、とか言ってるけどどんな感覚? 怖いんですけど、俺支配されたりしないよね?
柄を握った妹君の手から影よりも一段濃い暗闇が刀を這っていく。先端まで黒く染まった刀は生き物のように蠕動し形を変え始めた。一瞬前までは確かに刀であったはずなのに、今妹君の手に収まっているのは黒い杖だった。
「なんで? 私は刀が良いのに」
「エリスの戦闘スタイルに最も合った形状になった。貴方は剣士でなく魔術師ということ」
「そんなことどうでも良いの、兄さんが刀がいいって言ったのに」
「まあまあ、君、自分にあっていると言うのなら杖で良いよ。実によく似合ってる」
「じゃあこれで良いや」
納得早いなおい。
「名前をつけなさいな」
琥珀がそういう。
「なんで? 別にいらないけど」
「名前をつける、という行為は魔術的に支配すること。名前をつけることでエリスの武器になる」
「名前ねえ、じゃあ、黒」
一切の逡巡なく妹君は名前を決めた。結構可愛そうな名前だな。
刀→杖は名前を得たことで輪郭をはっきりさせていき完全に妹君仕様に固定されたようだ。
「ちょっとみせてくれ」
ドワーフの人が杖(刀)を持つ。
「鑑定」
ドワーフの人の声と共に魔法陣が浮かび刀をスキャンした。
黒杖刀・黒四季:武器・仕込杖
闇の魔力によって強化された仕込み杖。強度を徹底的に強化されており、たとえ折れても自己修復できる。又魔力を吸収したり、魔力を持つ物を切る事で徐々に強力になっていく。杖としても強力で魔力増幅効果が高い
「驚きだ。魔術で強化は間々ある技術だが、こいつは別物になっとる」
たぶん銘が違うのはささやかな抵抗だ。俺だけは正しく読んでやろう。にしても、なんと言うかチート武器だなあ。自己修復できるってことは、刀の一番の問題点であるメンテナンスが不要、あるいは簡単で済むということだ。刀は直ぐに切れなくなるからなあ。
加えて自己進化か。まあどの程度で強くなるかは不明だが、さっきの鑑定ってのは覚えておこう、なんかカッコいいし。
「さっきの物言いからすると、あんたも普通じゃねえんだろ? 何探してんだい」
ドワーフは嬉しそうな顔で琥珀にたずねた。このおっさんも普通じゃないんだろうか。
「ただ重い武器。切れ味は二の次、重くて丈夫な物」
「それなら良いのがある。あの壁に掛かっている剣だ」
丁度背面の壁を指差された。振り返ってみると1mに満たない幅広の剣が立てかけてあった。長めのチンクエディアというイメージだろうか。
「そいつはな悪魔の爪って呼ばれる類の武器だ。比重の高い金属に硬化と加重の魔方陣を刻んであるからあの見た目でも10k以上は軽くある。どうだ」
琥珀は軽やかに歩んでいくと、ヒョイッと擬音が聞こえそうな気軽さでその悪魔の爪とやらを持った。
「いささか軽いが、頑丈そう。まあ良い」
個人的には良くはない。10kあるものを振り回すとか、もう怖すぎるわ。
「兄さん兄さん」
なんだか妹君に袖を引かれる。杖を構えてくるっと一回点。
「惚れ直した?」
「うん。カッコいいねえ、二人とも」
その言葉に2人が相好を崩す。その姿を見て眉をひそめたドワーフが問うた。
「おい、お嬢さん方よ。武器ってのは何のためのモンだと思う?」
何だ、いきなり。2人とも戸惑ったようだが答えることに支障はないようだ。
「武器とはより効率的に殺すための道具」
流石に機動兵器、その認識は当然か。
「人間は武器を殺すこと以外にも使うと聞いたけど、私には判らないね」
今度は妹君が言う。殺すこと以外というと、自衛とか防衛とか抑止力とかかね。まあ背景にあるのは傷つけることなんだから、この答えでもいいとおもうが。
「くはっ」
耐え切れぬ、というようにドワーフは笑った。
「いいだろう。お前らが守るためとかぬかしたらそいつらを返して貰おうと思ったが、合格だ。武器なんてモンは人きり包丁だ、殺して殺して殺しつくす。そのための武器だ」
そういってゲラゲラと笑っている。ああ、こいつも狂気系だ。何で俺の周りはこんなんばっかり。ただ目に付いた武具店の店主なのに。
「地獄に落ちるような思考をしてますね」
「馬鹿言え。ここが地獄の入り口だ。いつか地獄に行ったら、地獄の悪魔どもに武器を打って天国に攻め入ってもらうのさ」
ああ、本当に物騒なところだ。
「ところで、そっちの兄ちゃんはどうだ。武器はつかわねえのか」
「ええ、いまのところ」
周りを見ていたが、俺が探している武器はなさそうだ。俺の返答に店主は、はっ、と鼻で嗤う様な対応をしたが、気にしないことにする。
やっぱり進みません、すみません。




