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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
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壊れた心・壊した人

「のう主よ。実際の所どう思うておるんじゃ?」

「何に対して? 質問は端的に願うよ」

 2人が暗がりに消えて、すぐに蛇君に問われた。といってその意図は良く判らないが。

「主の妹に対してよ。今の関係が健全である、と考えてはいないだろう?」

「そうかね? 俺の肉体と妹君いもうとくんの肉体に血縁関係は無い、加えて別種だ、子供が出来るわけでもないし特に問題ないと思うがね」

「本気でそう思っておるのか」

「冗談だとも。君が言いたいことは妹君が俺に依存しすぎである、と言うことなのだろう?」

 蛇君が頷く。

「主の妹は主が居なければ生きられない、それは異常だと、我は思うんだが」

「当然、異常なんだろうね。ただまあ、妹君だけが異常な訳ではないんだよ」

「ほう」

 蛇君の目が薄明かりの中で細まった気がした。

「どちらかと言えば、狂っているのは俺なんだ。妹君がこうなったのも俺がそう望んだからかもしれないよ」

 蛇君はもう何も言わなかった。

「あの可愛らしく、愛おしい妹を俺に縛り付けたかったんだよ、きっとね」

「自分の事なのに判らんのか?」

「判らないねえ、あの時は最善と思ったが、やはり付け焼刃ではどうにも。結果を見るになんとも無残な物だね、妹君を壊してしまったよ」

 蛇君が震えた、何か怖い物を見たような目だ。自分の後ろを見てみるが何もいない。

「我が、我が主を恐ろしいと思うのはそこよ」

「おそろしい?」

 蛇君はブルリと身をすくませた。

「妹を壊したと言ったな」

「現状を見るに、そう言ってしかるべきだろう」

「なのに、何で主は笑っておる。気づいてないのか、自分が笑っていることに」

「ああ、そんなことか。知ってるよ、自分の表情くらい。笑ってるのは嬉しくて楽しいからだ。(あの子)なら俺を一人にはしないだろう? 勘違いしないで欲しいがね蛇君、本当に意図して壊したんじゃないんだよ」

「……そんな事は良いんじゃ。意図しようとしなかろうと、その結果を喜ぶ主が恐ろしいんじゃ」

「そうだねえ、俺も随分と前に壊れてから、あまりよろしくない類の人間だからねえ」

「全く……恐ろしいことよ」

 蛇君がそう呟いた時に暗幕が消えた。どちらか1人しか戻ってこないかと思ったが、良かった2人とも無傷だ。

「兄さん」

「主様」

 2人そろってこっちを見ている。実に、実に俺の好みな展開では有る。まったくもって何一つ不満など無い。が、現実にこうなってみると胃に穴が開きそうだ。喉元まで胃液が上がってきて、喉がヒリヒリする。最高の気分だ。これがヤンデレのリアリティか。なんとも素晴らしい。

「あい」

 喋ると吐きそう。

「兄さんがどうであれ私達は付いていくからね」

「どうか、末永く」

 よく判らん。暗幕の中で何事があったかは知らんが、まあ殺し合いにならないだけ良いかね。

 ああ、本当に胃に悪い。胃壁に穴が開いても修復は簡単だろうが、あれは痛いんだよねえ。ハーレムとか一瞬でも期待した俺が馬鹿だったなあ。こんなんが続いたら死ねるね。アア、なんて素晴らしいんだろう。

「良く判らんが、まあいいや。仲良くなったんだから、この周辺探索しよう?」

「うん」

「わかった」

「琥珀はここの人なんだろ? 何か金目の物か役立ちそうな物は無い?」

「ある」

 適当に期待しないで聞いたんだが、意外にも肯定された。

「あるの?」

「使い魔の卵」

 またファンタジーな言葉だねえ。

「それが何かは大体のイメージで判るが、そんな物があるこの遺跡は、そもそも何なんだろう」

 俺の質問に琥珀がフルフルと首を振る。

「私は情報収集のためにこの遺跡にいたけど、目的やその他重要事項の入力前に遺跡の人間たちが去った、その後私は約1000年、収集される情報を記憶してすごした」

「ふーむ、破棄されたって事か。1000年もエネルギーが良く持ったもんだよ」

 琥珀の話ではエネルギーはほとんど使用せず、情報と一緒に魔力すら取り込んでの自給自足だったらしい。流石にそろそろ限界ではあったようだが。

「あそこに有る卵以外に、目ぼしい物は無い」

「あれか」

 琥珀は自分がいた円筒のケースの後ろ、丸い保育器のような物の中に入っている卵を指差した。さっきは琥珀の影で見えなかった。まあ、琥珀に目が釘付けだったんだが。

「1000年前の卵か、生きているのか?」

「ふむ」

 黙って話を聞いてきた蛇君が卵を覗き込むように前に出てきた。流石に人外、もう持ち直してはいるようだ。

「これは卵ではないのかも知れんぞ」

 ひとしきり卵を観察した蛇君が言った。先を促す。

「卵というよりも魔法で作られた生物や魔獣の核に見える、だとすれば生命はまだ宿っていない、1000年だろうと問題はないはずじゃ」

「なるほどねー」

 こいつは生物になるためのパーツ、部品ということだ。故障の可能性はあるが、元々生きていない物が死ぬことは無いだろう。

「核、と言ったが、どうしたらこっから魔獣にできるの?」

「魔力を送り込めばよい。魔力が栄養で、そのうち生まれる」

「やっぱり卵じゃないか。ま、暇つぶしの心算で着たんだ。琥珀を手に入れたことで十二分に満足する結果だ。この卵が駄目でも落ち込むまい。と言うわけで、これ持って帰ろう」

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