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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
第1章 平凡に転生
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ご予定は?

感想をありがとうございます。

ご質問を頂いており、ネタバレも含みますので活動報告に返事を乗せるものとしました。駄文ではありますが楽しんでいただければ幸いです。

 蛇君から異常と言う褒め言葉をいただいた。まあ今は妹君だ。

「お褒めの言葉どうも。さて、エリス」

 名前を呼ぶと妹君は体を離して此方を見た。意図的に名前を呼ばないことで、呼んだ時にインパクトを与えるように心掛けているんだが、今の所奏功しているらしいね。

「君の秘密を知ってしまった。だから、俺も秘密を打ち明けようと思うが、君がそれを気に入らないなら、本当にここから出て行っても良い。俺が出て行っても良いし」

「あは。それなら我のところに来い、歓迎するぞ」

 蛇君が声をあげると、瞳孔の開いた眼で妹君が睨みつけた。

「兄さんに近づくなよ、蛇」

「はいはい、それはもういいから」

 妹と蛇君をなだめて俺は身の上を話した。自分で言っていても実に荒唐無稽な話であるが、妹は納得したようだ。

「ある日突然、兄さんが優しくなったのはそういう訳だったんだね」

 なるほど、まだ疑問を持っていたのか。まあ当然だね。

「私は兄さんにあえて幸せ」

 俺が黙っていると、妹君はそういって笑った。

「兄さんが言ったんだもの。兄さんが悪魔でも私は気にしない」

「君、悪魔ってのは人間の代名詞だよ」

 きゃっきゃうふふ、とじゃれていると流石に蛇君が不満げに口を挟んだ。

「主ら兄妹は似たもの同士じゃよ、異常じゃ」

「まあまあ、正常よりは世の中が楽しくなるよ。それはさておき、今度は闇の精霊とやらについて教えてよ」

 妹君ではなく蛇君に問う。流石に自分のことを説明しろといわれると難しいだろう。

「ふむ、闇の精霊はその名の通り闇を操る。質量を持った闇がその本質じゃろう、その他にも闇の範疇である眠りと安息、そして死を司ると言われておる。彼奴らが何故に人に託卵するのかは判らん。だが人間はそれを嫌悪すると言われておる。正体を知らずとも、無意識ですらそうだとも」

 なるほど、虐待の理由はそれか。俺はなんだろうね、異世界人としての特性かね。

「ただなんにでも例外はある。時折親兄弟として闇の精霊と友誼を結んだ、と言う話もあるが、極めて稀じゃ。故に闇の精霊は長じてからはすべての精霊と比べてめったに人の前に現れん」

「精霊ねえ、全く驚天動地だよ」

「兄さんの世界には、居なかったの?」

「さてね、少なくとも俺は見たことが無かったね」

「で、だ。闇の精霊について語るならばはずせん能力がある。死霊使いじゃ」

 さっきも出てきたね、それ。

「闇の精霊は擬似的な魂を一つ持っておる。それを死体に乗り移らせて、己の眷属として使役するのじゃ」

「ほう」

「操れる死体は一つ、じゃが魂の乗せ変えは可能じゃ。寄ってより強い死体を捜して、闇の精霊は争いに近づいてくる。人間以外の種族にもそうすかれはせんよ」

「ほう、だったらあの熊の死体は持って来れば良かったかね」

「主は恐ろしくないのか。死を操ることが」

 蛇君が呆れ顔で言う。8歳くらいの幼女、いや美幼女の呆れ顔。なんという眼福、合縁奇縁とはいうが全くついている。実に綺麗だ。

「いやあ、俺の前世の職場は死だの死体だのは廉価大安売りされてたからねえ」

 そう、死ぬのは安いが、生きるのは高い。豆知識、集中治療室は素泊まり一泊10万円。色々つけて一月大体400万円。三割負担、でも高額医療の申請すれば戻ってくるよ。でもそんなことしないで死ぬときに死んだほうが楽でいいよ。

「結論を出そう。闇の精霊は強くてかわいい。その待遇でコンゴトモヨロシク」

「怖くないの、兄さん」

「ふむ、怖いよ。俺はこの世で怖くない存在なんて一つしかないよ。だから君のことも怖い。でも特に問題は無い」

 妹君は今度は無言で抱きついてきた。人肌大好きな昔に戻っちゃたかな。問題は無いけども。

「さて、今度は蛇君だね」

「うむ、妹とは初めじゃのう。改めて名乗ろう水蛇みずへびじゃ」

「水蛇って」

 名前か?

「それは名前じゃなくて種族なのでは? 兄さんが食われてなくて幸いでしたよ」

 ああ、やっぱり種族名か。俺蛇君の名前知らないんだよね。でもなんか種族的な禁忌とかあったら困るし、向こうから言うまでは黙っていよう。蛇君で問題ないし。

「なんじゃ、この死神が。長々と人にくっつきおって、アリスの死体が欲しいのか」

 それまで俺に抱きついていた妹君が勢いよく立ち上がる。

「爬虫類が、本当に殺してやろうか」

「やってみい。死神を殺してみるのも面白い」

 くくく、これが夢にまで見た嫉妬による修羅場だ。如何してこうなっているのかは良く判らんが、実に良い物だ。ただ、現実となるとこのまま続行させるのは駄目だな。と言うか、ここに居たら巻き込まれること必至。

「君たち物騒だね。仲良くしろとは言わないがせめて話し合いで解決して欲しいんだがね」

「兄さん! こんな爬虫類と仲良くしてたら丸呑みにされますよ!」

「主よ! こやつは死神、共にあれば死が寄ってくるぞ!」

 2人とも相手への対抗意識で俺への好感度以上に怒ってるね。実に気分のいい状態だが、会話にならないのは困るね。

「はいはい、止め止め。妹君も蛇君も落ち着き給えよ。これだけ亜人だの獣人だの、魔獣なんてものまでいる世界で、人間かどうかなんてどうでもいい話だよ。だからこの件はここで終わりだ」

 良いかね、と問うと二人とも渋々頷いた。


 さてと次は蛇君か。

「蛇君、時間を決めなかったのは悪かったね。森の主の眷属に態々来てもらえるとは光栄だ」

 せいぜい不機嫌に見えるように言う。時間を決めなかった此方の落ち度だが、流石に眠いからね。

「うむ、感謝せい」

 厭味は通じないらしい。まあ嫌味なんてのは日本人の特性みたいなもんだろうし、異世界の、しかも爬虫類に判れと言うのは無理が会ったかね。

「真夜中に人の家に軽々しく訪ねるなんて、爬虫類の常識を疑うね」

「妹君」

「だって兄さん……」

 ぬう、我侭を言われるのは慣れているが、今迄は他人を巻き込まなかった。嗜めるべきなんだろうが、後から来た者を優先すると碌な事が無いからね。それとなく後で注意しよう、無駄だとは思うが。

「良いんだよ。何時に尋ねて来てもさ。俺は寂しがりやだからね、前世では殆ど訪ねられる事も無かったし」

 実のところ定時に出勤するわけでもないし、自分の意思で休んでも良い。かなり蓄えはあるしで、夜起きることも別に苦ではない。眠いだけだ。

「アリスは話が判るわ。ほれ、昨日言ってた報酬(めだま)じゃよ」

 蛇君は気軽に何かを投げてよこした。目玉、と宣言されて投げられたのでいい気はしない。あわてて受け取ると義眼のような緑色の美しい石だった。何度か摘出された眼球を見たことがあるが、いずれもが溶けたり崩れたりで眼球と呼べるものではなかった。

 これは宝石のようだ。ご丁寧に首から下げられる様に革紐まで付いている。

「ほう、綺麗な物だねえ。あの熊の眼はこんな洒落た色をしていたのか」

「否、そうではないよ。眼を取り出すときにそうなるのじゃ。そもそもがの……」

 蛇君の話によると、魔獣の体の一部を魔力増幅の触媒として用いるのは一般的ではないらしい。正確には人間族では珍しいと言うことだ。触媒として機能するように体の一部を取り出す技術、これをもつ者が人間族には少ないとのことだ。

 魔術の弊害かねえ。体系化という思考そのものが活発ではないんだろうね。技術を持っている人間が他に伝えないと言うことは。それとも有益な情報は独占したいと言う、人間の本能のような物だろうか。

(独禁法は、さすがにないだろうからね)

 そして、その技術を用いてパーツを摘出すると特性ごとに色がつくらしい。これは魔獣の性質によるところが大きく、取り出して見なければ判断はつかない。つまり自分の望む特性が出るかどうかは、完全に運次第、と言うことだ。

「緑色はそう珍しくは無いが、単純に身体強化をしてくれる、有用じゃぞ」

「そうか。態々済まなかったねえ。お礼は……」

 ランプに緑色の眼を翳しながら言うと蛇君は首を振った。やはり人間の方が動きに無理がないよね。

「あの魔獣を殺したのは主じゃ。その死体を譲ってもらったんじゃから礼を言うのは此方じゃよ」

「君がそう言うならそれで良いか。どちらにしても手間を掛けたねえ」

「ねえ、もう用事は済んだでしょう。お引取りください」

 笑顔で辛辣だねえ。

「まあまあ、そう無闇に敵対するモンじゃないよ。仲良くしろとは言えないけども、せめて普通にしなさいな」

「いや、用事は確かに済んだ。これで帰るとしよう」

 蛇君の方が見た目に反して大人なのかね。それとも種族の差か。

「そうかい? 済まんね。何のお構いもしませんで。そうそう、君今日暇かい?」

「む」

 俺の問いかけに妹君が不機嫌そうな顔をする。蛇君と二人でそれを見ない振りだ。

「何故に?」

「昨日の熊を殺した崖、あそこが崩れて坑道のような穴が開いていた。興味があって入ってみたいんだが、俺は方向音痴でねえ。一人では確実に迷う、ので人間以上の感覚を持つ君についてきてもらいたいんだよ」

 仮に前世の蛇と同じなら、赤外線を感じ取れるはずだしね。

「そんな事なら構わんよ。眷属とはいえ、普段は気ままにのたくってるだけだしのう。しかし、そんな洞窟はしらなんだ」 

「ありがとう。では今度こそ今日の昼過ぎにそこで」

「うむ。ではの」

 蛇君はあっさりと去っていった。妹君との小競り合いは純粋に俺を心配しての物だったのかね。

「さて、俺たちも寝るとしよう」

 椅子から立ち上がりベッドへ向き直ると袖を引かれた。まあ、予想はしていたことだ。妹君が正体の漏洩を気に病まないわけが無い。

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