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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
101/105

一応の決着?


(くそっ!! なんだなんだ、魔力を吸われたのか? 体感で半分以上持ってかれた、この脱力感は何だ? 半分程度ならここまでの影響は無いはず)

 突然の脱力と魔力の喪失感に俺はパニックだった。

 なにしろ文字通り背中から打たれたわけだ。魔力を吸われた、という感覚も初めてだが確信のような物があった。


 吸われた、というのは何故か判ったがそれが更に俺を焦らせる。何しろ俺の強みは魔力量だけだ。正確に測定したことはないが、ノワール達の話を参考にすると、普通の魔術師といわれる者の100倍程度はある。それも日々増強中で加速度的に増している。

 そんな魔力量による力押しが俺の強みで、ほぼ唯一といっていい戦術だ。


 くそ、まだクラクラする。

 

 それでも何とか立ち上がり、俺の魔力を吸って背中から殴りつけてくれた騎士風の女を見た。


「いくぞ!! 神に祈らぬ愚かな者に我が神の鉄槌を!! みよ、これぞ神の奇跡!!」

 女がそう叫ぶと鎧の魔法陣が輝き地面が隆起した。

 

(この女、魔術師か? わざわざ鎧に魔法陣をほってある)

 隆起した地面は見る見るうちに人型を取り、2mはあろうかという大柄の土人形が出来上がる。それが2体・3体と数を増やし、最終的に6体の土人形が起立した。


「ゴーレム、とか言う奴か?」


「あ、あんた、大丈夫か? すまねえ、アレは依頼主で護衛対称なんだが……その……」

 魔力を吸われて一時的に戦闘不能になった俺を、周囲の護衛は守ってくれていた様だ。すぐにあの女がゴーレムらしきものを展開したせいで、盗賊たちの攻撃はなかったが。

 正直この対応が無ければあの女、真っ先に殺してやったものを。


「とりあえず大丈夫だ、ありがとう。で、何だ今のは?」


「あ、ああ。アレはあの依頼主の魔法陣の効果らしいんだが、詳しくは判らん。俺らは唯の護衛だからな。ただ一度同じ事があって知ってるだけだ」

 つまり以前もあの女は友軍の魔力を吸ったという事か。


「何だ、仲間ごろしか何かか?」

 皮肉気に問う。こうして話している余裕があるのは、俺があの女を助ける気がない事と、あのゴーレムらしき土人形が意外に強く、盗賊を圧倒しているからだ。

 土人形が強いのか、盗賊が弱いのか、まあ両方かね。


「いや、アレは魔力を吸ってその分あの人形を生み出す性質の物らしい。俺の仲間が吸われたんだが、危うく死んじまうとこだった」

 この世界では魔力喪失は死に直結する。たぶん加減は出来るのだろうが、恐ろしい物だ。


「もう見殺しでいいんじゃないか? あの女。もしくは今殺しておくか」


「いや、依頼料を貰っちまってる。契約違反すればもうこの仕事では食えない。それにあの女あれでも街じゃ有名人だ。こっちの首がアブねえ」


「あんな背中から斬る様なもんの依頼をよく受けたな」


「要人警護、護送としか詳細を知らされなかった。依頼料は破格だったし裏があるとも思ってた。あんたにゃ申し訳ねえが、俺らは自業自得だ」

 どうやら彼らは傭兵の類らしい。一応ギルドなんて物がある冒険者と違って、傭兵は自分で売り込むのが一般的らしい。

 そのため契約に関しては自己責任、という考えがまかり通っており、契約を交わした時点でそれを裏切る事は絶対にありえない、と言っていいほどらしい。


「もし仮にこの状況で仲間の誰かから魔力を吸う、あるいは前の段階で吸われた仲間が死んでいれば契約違反として糾弾も出来たし、他の傭兵仲間からの理解も得られたと思うが……」

 傭兵は契約に厳しい。それは相互に監視しあっていることも含まれているらしい。そしてギルドがない分そういった話は仲間内で共有され、裏切りが発覚すれば他の傭兵達から粛清しゅくせいもありうる厳しい世界だそうだ。


「金で契約する俺らだ。金で裏切るとイメージがついちまえばそれまでだからな。そんな危なっかしい武装集団誰も雇ってくれねえ」


「なるほど、大変だねえ」

 傭兵の説明とも愚痴ともつかない話を聞いていると魔力も大分回復してきた。魔力は時間経過で割合回復だ。俺の場合は母数が大きいから回復量もそれなりだ。

 また吸われては堪らないので、騎士風の女の動向は欠かさずにチェックしているが、今のところ最初に作られた土人形、仮称ゴーレムがほぼ盗賊たちを圧倒し時間の問題に思える。

 事実、それから数分で盗賊たちは捕らえられ、俺はいよいよ騎士風の女と会話しなければならないときが来るのだった。



「旅の者か、助かったぞ、礼を言う。御主がいなければ味方にも被害が出ていただろう」

 盗賊を捕らえた後、騎士風の女は堂々としたたたずまいのまま頭を下げ、こちらに礼を言ってきた。正直なところ意外だ。


 味方、この場合は確定でないにしろそうであるであろう物を背後から撃って(攻撃して)おいて、こんなはっきりと助かった、礼を言うといわれるとは思わなかった。


 ノワール達たが、何があるか判らなかったためこちらには呼んでいない。おそらく何処からかこちらを監視しているのだろう。遠目から見ていたなら、俺の様子がおかしいのは判ったはずだ、何かあれば直ぐに飛び出して攻撃を仕掛けるだろう。


 相手が敵対していればそれでもいいが、どうもこの騎士風の女はこれからいく都市の関係者、もしくはその身内らしい。安易な敵対は避けたい。



「いや、助太刀はしたが殆どはあんたの手柄だろ。もっとも(まりょく)は俺のだが」

 如何に偉そうでもこういった手合いに謙るのは我慢なら無い。何しろ相手は他人なのだ。前世のような謙遜は今世では害になる。


「ああ、あの魔力は助かったよ、アレがなければゴーレムが作れなかった」


「あっけらかんと言いやがるな。正直、後ろから攻撃されたような物だ。護衛対象から魔力奪取されて死ぬなんてのはごめんだし、何より俺は通りすがりでね。見殺しにしとけばよかったと、こう思っているわけだが、釈明はあるかい?」


「いや? 非常時だ。目の前にあるものは何でも使うさ」


「なる程道理だ。では勝手に使われた分の代金を請求したいんだが?」


「金か? 存外俗っぽいんだな」

 女は呆れた様に、ため息をつきながら言う。面倒だな。


「いや、金はいい。これから情報収集に、えっと街、そうリーンクレイグ? に向かっている所だ。聞く所によるとあんたは偉いサンなんだろう? 図書館の利用許可、出来れば禁書などの閲覧許可が欲しい」


「話にもならん。見ず知らずの人間に禁書など見せられない。図書館は預託金さえ払えれば基本的には入れるが」


「そうか、ではこれ以上話すことはない。もう会いたくない物だね」

 面倒な相手と面倒な交渉はしていられない。本当に必要なら押し入る事にする。そもそもこの女がどの程度の地位で、禁書閲覧許可が出せる身分なのかも不明だ。



「待ってくれ」

 俺がその場を去ろうとすると、傭兵の男から声が掛かった。

 そちらに注目している間に、女はすでに馬車に戻ろうとしている。


「あんたのおかげで助かった。俺は雇われだから何もできねえが、せめて町に入れるように門番に口を利いとく。あのお嬢様、変にプライドが高いからなある事ない事吹き込まないとも限らん」

 そういって傭兵の男は頭を下げた。


「あんたがいなけりゃ内のもんが何人かはやられただろう、本当にありがとう。この盗賊どもは俺らが自警団に突き出しとく、傭兵団「平原狼へいげんろうの名を出してもらえればあんたに報酬が回るようにしておく、すまなかった」

 男はそれだけ言うと部下らしき人員をまとめ始めた。


 ただの傭兵だというなら、そこまでお嬢様の面倒を見なくてもいいだろうに。それとも本当にこちらに感謝しているのだろうか、なんにしても気遣いはありがたい。


「そうか、こちらも礼を言う。わざわざすまないな」

 俺はそれだけ言うと相手の意見は聞かずに馬車へと引き返すのだった。これからあんなのがいる町に行くと思うと、気が重い。

平原狼とやらは礼儀を弁えていたな、何かあれば相談してみよう。



 馬車に戻ると輝夜とノワールがたいそう不機嫌だった。どうやらあらかたの事情を把握しているらしく、それについて不機嫌なのだ。


「我らが主に対してあの態度。到底許せる物ではありません」

「うむ、我も同じ思いじゃ。それになにやら膝をついて折ったな、主殿よ何をされた?」

 爬虫類の目を爛々と輝かせ、輝夜がこちらを見つめる。誤魔化せる事でもなくその必要もなく、俺はたった今あったことを話した。


「魔力を奪う、ですと。なんと、それはアリス様の天敵のような魔術ですな」

「うむ、我らが主はその桁外れの魔力ゆえに際立って強いが、逆に言えばその魔力と魔術さえ封じてしまえば、ほぼ一般人じゃからの。おまけに今はエリスと琥珀がいない。我とウヌでは護衛として心許ないと思わんか?」

 輝夜はそういってノワールを見る。それにしても君等、割と正確に俺のこと理解してるね。


「しかり、我々ではエリス様や琥珀様と比べるとどうしても劣りまする」


「まあそこまで気にしなくてもいい、魔技を使っていなければおそらく早々奪われないだろうし、もし奪われれば完全に敵対行動として即排除するよ、それにもう関わる事なんてそうそうないよ」

 そういいって二人を宥めつつ馬車はいよいよ宗教都市に近づくのだった。入る前から面倒だなあ。

また遅くなり申し訳ありません

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