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異世界転生:ヤンデレに愛された転生記  作者: 彼岸花
3部[タイトル未定]
100/105

盗賊と??

遅くなりまして申し訳ありません。

展開に悩んだ箇所がありまして、次は多少早くできると思います。

引き続きよろしくお願いいたします。


 ゴトゴトと荷馬車がゆく。何かそんな歌があったような……ドナ○ナだったかも、縁起悪い。

 そんな事をツラツラと考えつつ、俺は今馬車ならぬ山羊車に乗っている。引くのは商業都市ザイルで新たに手に入れたバイコーンが2頭だ。

 バイコーンは本来ヤギではないはずだが、こちらの世界では捩くれた2本角の山羊となっていて、面白いものだ、と思う。


 同乗者は少ない、俺と輝夜、ノワールとその従者のノアだ。ノアは御者も担当している。

 ノアは以前に手に入れたアンデッドでノワールの従者だ。アンデッドなので疲労も無く御者が出来る。バイコーンも疲労しにくい種なので、休みを最小限にしても進行速度に支障が出ない。

 これは中々嬉しい誤算だ。バイコーンは山羊らしく、何でも食べて元気になり、少ない疲労とあいまって一日かなりの距離を稼ぐ。


「このままのペースならどれくらいだろう? えーっと何だっけ」


「リーンクレイグ、じゃよ」


「そうそう宗教国家「リーンクレイグ」だ。面倒そうだなあ、とりあえず図書館でそれっぽい情報を片端から集めてみようと思う。俺は良いけど君らはどうしようか? 宗教国家なんて如何にも厳しそうだけど」

 輝夜やノアはパッと見は人間に見えるが、ノワールは完全に骨だ。目深にローブをかぶって誤魔化せる物だろうか。


「それとも今までと同じく大丈夫かな」

 ノワールは夜族、という呼称で一般的に認知されていたが、殆ど都市国家であるこの世界では各都市のありようは大分異なる。


「さて、行って見ないと判りませぬが……嫌悪される事はあっても突然襲われ、迫害対称になる事は無いでしょう。別に我々(よるぞく)が豊穣の神の一派に嫌われるような事をした訳ではありませんし」


「ん~、行ってみて駄目だったらどうしよう。図書館での情報収集なんてやった事ないぞ」

 俺も論文書いたり何だりで文献検索なんかはやってたが、ある程度何を調べるか、どこを調べるか判っていた。今回も何を調べるかは兎も角、何処をどう調べたらいいのかさっぱりだ。


 何だかんだ言いながらのんびりと馬車に乗っている。

 ビルに聞く所によると意外にも世界の危機は、というより文明の危機は近いという事だが今この段階でできる事もなく、俺は何時の間にかうつらうつらとしていた。



 どれくらい時間がたったのか、眠ってもいないが起きても居ない、夢現ゆめうつつの中でゴロゴロという音を聞いた気がした。意識が覚醒し少ししてドガン、というような鈍い音がしたので雷かな、と馬車の外を覗くと目の前でまさに戦闘が行われているところだった。


 その戦闘は盗賊が兵士らしき一団を取り囲んでおり、その兵士らしき一団は貴人らしき女性を守っているというシチュエーションだった。

 兵士達にはすでに結構な被害が出ている。今の音は盗賊たちが使った魔術らしく、大きくへこんだ地面と横たわる兵士が見て取れる。


(なんとまあ)


 この世界に来て大分経ったが、これは中々王道なシチュエーションじゃなかろうかね? 

 それにしても盗賊の強い世界だな。それともアレは盗賊ではないのか?


「アリス様、また我が行きましょうか?」


「また? ああ、そういえば前もあったか。ふむ、いや、今回は俺が行こう」

 王道シチュエーションを逃すのは惜しいような気もするし。なにより盗賊の錬度が高すぎる気がする。これまで人間相手の大立ち回り、と言うのはした事が少なかった。

 魔物の相手が多かったので、人間は強くないと思い込んでいたのかもしれない。


「盗賊に見えるが……、強すぎるようにも見える。気になるからね、俺がやってみる」

 再度、輝夜とノワールに説明し馬車を降りた。


 こちらの馬車とあちらの戦闘場所は大分離れている。1km程度はあるだろう。あちらもこっちが止まって人が降りた事くらいは気づいているだろう、何しろ見通しの良い道だ。しかし距離があるせいで直ぐにどうこうは出来ないのだろう。

 チラチラとこちらを伺って入るようだ。多分アレがリーダー格だろう、時折指示を出しているようだ。


 やはりおかしいな。俺の常識だと、盗賊なんて物が指揮に従って統率の取れた動きをするなんてのは妙だ。


「ま、いいか。とりあえず行こう」

 戦闘場所が離れているからといって、馬車で近づくのは流石にないだろう。とはいえここから1kmも歩いていては間に合わん。なにしろ俺の身体能力は並かそれ以下だ。

 割と過剰な魔力と魔術、魔技を合わせた力技が俺の真骨頂なのだから。


 今回も力技で行こうかね。


 魔技まぎは魔力そのものを形として操る技だ。俺の感覚では固い粘土のような物で、動かしたり形を変えるのにだいぶ力が必要で体力を消耗する。

 その分、形を変えるだけなので魔力そのものを消費しない。体力だけで使えるのは有難い。そして魔術で魔力を使うと魔技で使う魔力そのものがへるので、まずは魔技のほうを使う事が最近は多い。


 グウーっと伸ばした魔力肢まりょくしを前方に突き刺し、それを起点に自分の体を引き寄せる。

 俺の魔技の有効範囲は半径100m位で、魔力総量によって増減する。つまり日課である魔力上昇を繰り返せば、この技の有効性は更に更に拡大するという事だ。


 ともかく伸ばした魔力肢を足代わりに進む。一歩で100m、これは早い。早いが疲れる、これで長距離の移動はできないと思う。



「な、なんだ手前は!!」

 馬車を囲んでいた盗賊と思われる一団の、一番後方、つまり俺に近い位置にいた盗賊が俺に気づき上ずった声をあげる。

 無理も無いと思う、魔力肢は俺にしか視認できない。別に俺が魔力が見える体質というわけではなく、他人の魔力は見え難いらしいのだ。

 

 魔技は珍しい技術だそうだが、相手が使う事も考えに入れておかないと危険、という事だね。


 盗賊から見れば、宙に浮かんだ俺が不自然な姿で勢いよく自分達に近づいてきた、という事だ。これは気持ち悪いだろう。


「通りすがりだよ。さて……盗賊に襲われたとお見受けする!! 助けは必要か!?」

 一応確認をする。もしかするとあっちが正規兵っぽい盗賊で、こっちが賊っぽい兵士かもしれないからだ。


「そ、そうだ。助力を願う!! 助けてくれ!!」

 まあそんな事はなく、襲われていた馬車を守っていた兵士風の男が叫んだ。

 これで万が一の事があっても言い訳が出来る。


 さて、それはそれとして馬車の護衛はもう少ないし、ここから結構距離がある。まずは距離をつめるか。


 俺は魔力肢をいっぱいに伸ばして盗賊共をまたいだ。半径100mという事は当然上空にも伸ばせるのだから特に難しくは無い。それを見た盗賊や馬車の人が驚くのは、まあ当然といえばそうだ。

 感覚としては『よっこらしょ』と、少し高い物を跨ぐ感じだが、俺はそれだけで馬車の直ぐ傍に降り立った。

 よし、この位置ならまず馬車を守れるだろう。



「す、助太刀に感謝する」

 残り少ない兵士風の男が槍を構えながら言った。槍をうまく使い敵を遠ざけて今まで持ってきたらしい。盗賊に弓を使うものが少ないのも幸いだったろう。


「まあ気にしないで結構。偶々通りかかっただけだ、それよりも盗賊は殺してもいいのかな? この辺は初めてなので勝手がわからないんだがね」

 この世界は国、という概念が曖昧で都市国家という方が実態に近い。この辺の支配領域がどの都市になるかは不明だが、その都市の方に縛られるのは間違いない。

 問題なのは十中八九、支配しているのは宗教都市リーンクレイグであろうから、宗教都市という名目上むやみな殺生は禁止な可能性もある。


「盗賊は殺しても大丈夫だ。できれば2・3人生け捕りにして欲しいが、無理にとは言わない。勿論、報酬は弾む」

 ふむ、通りすがりだから報酬は別に良かったんだが、くれるという物は貰っておこう。



「死ねやあ!!」

 こちらの話が纏まるのをまっていたように、盗賊が切りかかってくる。盗賊の装備なんて注目してなかったが、槍よりも剣が多いようだ。

 馬車を背後に前面の三方から切りかかってくる。俺は場数を踏んだとはいえ、直接戦闘経験は実は少ない。魔力障壁があるとはいえ実際に近距離で切りかかられるとドキドキする。


 まあ、問題は無い。あるわけが無い。

 有り余る魔力に物を言わせるだけだ。


「よいしょ!!」

 掛け声と共に魔力肢をふるう。俺自身は動かず、見えにくい魔力の一撃。これは生半な事では回避できないだろう。


「ぐわ!!」


「な、なんだ!?」

 案の定吹き飛ばされた盗賊が目を白黒させる。それにしてもこのままでは殺傷力が無い。という事で色々やってみようと思う。


 まず魔力肢を薄く・鋭角にして刃として使ってみる。


「ギャ!!」

 おお切れる切れる。次は魔力肢を高質化して大質量を持たせる。ハンマーだ。


 グチャ!! と音がして声も出さずに盗賊がつぶれる、之も良い様だ。これからの戦闘は魔技が重要になってくる可能性もあるからな、こういう機会は貴重だ。


 瞬く間に一人は吹き飛ばされ、一人は切られ、一人は潰され、盗賊の士気は見る見ると落ちていく。盗賊に士気など、と思うかもしれないが、むしろこいつ等のような素人のほうがその場の流れと勢いは重要なんだろう。

 

 それでも諦めてはいないようで、我武者羅に放った矢が複数、こちらに飛んでくる。火矢らしい、なかなか素早い判断だ。馬車を守っている以上、素通しは出来ない。

 魔技に物理的な干渉力があるということは、当然防御にも使える。分厚く積もった魔力の壁は早々に抜けないだろう。


 

 そう思って、馬車を魔技で厚く覆ったその時だった。突然俺の魔力が吸い取られる様に馬車に飲み込まれ、俺はがくんと膝をついた。


「ど、どうした!? 大丈夫か!?」

 魔力が抜けると同時に魔技はその圧力を弱める。その穴を抜けた矢を切りばらってくれながら、周囲の護衛達が俺の突然の不調に声をあげた。

 その声は切羽詰っており、本当に驚いている様子だ。


(馬車に吸われたが、こいつらは知らない? こいつらは唯の護衛でこれとは関係ないのか!?)

 俺も魔力が吸われた事に大分あせる。何しろこれは俺の根幹を揺るがす大事だからだ。

 その時、何らかの罠にはまったと驚愕する俺を、良くも悪くも裏切って馬車の中から声がした。


「魔力の補充感謝するぞ冒険者。これで私も戦える!!」

 その声と共に金ぴかで豪奢な鎧に身を包んだ、如何にもな騎士風の女が大声をあげて降りてきたのだった。


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