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第八章 第三話 シア

いやー、もう、ホント……。最新話を更新するにあたってなんと言っていやら……。こんだけの文章をUPするのにどれだけ時間かかっているんだと……。…………。もうため息しかでません。

 一流の魔導師を志すシアは、毎日の様に修行に励んでいた。

 その日の修行は実戦を想定した魔術による戦闘訓練だった。日々の鍛錬の積み重ねと、それらをどれだけ柔軟に使いこなせるかが問われる総合的なものだった。

 彼女には自信があった。

「はあ……、はあ……、はあ……」

 神殿内には、己の自身をうち砕かれた彼女の片息が木霊する。シアは想像を絶する苛酷さと、難易度の高さに屈していたのだ。今日まで必死になって体得してきた技術を十分に発揮する事が出来ず、自身の力の無さが痛みとなって彼女を襲う。

「もう終わりか? 腰抜けめ」

 直々に稽古を付けていた父親がそう吐き捨てる。彼女は否定する事ができず、己の無力さを噛みしめながら、その言葉を甘んじて受ける事しか出来なかった。高僧は踵を返し、そのまま神殿の奥へと引っ込む。

 父の力は圧倒的だった。幾重にも張り巡らされた罠、抜け穴の一切無い攻撃の流れ。彼女はそれに翻弄されるばかりで、何もできないまま力尽きてしまったのだった。

 身体が重い。めまいがする。息はとうに上がってしまい、視界がどんどんぼやけていく。既に立つ気力も体力もない。床にうつぶせになって、意識を保つのがやっとだった。

 気を失いそうなシア。そんな彼女に近付く、一つの影があった。

「大丈夫ですか?」

(!)

 後ろから声を掛けられはっとする。しかし、身体は徹底的に打ちのめされてしまい、首を回して声の主の顔を確認する事すらできない。意識もとうに薄れており、声色から声の主が男だという事以外何もわからない。

 そうするうちに、彼女は意識を完全に失ってしまった。


 シアが眼を醒ますと、そこは神殿の裏手に流れる小川のほとりだった。彼女は涼しげな木陰に寝かされており、修行で受けた傷には丁寧に包帯が巻かれている。身を起こして辺りを見回すと、彼女の隣で熱心に薬草を煎じ詰めている男がいた。

「あなたは誰?」

「……」

 声をかけてみたが、よほど熱心に煎じているのか作業をやめようとしない。ふつふつと煮立つ鍋を丁寧にかき回している熱心な横顔に、彼女の声は届いていないようだった。

「あの」

「はいっ! ああ、気がついたみたいですね」

 シアは再び呼びかけると同時に、彼の肩を軽く叩く。すると、男は彼女が眼をさましたことをここにきて初めて気づいたようだ。相当気を入れて薬を煎じていたせいか、いきなり肩を叩かれたことに驚いたようだ。

 男は神殿に勤める見習いの僧侶だった。色白で髪は短く、くわえて男性にしては華奢なか体つきが印象的な男である。シアは彼のことを、神殿内で何度か見たことがあった。

「あなたが、私を介抱してくれたの?」

「ええ、かなり苦しそうにしてらしたので。お気分いかがですか?」

 そう言われて、自身の体の様子をうかがう。かなり丁寧な処置がなされたようで、痛みのほとんどは引いていた。

「あなたのお名前は?」

 シアはかねてからの質問をする。何度か見たことのある相手だけに、以前から名前を知りたかったのだ。

「はい。ソラ・スイシーダです」

 微笑みながらそう答える。

 彼の屈託のない笑みに、シアは一瞬どきっとする。彼女が想像していたよりも自然で真っ直ぐな心のこもった笑い顔。とても素敵な微笑みを持つソラに、彼女は心奪われるより他なかった。

「どうかしましたか?」

 シアが黙り込んでしまったのを気遣ってか、今度はソラが彼女に声をかける。

「いえ、別に……。あの、本当にありがとう……」

「お役に立てたようで光栄です。私も介抱した甲斐がありました。そういえば、貴女は司祭のご令嬢でしたよね。確か、シアさん?」

「はい、その通りです。よく知ってますね」

「司祭がよく貴女のことを名前で呼ばれているのを聞いていましたので」

「そうなの」

 同じ神殿に通っており歳も近いせいかうち解けるのに時間はかからず、二人は大分長いことせせらぎを聞きながら話し込んだ。そのまま隔意なく親しみを深めていくのだった。

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