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第五章 第二話 学校での出来事

更新が遅れた事を深くお詫びしします。


えー、イブは五章に突入しましたが、ここで凄い展開を迎えます。どれくらい凄いかというと…………、実際に読んで確かめて下さい(形容出来ません。すみません)。では、どうぞごゆっくり。

 イブはその後、三日三晩眠り続けた。

 そして、四日目の朝。彼女は夢斗の姉の部屋で目を覚ます。

(夢斗に、心配掛けちゃったかな……)

 ベッドから身を起こした彼女が最初に思った事はそれだった。

 彼女は立ち上がり数歩歩いてみる。幸いな、体に痛みやだるさの類などは見られなかった。部屋に置いてある縦長の鏡を見ても、特に異状は見られなかった。しかし、自分が本当の姿に戻っていることには気付いた。

 彼女は慌てて人間の姿に化ける。相変わらず、瞳の色は同じであった。

 自分の姿がかりそめの姿になったところで、衣服の異変にも気付く。至る所が破れ、千切れ、裂けていたりと、尋常ではなかった。

「ああ、これはアノ呪文の」

と彼女は納得し、それと同時に夢斗に対する申し訳無さも込み上げて来た。

 そう言えば、自分がこの次元に来てから、夢斗には迷惑を掛けてばっかりだ。嫌な思いや辛い事実を突き付けてしまったし、何より、自分は夢斗に対して、恩を返すだとか罪を償うなどといった事が出来ない。自分が次元を越えて逃亡する際、「ある程度の安全が確保できたら、こちらから迎えに来る」という取り決めが成された。姿を変えるだとか記憶を忘却させるといった魔法は使えるものの、次元を飛び越えるなどという途方も無く高度で複雑な呪文は使えない。つまり、向こう側からの使いが来れば、自分は否応なく帰らなければならないのである。自分の故郷ふるさとに帰りたい反面、互いに好意を持つ関係を崩したくないという二つの彼女の私情が複雑に絡み合っていた。

 イブは、気付けばその事でかなりの時間を費やしていた。その証拠に、西向きの窓からは、紅い斜陽が差し込んで来ている。

(そろそろ、夢斗が帰って来る時間かな)

 彼女はドアノブに手を掛けたが、一瞬躊躇った。

『夢斗はワタシの全てを知っている』

 イブの躊躇いの理由はそれだった。もし、ドアの向こう側に夢斗が偶然居合わせていたらどうしよう。化け物の様な自分を気味悪がり、避けられるのではないか。迷惑を掛けてばかりの自分を嫌い、話掛けられないのではないか。

 葛藤し、ドアを開けるか否かの瀬戸際にいたイブの脳裏に、あの時の夢斗がよぎる。自分に想いを告げてくれた時、本当の姿に戻った自分に迷わず背中を預けてくれた時、命と引き換えの呪文を使った自分を気遣ってくれた時。

(大丈夫たよね。夢斗、優しいから)

 イブは幾つもの不安を押しのける様にして、勢い良くドアを開けた。

 廊下に出ると、とりあえずリビングに向かう。テーブルの上には、目玉焼きとトーストが皿に乗せられラップがかけてあった。その隣には、夢斗直筆のメモが置いてあった。

『目が覚めたら食べて』

 イブはそのメモに目を通す。

「ありがと……」

 自然と目頭が熱くなる。こみ上げる物を踵を返すことによって振り払うと、彼女はバスルームへと向かった。

 服を取りに部屋へ戻る途中のことだった。イブは夢斗の部屋から、ごく微かな物音が漏れたことに気付いた。

(夢斗がいるの……?)

 不審に思ったイブは、恐る恐る、中の様子を伺いつつ夢斗の部屋のドアを開けた。

 部屋には、ベッドにもたれるようにして床に座る、げんなりとした表情の夢斗が居た。彼の目の下には大きな隈ができ、頬は異様なまでにやつれていた。

「何で……」

 てっきり学校に行ってたとばかり思っていた夢斗が部屋にいたことに驚き、きょとんとする。

 夢斗は学校の制服姿だった。しかし、上着は脱ぎ捨てられ、鞄は中身を撒き散らしてほっぽってある。

 ややあって、やつれきった夢斗が重々しく口を開いた。

「俺……。イブとはもう……、付き合いたくない……。出ていってくれるか……」


 時を遡ること二日。イブが夢斗に全てを打ち明けた翌日。

 夢斗の学校では、近所で起きたテロ疑惑が話の肴だった。校内の至る所で、昨日の話題が取りざたされる。

 いつもより遅めに登校した夢斗は、あちこちで繰り広げられる小さな論争に耳を傾けつつ、内心気が気ではなかった。勿論、昨日のテロと思しき爆発は、テロではない。イブの命懸けの行いである。夢斗はテロの真相を知ってしまって居るばかりに、とてもばつが悪かった。

 夢斗がテロの起きた瞬間にテロ現場に居たことがばれると、質問責めされることは明らかだった。そうなると、イブの存在を隠さざるを得なくなり、どこかでつじつまの合わない発言を

する恐れがある。その事から、人目を避けるようにして教室へと向かう。

 教室の戸を開けたとき、戸がいつもより重々しく感じた。足を踏み入れ最初に目に映った物は、クラスメイトの視線であった。その視線は「ああ、足達が来たのか」という他愛ないものではあるが、夢斗には「あ、テロの現場にいた奴だ」というニュアンスが込められているようにも感じた。

「足達君、おはよー」

 ドアの側で話し込んでいた女子のクラスメイトの一人が、教室に入ってきた夢斗に挨拶する。声とともに屈託の無い笑みを浮かべる。

「ああ、おはよ……」

 彼女とテロは無関係であることは明白だったが、何やら後ろめたく思う夢斗は俯いたまま返す。

 挨拶も程々に席に着く。

 他人の話し声が気になる。隣のグループの話は、例のテロのことなのだろうか。先程こちらを一回だけ見た人は、話のネタの張本人を見たのだろうか。

 根拠の無い疑心暗鬼に襲われ、机に伏せる。

 傍目からは眠いだけにしか見えないだろうが、夢斗自身には拷問に耐えかねて参っている姿に見えただろう。

 ふさぎ込んで黙り込む夢斗に、一人の女子が近付いてきた。

「ねえ、夢斗」

 夢斗は声の聞こえた方を、恐る恐る向いてみる。

「話があるんだけど、ホームルームが終わったら非常階段に来てくれる。」

 そこには、怒りとも疑問とも不安ともとれない表情で佇む園美がいた。

 夢斗は園美に言われるまま、ホームルームが終わると、園美の後に付き従うようにして教室を後にした。

 夢斗はこのとき、デートをすっぽかしたから別れ話だろうと高をくくっていたが、話の内容はそんな何処にでもあるようなレベルでは無かった。

 廊下の突き当たりの扉を開けると、外から冷たい風が吹いてくる。最初に園美が踊り場に降り、それに夢斗が続く。夢斗は踊り場に出ると、廊下と非常階段を繋ぐ扉を閉めた。

 園美と向き合うと、園美が重々しく口を開いた。

「ねえ、あのだれ?」

 その問いは、夢斗の心臓を貫いた。

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