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第五章 第一話 しぶとい男

久々ですね。あれだけ長くした後でまだ読んでくれる方が居るかどうか不安ですが、どうか読んでください。

 イブは全てを話し終えると、静かに眠りについた。成功はしなかったものの、自らの命を犠牲にする呪文を発動し、その後、ボロボロの体にむち打って話し続けたのが災いしたのだろう。

 イブの寝顔は、涼やかで穏やかさを保っていた。

 夢斗はイブを見守るように、側に座って黙念する。イブが全てを語ってくれたお陰で、夢斗のイブに対する不安や疑いは消え失せた。

 何故、イブの眼は紅いのか。

 何故、あのような怪物共が現れるようになったのか。

 何故、イブは剣を持っていたのか。

 しかし、イブに対する不安が消えたと同時に、これから彼女とどう接すれば良いかが分からなかった。彼女が目覚めてから、彼女に何と言えばいいか。夢斗はイブの隣で、そのことを考えていた。

「イブ……。俺はこれから、イブとどう接したら良い?……」

 そう呟き彼女の寝顔を見詰め、そっと頭を撫でる。イブは未だ本来の姿のままで、頭には真っ直ぐ伸びた鋭い角が生えていた。

「……」

 黙ってその角を見詰め、指先でなぞってみる。規則正しい節の間隔が、そのまま指先の神経を伝う。興味本位から少しつつくと、彼女の角は相当硬質なものである事が感じ取れた。

「イブ……。色々背負って来てたんだね……」

 夢斗はそう言って、すっと立ち上がる。

 数歩歩くと、ひしゃげたままで立て掛けている搬入口のドアをどかし、外へ出た。非常階段をゆっくりと登り屋上へと出る。

(ここで初めて戦ったんだよなぁ……)

 しみじみと物思いにふける。あのとき、自分は疲弊するイブを前に、何もせずにあたふたしていたことを思い出す。

 冷たい夜風が吹き抜けた。

 夢斗はそれに促されるようにして、空を見上げる。その日は珍しく月は黄色かった。つまり、普通の月の光を放っていたのであった。まばゆい月光は、周りの星と調和し合って、夜空を彩る。

「そういや、イブが来てからは、いつも月が赤かった……」

 何気なく見上げた空に思いを馳せ、イブが目覚めて元気になってからそのことを訊こう、と決めた。そして、久々の夜空を再び見上げた。

 しばし夜空と向き合ってから目線を元に戻す。道路を挟んだ対岸のビル群からは、煌々と明かりが灯る。夢斗はその中に、赤く規則的に見え隠れする明かりを見つけた。その光は、ビルの外壁をせわしなく走り続ける。

「もしかして!」

 夢斗はあることを直感し、手すりから乗り出して眼下を見渡す。数台のパトカーと警官の姿が見えた。恐らく、夕刻の爆発音を調べに出動したのであろう。警官は仕切りにパトカーの無線で連絡を取り合い、道行く人に手当たり次第に聞き込みを行っていた。

「これは……、ただごとじゃないな……」

 夢斗は携帯を取り出すと、発信履歴の先頭にいた男友達に電話を掛けた。

『夢斗? どうかしたか?』

 電話越しの相手は、特に慌てた節もなく電話に応じた。

「俺だ。今、テレビ見てるか!?」

 夢斗の語気は自然と荒くなっていた。しかし、相手は特に気に留めずに、

『ああ、見てるよ。なんかさあ、お前のバイト先の近くでテロが起きたっぽいよ。ビルの屋上で爆弾が爆発したってさ』

 と、淡々と答えた。

 友人の言葉を聞いた直後、夢斗は電話を切る。

 間違いないと、確信した。


 イブが命懸けの賭けをしてから数刻。丁度、イブが夢斗に全てを打ち明けた直後の事だった。夢斗がいる次元とは別の次元にて、一人の男が目を覚ました。全身傷だらけで服はボロボロ。しかし、手には鋼鉄製の三節棍を握りしめていた。

「……」

 意識を取り戻し、ゆっくりと眼を開ける。

 身を起こそうとしたが、全身に激痛が走り上手く行かない。

 その場に力無く大の字になった男は、小さく呟いた。

「チクショウ……。あのアマ……」

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