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第四章 第七話 深紅の姫君

この回では、イブと男の本名が解ります。

まあ、ごゆっくり楽しんでください<(_ _)>

 イブのシルエットは変貌を続けていた。背中は裂け、髪を掻き分けるように何かが生えてくる。皮膚の色は変わり始め、両手の爪が鋭く伸びる。

 男はそんなイブを見ながら、相変わらず棍を振り続ける。

 夢斗は変貌するイブと、強烈な殺気を放つ男を見ながら、何も出来ずにいた。

「どうやら、カレシの前で本当の姿になる気か?」

 男は訝しげな顔で言う。

「そうしないと、ワタシはアナタに殺されるわ」

 イブはそう言って、更に姿を変える。

「ちっ。そんなに言うならよ、本当の姿になる前に殺してやる!!」

 男はそう言って、棍を振りながらイブに向かって走り出した。イブとの距離を殆ど一瞬で詰めると、棍を最高速で振り抜いた。

 しかし、棍がイブに触れたと思われる瞬間、イブが閃光と突風を放ち、男を吹き飛ばした。

「!!」

 空中に直線軌道を描き、高速で宙を飛ぶ。男は給水塔に激突して止まったが、男を受け止めた給水塔には大穴が開き、盛大に水を流し始めた。その流れに押し流されるようにして、男が屋上に再び舞い戻る。

「イブ。一体何をし……」

 夢斗は絶句した。何故なら、イブのいた場所には、イブとはほど遠い外見のものが立っていたからである。

「……」

 男を吹き飛ばした張本人は、ゆっくりと振り返って夢斗を見る。

「夢斗。信じたくないでしょうけど、これが本当のワタシなの」

「え……!?」

 蝙蝠こうもりのような翼。鋭く伸びた二本の角。漆黒の様な髪。そして、深紅の瞳とそれによく似た色合いの肌。

「イブ……なの?」

「ええ、ワタシは『イブ』よ」

 夢斗は自らの眼を疑ったが、眼の前に居るのはイブで間違いないと悟った。その証拠に、イブの服は姉の物であるし、握られた刀はイブの刀である。それに何より、声はイブの物であった。

「おお、痛え……。ふざけやがって……」

 男はびしょぬれになりつつも、立ち上がり様にそう言った。

「アナタも本当の姿が有るでしょう」

 イブは静かにそう言った。

「へへ、女に本気出すほど、オレは落ちちゃいねえよ……。それによ、ここにきたばっかで、ちょいと力が出ねえんだよ」

「あらそう。アナタのさっきの一撃は、どうも全力を注いだような気がしたけど」

「黙んな!! とにかく、ここでてめえを殺す。そこのカレシも一緒にな!!」

 男はそう言うと、姿を消した。

「ど、どこへ!?」

 夢斗はあわてふためき、辺りを伺う。

「夢斗。ワタシの側を離れないで」

 イブがそう言うと、夢斗は少し躊躇い(ためらい)ながらも、イブに背中を預けた。

「そう。そのまま動かないでね」

 イブは夢斗の安全を確保すると、両手で刀を構えて辺りを睥睨する。

「来なさい」

 その直後、イブのすぐ隣の床に大きなひびが入った。間髪入れず、男が現れてイブに一発浴びせるが、イブはその一撃をたやすく弾いた。

「どうしたの。さっきより力が入ってないみたいだけど?」

 イブはそう言うと、男に刀の切っ先を向ける。

「ちい、どうも調子が出ねえ……」

 男は再び攻撃に出る。

 姿を消すと思いきや、耳をつんざくほどの轟音と共に連撃が放たれる。

 イブはその一撃一撃を丁寧に流し、一瞬の隙をついて斬りつけた。

「がはっ!!」

 腹部を横一文字に切られた男は、血を吐いてうずくまる。

「くそっ。なんて女だ……。オレが振り回されてるなんて……」

「一つ良いかしら?」

 イブが男を見下ろしたまま口を開いた。

「アナタの名前、思い出したわ。思い出したく無かったけど」

「……」

「『アルバ』……。確か、そんな名前だったわね」

 イブがそう言うと、アルバと呼ばれた男はゆっくり立ち上がった。

「ああ、そうさ。オレの名は『アルバ・デラン』。そう言うてめえの名前も思い出したぜ」

 イブは沈黙したままアルバを睨む。

「『イブ・キール』だったよな。キール三代目の愛娘、『深紅の姫君イブ・キール』」

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