第四章 第四話 新たな敵
前回のあとがきで「戦闘シーンを書く」と公言しましたが、今回は戦闘シーンになりませんでした。期待されてた方、本当に済みませんm(__)m
その日は一日中修行に明け暮れた。
日が傾き出した頃、夢斗は全身埃まみれで擦り傷だらけだった。
「夢斗、そろそろ月が出るわ。行きましょう」
「おう。今すぐ行くよ」
夢斗はカラのドラム缶の上の私物をひっつかみ、イブの後ろを追っかける。
このとき、夢斗は決意した。『今日の戦いの後で、イブに本当の事を訊こう』と。
「イブ。待ってくれ」
夢斗は大袈裟に言葉を放ってイブの後を追う。イブは一瞬振り返り、そんな夢斗の姿を見て微かに微笑んだ。
二人が廃工場を出たとき、あの繁華街に新たな刺客が現れた。
「くぅ、ここはどこだ?」
例の路地裏に姿を現したそれは、後頭部を押さえてゆっくりと立ち上がった。
「ここがあのクソ女の来た所か?」
それは辺りを見回す。
そのおり、静かなそよ風が吹いた。すると、それは鼻を利かせて風の臭いを嗅ぎ取り、不敵な笑みを浮かべる。
「ヒャハハ、どうやらここで間違いないらしい。これで、オレの野望が、悲願が、何もかもが叶う」
そう言って空を仰ぐ。その直後、それの後ろには見慣れた敵達が居た。
「あぁ。てめえ等も来たのか?」
それは気配を察知し振り向くと、まるで古い友人と再会したような台詞を吐いた。
いつもの連中はそれに近付くが、不思議と威嚇や攻撃のたぐいと見られる行動は示さず、変わりに服従の意思表示とも取れる反応を示した。
「ハハァ、良いぜ、てめえ等も来い! オレと一緒に戦いな。その為のてめえ等だ」
それが再び空を見上げたとき、東の彼方の月が、ほのかに赤く色づいていた。
二人はいつもの駅に降り立つと、いつもの雑居ビルへと向かう。
「夢斗。今日はいつもより大変になるわ。覚悟しておいてね」
イブは歩きながら言った。
「え!? それはどういう事」
夢斗はイブに聞き返す。
「フフ、何となくよ、なんとなく。でも、用心するに越したことはないわ」
イブは微笑んで返した。
「何か怖いなあ、イブにそーゆー風に答えられると……」
夢斗はがっくりと肩を落として、とぼとぼと力無くイブと並んで歩き続けた。
「頑張りましょうね。二人で」
イブはそう言って、もう一度笑ってみせる。
「うぃ〜〜す……」
夢斗は力無く答え、イブはそんな夢斗を見て三度目の笑みを浮かべた。
「みぃ〜〜つけた」
それは繁華街で一番高いビルのてっぺんから眼下を見下ろし、遂にイブの姿を捉えた。
「へっへ、じゃあ早速、彼女を血祭りに上げますか……」
それはくぐもった口調でそう言うと、唇に舌を這わせてニヤリと笑った。その時、それの眼は血も凍り付くほどの恐怖と殺気に満ちていた。
「まずはてめえ等が行きな。あのアマをちょいと揉んでやれ」
それはいつもの敵にそう命じる。すると、彼らは素直に従った。
「さぁて。お楽しみはこれからだぜ、お姫様……」
次回では、絶対に戦闘を書きます。二度とウソは尽きません(固い決意)
では、また。