第四章 第三話 強くなる為に
またもや修行のワンシーンを書きました。
前回の修行シーンと読み比べて、二人がいかに仲良くなったかを汲み取って下さい。
いつもの廃工場にて、彼らは修行に勤しんでいた。
「行くわよ」
次の瞬間、イブは一気に夢斗との間合いを詰め、右下から斬り上げる。
「くっ!」
夢斗は素早く反応した。左半身を引いて斬撃をかわすと、右足に重心を預けて斬りつける。
乾いた金属音が響く。振り切った刀を素早く返し、眼前で地面と水平にして夢斗の一撃を防いだ。
「夢斗、強くなったわね。これからは、本気で行くわ」
イブは左足を軸にして後ろ向きに回転すると同時に、夢斗の剣を巧みに流した。清涼な金属音と共に、夢斗は体制を崩す。そんな夢斗の腹部を、柄の頭が捉えた。
「ぐうっ……」
腹部に鈍痛を覚えた夢斗は、堪らずかがみ込む。
夢斗の姿勢が低くなったところで、イブは夢斗の首筋すれすれのところに刀を突き立てた。刀は夢斗の首筋をかすめ、地面に触れる寸前で止まった。
「……!!」
夢斗は自分の首の真横に付けた刀身を目の当たりにし、凍り付き絶句する。
「夢斗。さっきの言葉、少し変えるわ」
イブは刀を動かすことなく言った。
「な……、何て……?」
夢斗は震える顎で、声を絞り出した。
「『これからは本気』じゃなくて、『これからは八分』。本気を出したら、夢斗はもうこの世に居ないから」
イブの言葉の影に隠れた冷徹さに、夢斗は再び絶句する。夢斗は首が刀に触れないよう注意を払いつつ、首を捻ってイブを見る。その目は怯えきっていた。
「……イ……、イブ……」
ガチガチと震える夢斗を見る。直後、イブの冷徹な表情が崩れた。
「フフ。冗談よ。夢斗を殺すことはおろか、傷つけたくもないわ」
イブは笑顔でそう言うと、刀を引いて鞘に納めた。
夢斗はそれを確認すると、地面を押し上げ姿勢を戻し、埃を払って立ち上がった。
「じゃあさ、この練習法、やめない?」
「それは出来ないわ。こうもしないと夢斗は強くなれないもの」
さっと身を翻し、夢斗に背を向けて言う。
「イブ……」
イブの背中を見詰める夢斗。
「どうしたの? まだ終わりじゃないわよ」
振り返って言った。
「そうか……、まだ続くのか。痛ててて」
腹を押さえる夢斗を見て、イブからは再び笑みがこぼれた。
「フフ。まだまだ続くからね」
イブがそう言ったとき、二人の距離は程良く離れていた。
「さあ、行くわよ」
イブは再び刀を抜いて夢斗と対峙する。
「わわっ。ちょっと待って!」
夢斗も慌てて剣を構える。
夢斗が剣を構えた直後、イブが一気に間合いを詰めた。
「チクショウ。二度もやられて堪るか!!」
夢斗はそう言って、イブに斬りかかるが、あっさりかわされ背中に手痛い打撃を受けた。
「まだまだね……」
イブは呆れたように言ったが、その一言には暖かさが込められていた。
次は戦闘シーンを書きます。
では、また次回で。