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第四章 第二話 夢斗の想い

今回は夢斗の気持ちについて書きました。

 浴室から聞こえる水の落ちる音。それを何気なく聞き流しながら、夢斗はトーストをかじりテレビを観ていた。

『数日前に発見された遺体の正体は、未だ解っておりません。また、遺体は強烈な腐敗臭を放っており判別作業は困難を極めています。県警は本日中に判別出来なかった場合は、遺体を処分すると発表しています』

 リモコンを手に取り、他のチャンネルを見る。しかし、遺体に関するニュースはどの局も報じていなかった。

「……」

 テレビのスイッチを切り、アップルジュースの注がれたコップに手を伸ばした。中身を一気に飲み干すと、テーブルの一点を見据えて黙考する。

(イブ。イブは一体、何者なんだ……)

 昨夜の戦闘で知ったイブの事実。夢斗はそれをすんなりと受け入れられなかった。

(イブは……、オレとイブがこれまで倒してきたのと同じ存在なのか……?)

 トーストの最後の一切れを口の中に放り込むと、椅子の下に置いた剣を抜いて彫刻を見詰める。竜の彫刻の眼は、昨日よりも赤くなっている気がした。

「オレは、イブを問いつめるべきなのか?」

 夢斗は彫刻と眼を合わせる。

『お前の中にある疑問は、いずれお前を苦しめる。かといって、それをイブにぶつけた所で、お前が救われるという保証はないがな……』

 彫刻の声が、自分の心の中の本音であるという事を夢斗は知っていた。自分の中にある本音を映し出す鑑として、自分の意志を知るため、自分に嘘をつかない証として剣と向かい合っているのである。

「訊くしかないかな……」

 夢斗は剣を鞘に納めると、静かにそう呟き、椅子から立ち上がって窓を外を見た。

 すっきりと晴れ渡った青空。直視出来ないほどの日の光が、マンションの一室を暖かく照らしていた。

「さて、そろそろ上がる頃かな」

 夢斗はそう言って自室へと向かった。未だ寝間着のスウェット姿のままである。

 自室に着いて動きやすいジャージを探そうとクローゼットの中を探る途中、ベッドの上の携帯が主にメールが届いたことを告げた。

「何だ?」

 着替えを一旦止め、携帯をひっつかむとメールの内容を確認する。

「園美か」

 メールの内容を黙々と読み耽る。どうやら、デートのお誘いの様である。

「映画かぁ……。ムリだな……」

 夢斗は即座にそう判断し、断りのメールを入れた。

「そういや、オレと園美は付き合ってたんだよなあ……」

 メールを送信し、着替えを再開して言う。

 夢斗と園美の関係は、五ヶ月前にさかのぼる。夢斗が唯一の得意分野である数学を園美に教えてる内に、二人は次第に親密な関係となり、いつの間か付き合っていた、という感じである。夢斗としては、園美を特に意識した事は無いのだが、園美はその気が有るらしく、三年になり同じクラスになってからは、園美の方からの働きかけが多い。

「園美とは、別れるべきかなあ……」

 夢斗にとっては、園美よりイブの方が気になる存在である。それに、イブも夢斗に好意を寄せている様である。ここで、関係をぐずつかせるよりきっぱりと割り切った方が良いのでは、と夢斗は考えていた。

「どうしようか……?」

 夢斗はしばらく考えたが、良い結論は出なかった。

「まあ、いいか。月曜、ガッコーで考えよう」

 夢斗がそう言った瞬間、浴室からイブが姿を現した。

「夢斗。準備は良い? 私はいつでも大丈夫よ」

 ドアを開け、顔だけ出してイブは言う。

「オレの準備は完了だ。行こうか」

 夢斗はそう言ってドアを大きく開けると、イブと一回アイコンタクトしてから玄関へと向かった。

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