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第三章 第五話 「ゴメンな、イブ……」

 試験の翌日、答案の返却が行われた。

 夢斗の結果は散々なものであった。夢斗の読み通り、帰ってきた答案には多くのナイキのマークが並んでいた。

「うえ、一八点か。どうしよ……」

 名字が『足達』なので早くに呼ばれた夢斗は、その分長い間苦杯を舐めることとなる。

「次に呼ぶ者は、補習プリントをやるように。足達、関島、田中、野島」

 夢斗は渋々教卓に向かい、両面五枚のプリントを受け取りため息をついた。


 その日の夕刻。自宅に帰った夢斗は、直ぐさまプリントとの格闘を始めた。提出期限は明日である。

「夢斗。行くわよ」

 イブが夢斗の部屋のドアを開け、夢斗を誘う。

「ああ、イブ、ゴメン。今日は行けないんだ」

 夢斗はペンを持つ手を一旦休め、振り返ってイブの前で手を合わせて詫びる。

「何故?」

「宿題があるんだ。修行も魔物退治にも行けそうに無い。本当にゴメン」

 夢斗は深々と頭を下げる。

「わかったわ。でも、出来れば来て。今日も敵が多そうなの」

「わかった。出来る限り行こうと思う。あの、がんばってね。これ、切符代。行き方は解るだろ?」

 夢斗は財布から千円札を取り出して、イブに差し出す。

「ええ、もう覚えたわ。ありがとう」

 イブはそう言って千円札を受け取り、夢斗の家を後にした。

「さて、オレもがんばるか」

 夢斗はそう言って、再びプリントと対峙した。


 数分後。夢斗は机の前であくびをした。

「ふー、これで良かったのか?」

 プリントの空欄には、既にある程度の回答が書かれていた。実は、試験返却の直後の休み時間の間に、補習仲間同士でプリントを大方片付けていたのだ。従って、宿題があるというのは、修行と魔物対峙をさぼるための口実である。

「……」

 始終黙りこくって黙考する。

 気味が悪かった。自分の意志を他人に操られ、本来なら避けるべき事を無理矢理押しつけられたような感覚に苛まれたことが。

(何で、なんだ……)

 机に突っ伏し、そのことだけを考える。

 時刻は五時を廻っていた。昨日のこの時間には、自分は剣を取っていた。

 ふと、昨夜のまま放り出されたままの剣に目をやる。

 つかの上部に竜の彫刻が施された剣。その彫刻の竜の眼が、夢斗に語りかけてる様だった。

『お前はそれで良いのか。片手の使えないイブは、恐らく満足に戦えないぞ。イブはお前の事を、少なからず信頼している。イブの信頼を裏切って良いのか? イブをほったらかしにして良いのか? お前は……』

「うるさい!! 黙れ!!」

 夢斗は耳を塞いで部屋を飛び出した。ベランダに出て夕日を見る。

 剣の語りかけが、自分の中で渦巻く疑問や悩みであることは痛いほど解る。イブを見送ったときの疑問であったからだ。

「チクショウ!!」

 ベランダの手すりを掴み、歯を食いしばって俯く。

「オレだって、戦うのが嫌な訳じゃない。でも、解らないまま戦うのはイヤなんだ!!」

 どこかでカラスが鳴いた。

(オレは、どうしたら良い!? 何をすれば良いんだ!?)

 また、カラスが鳴いた。

 夢斗は手すりを強く叩き、自らの決意に従った。

「ゴメンな、イブ……」

 夢斗は部屋に戻り、剣を取った。

さあて、さて。夢斗はこれから先どうするのでしょうか! 次回に期待!!

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