キミの香り。 - みあside -
返事がない.....。
怖かった。
怖くなったけど、逃げちゃダメだと思った。
ドアを引くとすーっと開いた。
「一輝....く..ん?」
そこにはマンガを片手にただ驚いている一輝くんがいた。
生きてた....。
そう思った瞬間腰から力が抜けた。
へなへなと座り込む私をみて一輝くんはベットを飛び降りた。
「みあ....?なんで...?」
一輝くんの声で我に戻った。
その瞬間涙が出てきた。
「か...一輝くん...わ..私、ごめんなさい...ごめんなさい」
一輝くんはポカンとした様子で私を見ていた。
「な、なんでみあが謝ってんの?」
「わ、私がッ朝に、かッ一輝くんを、よッ呼び出したせいで....」
「わかった!わかった!とりあえず落ち着け?」
そう言って一輝くんは私をベットに座らせてくれた。
少し落ち着いて私はまた一輝くんに謝った。
「みあのせいじゃねーし、車の運転手が勝手にぶつかってきただけだから。」
それでも消えない罪悪感で私は一輝くんを見ることができず、
ずっとうつむいていた。
昨日の朝より重い沈黙が続いた。
一輝くんはいきなり話始めた。
「なぁ?朝聞けなかったから、今返事聞いていいか?」
今、返事なんてできる訳ないよ...
「その話、するつもりだったんだろ?」
そう。そうだったんだよ。
でも....でも....
「俺さ、わかってんだよ。みあの答え。」
一輝くんの切ない声に胸を握り潰された感覚が襲ってきた。
「好きな人...いんだろ。」
一輝くんの顔は見れなかった。
声はとっても優しかった。
でも、今きっと一輝くんは悲しい顔をしてる。
私は一回うなずいた。
一輝くんはくしゃっと私の頭をなでた。
涙が、止まらなかった。
一輝くんは黙って私が泣き止むのを待ってくれた。
「か..一輝くん?」
「ん?」
「ありがとう。」
散々泣いた私はやっと正面から一輝くんの顔を見れた。
一輝くんは悲しく笑っていた。
「あのさ....」
「何?」
「ふられといてこんなんスッゲーかっこわりぃけど....
1回でいいから、2人で会えねぇ?」
私は一輝くんの気持ちに答えられない。
だから、できることはしたい。
心からそう思った。
「...いいよ?...」
「まじで?!うっしゃー!」
大げさに喜ぶ一輝くんを見て、
罪悪感が少しずつなくなっていくのを感じた。
「そろそろ私、帰るね?」
また悠に心配かけるし、今日は少し疲れた。
学校も早退しちゃったし、早く帰ろう。
「そっか、また連絡するな!」
「うん!じゃあね」
一輝くんに気持ちを伝えれた。
これでもうスッキリ。
.....だと思った。
「か~ずきっ」
見たことのあるヤンキー達が立っていた。
「あれ~?彼女さん来てた感じか~?」
「お邪魔しちゃったな!(笑)」
口々に冷やかしてくる。
「やめてください!そんなんじゃないっすから。」
一輝くんが真剣に言うとヤンキー達は
「わりぃわりぃ(笑)」
と、謝った。
ずっと下を見ていた私は、
「か、帰るね。」
と言いドアに向かった。
ドアの横にはだるそうに壁によりかかった、
金色の髪の人がいた。
あ....秋斗先輩.....。
もっと見てたい。
もっと知りたい。
もっと近づきたい。
でも足は止まってくれなかった。
横を通るときふわっといい香りがした。
部屋を出て、ドアが閉まってから、
振り返った。
秋斗先輩は、私のこと見向きもしなかった。
私は他人。
なんの感情も持たれることのない存在。
それがたまらなく苦しい。
秋斗先輩に触れたい。
そう思った。