キミへの想い。 - 一輝side -
やべぇよ!
言っちまったよ....。
何が
『返事は今すぐじゃなくていいから。』
なんだよ...
こんな不安なのが何日も続くと思うと
それだけで壊れそうだ。
俺こんな弱い男じゃなかったよな...?
*****
「めんどくせぇな。」
桜の花びらだって目の前でちらちら舞ってうぜぇ。
入学式だ?
がちめんどくせぇ。
でも星矢先輩達にあいさつしないわけにはいかない。
「だりぃ。」
周りは親と楽しそうにしているやつらばっかで
それが俺には滑稽に見えてしょうがなかった。
親父?お袋?ばかばかしい。
俺にはそう呼べるやつらがいない。
両方とも自分の都合で俺を捨てた。
だから昔っから同情に敏感で、
されるたびに腹が立った。
物にも人にも当たっていた。
星矢先輩は中学ん時に荒れてた俺を救ってくれた人。
いつもはふざけたりしてるが、
本当はすげぇ人。それを知ってんのは俺だけかもしれない。
秋斗先輩も恭介先輩もそうだ。
俺にとっては絶対に超えられない人達。
先輩たちに気を使わせるのも嫌だったし
悟られるのも嫌だった。
だから先輩達といるときはなるべく明るくしてた。
それ以外のときはヤンキーで恐れられる俺を
必死で演じていた。
どうせ通わねぇ高校の入学式なんてだるいだけだろ。
先輩達にあいさつして自分の席だけ確かめて帰ろう。
そう思ってた。
クラスは...っと。
「...3組..。」
校舎には誰もいなかった。
さっき外にいたやつらは体育館で長い校長の話でも聞いているんだろ。
「ここか。」
教室のドアを開けると女がいた。
その女はこっちを向いてびっくりしているようだった。
「ど、どうも。」
女は好きぢゃなかった。
だからと言う訳ぢゃないけど無視した。
女は一番端の席でグラウンドを眺めてた。
すげぇ綺麗な顔をしてる。
俺の席はその女が座ってる席だった。
どけよ。
普通の俺ならどんなやつにもかまわず言っていた。
でも綺麗過ぎるこの女の横顔のせいで俺はただその場に
立ちつくしていた。
外はグラウンド添いに植えられた桜が風に吹かれ
花を散らしていた。
「ねぇ...」
黙っていた女がいきなり話しかけてきた。
俺は返事をしなかったけど、
女はそのまま続けた。
「君、スッゴイ疲れてるでしょ?」
何言ってんだこいつ。
「疲れてること...隠してるでしょ?」
見抜かれた。
俺は完全にこの女に全て悟られた。
「は?」
無意識のうちに声が出た。
「わ!ご、ごめんね?」
こいつは悪くねぇ。
「別に。」
でも初対面のやつにはこんな返事しかできねぇ。
「私、みあって言います。クラス同じだよね?よろしく!」
俺、今どんな顔してんだろ。
いつも通り眉間にしわよせてんのか?
にやついてる...訳ねぇな。
笑ってる?違うかな。
どんな顔してんだよ...。
目の前にいる女は瞳をキラキラさせながら笑ってる。
俺を同情や恐怖や下心の目で見なかった女は初めてだ。
俺はその笑顔で心のどっかのほつれがほどけた気がした。
俺はバイトで学校に行かない日が多かった。
行った日も教室にいることはまずなかった。
それでも遠くからみあを見ていて魅かれていった。
連れからみあのアドも教えてもらった。
『よろしく』
なんて素っ気ないメールしかしなかったけど。
みあはたぶん俺をあんま覚えてないけど。
俺はただ、みあにはまっていった。
自分を忘れるくらいに......。
*****
今日みあに会った。
やっぱ忘れられてたな。
でもよかった。
新しい俺としてまたみあと向き合うことができる。
今はすげぇ怖いけど、
みあへ気持ちは伝えれた。
新しい俺として。