キミの気配。 - 秋斗side -
夏休み初日。
俺と星矢と恭介は避暑地(克希ん家)に集まった。
「あっちぃ~!克希~クーラーつけてよ!」
「あ~待ってろよ~......」
「早くしろって~」
「リモコンがねぇ....」
「え~!!」
避暑地のはずが、ただの暑地だった。
「千晴に借りてくる!」
克希の2コ下の妹。
ピッ
ウィーンと重い音を出しながらクーラーが動き始めた。
「やべ~生き返る~」
大げさに言う星矢に俺たちは「いや、死んどけ」
とか言って笑った。
少し時間が経ってまた星矢が、
「腹減った~のどかわいた~」
とか言い出した。
時計を見ると1時30分だった。
俺も腹減った。
「コンビニ行かね?」
外に出るのは正直だるかった。
でも酒も飲みたかった。
「行こう行こう!」
星矢が勝手に盛り上がってるのを横目にてきとーに準備していた。
「おい!克希ー!!」
玄関の方から叫び声が聞こえた。
克希の妹だ。
「あんまよごすなよ!」
何もしてない克希が叱られてる...
「わかってるわかってる!千晴~早く帰って来いよ~?」
何妹に向かって甘えた声出してんだ?こいつは。
「あ、今日彼氏ん家泊まってくるから、
晩飯いらんから。いってきま~す」
克希はなぜか少し泣きそうになっていた。
きもい。
「お前の妹すげーな!強ぇぇえ!(笑)」
星矢はほんっとおもしれぇ。
克希を散々バカにして部屋を出ようとした。
「なぁ、秋斗!」
テンションの復活した克希に引き止められた。
星矢と恭介は部屋にいなかった。
「んだよ。」
「まぁ、お前にとってはどうでもいい話だろーけど...。」
ニヤニヤしてる克希は本当うぜぇ。
「言えよ。」
楽しそうに克希は話し出した。
「なんかな、千晴の中学の時からの連れが、
お前のこと好きって言ってるんだってよ~」
克希は恋愛系の話が好きで、かなりの情報を持ってる。
俺にとっては「で?」としか思えない。
「だから何?」
「それが結構美人なんだよ!」
「だから?」
「そ、それだけです!」
俺がめんどくせぇって目をしたら、克希はふざけながら謝った。
ちょうどそのときに恭介が玄関のほうから
「早く来いよー」とせかす声が聞こえた。
ブォンブォン!!
バイクを走らせると生ぬるい風が頬に当たってうざかった。
克希の話....あいつの妹の連れつってたな....
そういえば、みあもよく一緒にいるのを目にする。
もしかしたら....
そんな考えが浮かんだ。
でも、ない。
話したこともねぇし、あいつもどーせ俺らをただのヤンキーとしか
見ないと思うし。
気づくとあいつらは飛ばして、俺は置いていかれた。
別にどうでもよかった。
最近ほんとどうかしちまってるな、俺。
コンビニに着くとバイクが2台、
迷惑な止め方してあった。
「もっとましなとめかたしろよ...」
よく変なとこに几帳面と言われる。こういうとこか。(笑)
バイクを止めてもやもやした気持ちのまま重いドアを引いた。
中は冷房のおかげで涼しかった。
ドンッ
「ってぇ」
誰だよ。
ぶつかってきたのは女だった。
それもちっせぇ。
「すすすす、すいません!!」
そう言いながら顔をあげた女を見た瞬間目を疑った。
みあ...?
やべッ!
最初すっげぇ睨んぢまった...
「あわあわ、私、すッすみません!」
おびえたようにみあは走って逃げようとした。
相当怖ぇ顔してたんだろうな、俺。
カキ氷の入ったビニール袋を忘れているようだった。
「ちょっと待てよ。」
俺は反射でみあを後ろから引っ張った。
みあは想像以上に軽く、少し引いただけでよろけた。
「お前、忘れてる。」
言いながら、こんな言い方しかできない自分を恨んだ。
「わわ!す、すみません!!」
すっげぇ慌ててる。
「お前さ、」
何話していいか分からなかった。
でも、みあを知りたいと思った。
少しでもみあの中に俺の存在を残したかった。
「克希の妹の連れ?」
さっきの話が頭に残ってた俺は、
こんなわけわかんねぇことを聞いてしまった。
「え....?あ、はい.....。」
「ふーん。名前は?」
知ってること聞いてどうすんだよ。
「み、みあです!」
「へぇ。」
もっと知りてぇ。
「あの......」
「あきと~何買ってきゃいい~?」
みあの声は星矢の声にかき消された。
俺は星矢のもとに向かった。
後ろでは克希の声が聞こえた。
「ってか、みあ??」
あいつら知り合いなのか。
星矢と恭介と俺はてきとーに食いもんと酒を選んでいた。
克希が戻ってきたとき、みあはもういなかった。
金払って外に出ると、セミの鳴き声がうるさかった。
「秋斗~!」
克希がくっついてきた。
「お前きめぇよ。てか暑苦しいから。」
「なぁなぁなぁ!さっきの女!なかなか可愛いだろ?」
みあのことか...
俺は無視してバイクに乗ろうとした。
克希はまたニヤニヤしながら楽しそうに
「あいつなんだよ、秋斗のこと好きな千晴の連れ!」
.....ばかじゃねぇの。
「は?」
「千晴から聞いたんだから間違いねぇよ。」
間違いねぇよ?
ぜってぇ間違いだ。
「一応みあのアドレス教えとく!」
ケータイを見ると克希からメールが来ていた。
メールにはみあのアドレスだけが書いてあった。
「お前あんまふざけてると、まぢ殺すよ?」
間違いかもしれない。
不安はあるが、少しずつ近づいてくるみあを確かに感じた。
俺の中ではみあだけがどんどんでかい存在になっていた。