1st-2
俺は転入生の背を見送り、改めて思考する。
……転入生はアキ――秋登だ。
7年前、創の前から消えた親友である。心で確信する。
出会った頃の秋登は両親がなく、血の繋がった家族はお祖母さんと姉の泪さんだけだった。祖母の経営する孤児院の子どもたちを家族と呼び、幸せな、けれど区切られた世界に存在していた。それが小さな箱庭でしかなかったのをいつ気付いたのだったか。今でもその純粋な瞳と泪さんの綺麗な髪が記憶にはっきりと残っている。
お祖母さんが死んで、すべてが壊れた。子どもたちだけで上手くいく訳がなくて、泪さんは国に連れていかれ、秋登はそれについていった。子どもたちもいつの間にか消えていた。
皆がいなくなり俺に残ったのは廃墟となった孤児院と約束だけだった。今は何もかもが遠い。
もう会うことはない、そう思っていた。――数年ぶりに見かけた秋登は変わっていた。名前が、声色が、俺を知らないという態度が、……瞳が変わっていた。紅の、精彩を欠いた瞳。秋橋 涙は“秋登”であることをペンダントが教えてくれたのに。
……7年前だ、顔なんて変わっているだろう、性格も変わっているかもしれない。けど――。
勘が告げる。警鐘が鳴った。“アレに関わるのは危険だ。”――戦闘における最も信頼の出来るもの。それが勘だ。それが告げる。
俺にとって一生ものの友だちだった。たった一人の親友だった。今でも大切な人だ。答えなんて始めから出ているのに、選択肢なんて必要がないほど答えは決まっていた。




