1st-7
創は舞台からそのまま衣装部屋へと場所を移す背を見ているしかなかった。
授業中だったから、では済まされない程の拒絶。圧倒的な『秋登』への拒絶。そこにいたのは“俺の知る秋登”とは違う。でも確かに“秋登”だ。変わってはいるけれど、完全じゃない。昔の秋登が残っている。そこに未練はあるのだ。“秋橋 涙”は“昔”を忘れてない。どうすればいい?何があったのか、何を思っているのか。……何が出来るのか。
――何一つ、わからない。そんなことも、分からない……。
創は舞台から降りる。
俺の出る幕じゃないのかもしれない。何の力もないんだ。ただの子どもで、人一人を守れる力なんて、持ちやしない。ただ、俺とアキを繋げるのは約束一つ。思い出は過去でしかない。
だが、あの約束だけは果たす。“現在”をともに生きるために。クレア・クレイミール聖堂で誓った、かつての約束。『互いを支えとし剣と盾、補い合う存在となり、大事なものを守っていこう』――幼い頃の戯言だと笑い飛ばす者が居ても、あの想いは――眼差しは、真剣で違えようのない真摯で純粋な絶対。それだけは、どんなに時を経ても変わらない。
アキが帰ってきたのも、約束を守るためだ、そう思いたい。
「いや、信じる」
不可解な態度は意固地で、何かを必死に守ろうとしているように見えるから。――拒絶されてももう一度、信じられる。昔から、何事にも必死で、妥協をしない、アキだから。
でも嫌なところもしっかり残っているようだ。“自己犠牲”――気づかぬ内にどれだけ傷つくつもりなんだろう。それがいいところでもあるが、隣で見ているのは辛かった。俺は視線を真っ直ぐに、背を伸ばして歩く。曲がっていたら、アキは信じてくれない。だから馬鹿だと罵られてもぶつかるしかない。あの頃と、同じように……。




