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青の風の案内人 宙(そら)  作者: 浮世雲のジュン


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第十七話 わらわら作戦会議

深刻な夜が続くと、

心は知らないうちに固くなっていきます。


怒りの森。

眠れない街。

裂け目の庭。


どれも大事な夜でしたが、

そのままでは息が続きません。


今夜の入口は、

“笑って座りなおすための部屋”に開きました。


丸いテーブルと、青いランプと、

湯気の立つお茶と、丸いビスケット。


世界を守る作戦は、

ときどき笑いから始まります。


第十七話 わらわら作戦会議

深刻なことほど、たまには笑って座りなおさないといけない。

それを最初に言い出したのは、もちろんえれんだった。

「このまま真顔で世界救うとか、絶対むり」


その夜、私たちは川沿いの小さな異界の部屋に集まっていた。

丸いテーブル。青いランプ。湯気の立つお茶。真ん中には丸いビスケット。

「なんでお茶あるんだよ」と私。

「会議には必要」とみか。

「あとお菓子も」とえれん。


宙が椅子の背にもたれて話し始める。

「曇りは一つじゃない。遠い国の悲しみ、近くの町の不安、個人の怒り、言えなかった言葉。

そういうのが重なって大きくなる」

あくあが地図のような水の膜をひらく。

「町の外れの、古い見晴らし台。そこに大きな渦がある」


「デートスポットみたいな名前だな」とえれん。

「そういう言い方やめて」とあくあ。

雫とみかがくすっと笑う。

もう、そのやりとりだけで空気が少し変わる。


「見晴らし台に行って、裂け目を閉じる」と私。

「閉じるというより、和らげる」とみか。

「力で押し返すと、別の場所にひずみが出るから」と宙。


宙はビスケットを一枚つまんだ。

「席をつくる」

「は?」

「敵か味方かに分ける前に、戻ってこられる席を置くんだよ」


帰り際、えれんが席を立とうとして、あくあと同時にテーブルの端へ手を伸ばした。

指先が触れる。ふたりとも、少しだけ固まる。

「……ごめん」

「いや、別に」

でも、その「別に」は、もう全然“別に”じゃなかった。


世界の曇りはひとつではありません。


遠い国の悲しみ。

近くの町の不安。

個人の怒り。

言えなかった言葉。


それらが重なって、

大きな渦になります。


力で押し返すことはできません。

押し返せば、別の場所にひずみが生まれるから。


だから宙は言いました。

「席をつくる」と。


敵か味方かに分ける前に、

戻ってこられる席を置くこと。


えれんとあくあの指先が触れた瞬間、

その席の最初の灯りが

そっとともりました。


笑いは、

世界を壊すほうじゃない力です。


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