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爺さん婆さんでドラゴン退治!

作者: 大石次郎
掲載日:2026/03/20

とある異世界の山中で、金目当ての冒険者達が封印の要石を奪って遁走! 結果、封じられていたゴールドドラゴンが復活してしまったっ。


近くの山里は危機的状況となり駐在衛兵の指揮の下、自警団が対処に当たったがボコボコにされて里に逃げ帰るより他なかった···


近くの大きな街から本格的な討伐団は、先遣隊も数時間は掛かる。里の者達は避難を始めたが飛行能力のあるゴールドドラゴンからはとても逃げ切れるものではない。


そこで、『物理的に』腰が重いこの3人が立ち上がった!!


「やれやれ、腰が痛いわい」


元領主騎士団団長ゾッコム。御歳74歳! 現在は長男宅に同居し、主に家庭菜園と里の老人会の会長職を行っている。


「ふぅ〜、私は膝がちょっとね」


元冒険者ギルドA級野伏職タリエード。御歳72歳! 現在は家政婦の世話になりつつ妻と暮らし、主に里の弓術教室の顧問と狩猟会の顧問を行っている。


「あたしゃ、入れ歯の調子がねぇ」


元魔法道具協会素材回収部所属A級魔法使い職ミコト。御歳73歳! 現在は主に体調の優れない同性パートナーの看病をしつつ、不定期で魔法道具屋と魔法教室の手伝いを行っている。


若かりし頃は一流の3人が揃った!!


若かりし頃は···


「おいっ、ミコト! 飛行絨毯(ひこうじゅうたん)がフラついておるぞっ?!」


山中の徒歩移動は秒で諦めた3人はミコトの操る飛行絨毯で、元々この辺りの山で幅を利かせていた強壮なモンスターと交戦しているゴールドドラゴンに近付いていた。


「あんたの装備が重いんだよ!」


ゴールドドラゴンと争っているのは森林帯の地形を取り込んだ巨人フォレストジャイアント、呪いの樹木の怪異カースエント、沼その物がスライム化したスワンプスライム。


いずれも劣勢で、フォレストジャイアントは尻尾で叩きのめされてほぼ土でできた身体が半壊。カースエントは輝く炎のブレスで焼かれほぼ炭にされ、スワンプスライムは炙られて2分の1程度消し飛ばされていた。


「スライムとエントは相性最悪だな。せめて飛んでいなければ勝負になりそうだが」


「なら墜としてやるわい! ミコトゆくのだっ」


「人を馬みたいにねっ」


逡巡したが、パートナーは魔法道具屋や魔法教室の者達によって浮遊担架(ふゆうたんか)で慎重に運ばれているが、速くは移動できない。


「やってやろうじゃない! タリエード、牽制頼んだよ?」


「やってみようっ! 左側面を撃つ」


「任せなっ」


フラつかせながらも魔力を込め絨毯の速度を上げるミコト。


いよいよ接近すると急上昇して中空のゴールドドラゴン頭上を目指す。竜はすぐに気付いたが、


「よっ」


タリエードは弓に4本つがえ、矢に風を纏わせ操るスキル、エアシュートを放った!


飛行絨毯は風の結界に覆われているが、その左側面をタリエードは4本の風の矢で撃つと同時に一瞬結界に穴が空けられ、そこを通って飛び出た矢は風で軌道修正されて黄金の竜の両翼、口元、尻尾の中程を打ち据えた。


「?!」


ダメージはさほどでもないがブレス、尻尾の一撃、羽ばたきによる回避や烈風を一時封じられるゴールドドラゴン。


その隙を老騎士は逃さない。


「ひょっほーーーっっ!!!」


ミコトが空けた結界の穴から勢いを付けて飛び降りるゾッコム。長剣を抜き雷の魔力を決める。


「チェストぉーっ!!」


雷鳴斬りスキルで右の翼を切断するゾッコム。


「ジャオオォッッ?!」


苦痛に吠える竜。


「ゾッコムっ、あ痛たた?!」


タリエードは鞭で落下するゾッコムを捉えて風の結界の穴から回収したが、膝を酷く痛めてしまった。


「しっかりせんかいっ、タリエード!」


「ヒール! 大人しくしてなっ」


「面目ない···」


膝に回復魔法を掛けてもらったが思わしくないタリエードであった。


右の翼を失い不安定化したゴールドドラゴンは中空で飛行する魔力の維持を行おうとしたが、もたもたしている内にフォレストジャイアントに巨石生成スキルで造った大岩を投げ付けられてまともに喰らい、巨体で地を揺らし、土煙を上げて落下した。


すかさずスワンプスライムが襲い掛かり、溶解液スキルで溶かしに掛かる。


「ジャァッッ!!」


大ダメージを受け、左の翼を溶かされ完全に飛べなくされるが輝く炎のブレスでスワンプスライムを消し飛ばして焼き尽くすゴールドドラゴン。


しかしカースエントが追撃を試みる。枝と根の鞭で全身、特に厄介な尻尾と口を塞ぎ、呪いスキルで魔力を減退させるカースエント。


「いいね、火の魔力が随分下がった。強いブレスはあと1発じゃないかいっ?」


「ワシの腰もあと大技1発が限界だぞい?」


「援護射撃くらいはできそうだが···」


「2人ともポーション飲んどきなっ」


拘束されてる内ににフォレストジャイアントが大石器の斧を手に迫ると、ゴールドドラゴンは激昂してカースエントの触手を引き千切り噛み千切り、勢いの引き込まれて倒れ込んだカースエントを踏み付けて粉砕して仕留めた。


破片が散り、慌てる飛行絨毯の3人。


「「「うへぇーーっっ?!!」」」


格闘戦になるフォレストジャイアントとゴールドドラゴン。フォレストジャイアントも既に隻腕になっている。


殴打や応酬が続いたが、狙いすましたゴールドドラゴンがフォレストジャイアントの土と岩と木々や苔の頭部を噛み砕いた。


が、身体が完全に崩壊する前にフォレストジャイアントは大石器の斧を振り下ろし、竜の尾を付け根から両断した。


「ジャァーーーッッ!!!!」


血も凍る声で絶叫するゴールドドラゴン。3体の強壮なモンスターを全滅させたが、両翼、尾を失い。火の魔力減退、全身にもダメージ大である。


「こうなると的にされるだろう、3手に別れよう」


「うむ!」


「年寄り2人で動けるのかい?」


「「こっちの台詞!!」」


3人は笑って、飛行絨毯が一旦低空飛行をしだすとゾッコムとタリエードは結界の穴から飛び降り、それぞれ地を駆け出した。


ミコトの飛行絨毯は急上昇する。


「ジャァッッ」


目立つミコトの飛行絨毯に反応し、口に炎を灯すゴールドドラゴン。


「妻の言う通り針の治療院にもっと通っときゃよかったよ!」


駆け回ってる時点で激痛の膝への負荷を少しでも軽くする為、単発のエアシュートを顔に連打してブレスを打たせず、注意を引くタリエード。


その隙に飛行絨毯を空中で静止させて風の結界を解き、杖を構えたミコトは氷の魔力を練りだした。


一方ゾッコムは、


「重過ぎたわいっっ」


鎧や兜を脱ぎ棄てながらゴールドドラゴンの足元に駆け込みその踝から、壁走りスキルで駆け上がってゆく。


「ふぉおおおーーーっっ! 腰がっ、腰が爆発しそうだっっ」


さすがに気付くゴールドドラゴン。エアシュートでも口元と下方のゾッコムの両方を完全にフォローはできない。


役割はミコトにあった。あったのだが、


「アイス! しゅと、ふぁふぁっっ???」


アイスストームの魔法を放とうとしたが、入れ歯が外れて詠唱に失敗してしまうミコト。


援護が入らず、ハエのように竜の手で何度も叩き潰されそうになり必死で避けて回りながら、さらに駆け昇るゾッコム。


「だから甘い物は程々にとしておけとあれほど言ったのだ! もう50年以上忠告しておるからのっ」


ゾッコムを『ハエ叩き』から守る為に口元への牽制がおろそかになり、ブレス発射体勢を完了させてしまうタリエード。


「しまったっっ、逃げろゾッコム!! あ痛っ」


完全に膝をいわし、倒れ込むタリエード。


ゴールドドラゴンは一級品の防具をほぼ外した小さな人等一瞬で消滅させる火炎を吐き出そうとした。範囲は広く、回避等はさせない。


その時、


「もごっっ」


慌てていたミコトの入れ歯が、完璧に入れ直された!


「アイスストームっっっ!!!」


強い魔力の猛吹雪が放たれ、ゴールドドラゴンの頭部は凍り付き、口の輝く炎は消し飛ばされた。仰け反る黄金竜。


ゾッコムはポーションのお代わりを飲み干しながら、肩口まで駆け上がっていた。


もはや腰は限界になっていたが、騎士として戦士として老人会会長として! あらゆる勇気がこの勇士に力を与えた。


「チェストぉおおおーーーーっっっ!!!!」


雷の刃が、凍り付いたゴールドドラゴンの頭部を打ち砕いた。同時に、


ビキィッ。


無慈悲なぎっくり腰がゾッコムを襲った。


「へぅっ?」


脱力したゾッコムはまだ入れ歯が落ち着かない飛行絨毯のミコトによって回収された。


巨体のゴールドドラゴンが倒れたことで、その地響きと風圧と土煙でタリエードが一時行方不明になったが、近くの茂みでのびているのをどうにか発見されていた···



山里に平和が戻り遅れてきた先遣隊は仰天していたが、ともかくその夜は祝勝会となった。


ゴールドドラゴンに加え、手出しできなかった強壮なモンスターが3体も倒れたのでそれなりの素材が出に入る。当面はこの山里は潤う見通しとなっていた。


竜の肉は珍味として大量にあることもあった皆に多くを振る舞われることとなった。


「ほら、ゴールドドラゴンのシチューだよ? 今回大変だったけど、精がつくからね」


椅子に座らせ、ケープを着せたパートナーに竜のシチューを飲ませてやるミコト。


「美味しい。ありがとう。でも、ミコト、麓の歯医者に行って新しい入れ歯を作らないとね」


「いや、それわしゃふぁふぁっ??」


言い訳しようとしてまた入れ歯が外れてしまうミコト。


「あなたも膝のリハビリしないと」


「うーん。里から手当ても出るし、しばらく温泉にでも行こうかぁ?」


松葉杖になったタリエードは妻と話し込んでいた。


「ゾッコム殿! まさかそのお年でドラゴンスレイヤーとはっ。また騎士団で働かれてはいかがです?」


「勘弁しろ。いよいよ死んでしまうわい」


車椅子に座れず、浮遊担架に寝かされたゾッコムは警戒と事後状況調査、遁走した盗っ人冒険者の捜査の為にいくらか残ることになった飛行獣(ひこうじゅう)を使う先遣隊の者達に囲まれていたが、


「じいじ、早く元気な〜れ!」


駆け寄ってきた孫に腰をはたかれ、


「はふぅっ?!」


悶絶するのであった。


なにはともあれ、ポツンとある異世界の山里を突如襲った大ピンチを、平均年齢73歳の勇士達の活躍で見事切り抜けられた。


めでたしめでたし。


お年寄り、大事にしようね☆

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