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TS☆魔法少女エンジェルステラ  作者: 天崎 剣
【1】魔法少女エンジェルステラ登場!/ 第1話 僕らが変身?! ありえない!
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chapter.4 チェンジ・ステラ!

 伊織が渚と言い争っている間に、黒服の男達は淡々と作業を続けていたらしい。

 左腕に嵌めた《ステラ・ウォッチ》の画面がパッと明るくなり、円グラフと共にパーセンテージが表示される。


「今“戦闘フォーム”って言ってたよね。何のつもり」


 緑川はフッと笑い、伊織の問いにこう答えた。


「我が研究所の超科学をもって、この歪曲した世界を正そうと思ってね。君達にはその一翼を担って貰う」


 銀縁の眼鏡のレンズがキラリと光った。

 良からぬことに巻き込まれてしまったと、伊織は数歩後退った。


「ヘタレが。怖いのか?」

「そ、それは」


 渚の厳しい視線。


「お前、自分の目で見たことがないんだろ」

「え?」

「V2に罹患した人間が魔物化する現場だよ。知ってたら、たじろいだりしないはずだ。つまりお前にはやっぱり覚悟が足りない。逃げたいなら逃げれば? そして自責の念に駆られて一生悔いてろ」


 正面に向き直り、渚は堂々とした様子で緑川を睨み付けた。


「報酬は出る?」

「勿論。条件は要相談だが十分な報酬は約束しよう」

「税理士も付けてくれる?」

「当然だ」

「じゃ、交渉成立で」


 緑川と淡々と交渉する渚の堂々たる姿に、伊織は身震いした。

 異様な空気感に飲み込まれそうで、そうしたらもう二度と、真っ当な日常は戻ってこないんじゃないかという恐怖で、嫌な汗がタラタラと頬を伝った。


「報酬くれるってよ。これで《きらキュア》のアクスタ、迷わず買えるようになるんじゃないか」


 突然話を振られて、伊織は目を見開いた。


「そ、それは」



 ――ピーッ、ピーッ、ピーッ……



 《ステラ・ウォッチ》の表示がダウンロード完了を知らせるのが早いか、異常を感知したタブレットが警報を鳴らすのが早かったか。

 黒服の男達は開いていたアタッシュケースを閉じ、タブレットを抱えて立ち上がり「所長、来ました」と緑川に耳打ちしている。先に行けと、緑川は男達に指示を出してから、伊織と渚に向き直った。


「魔物化したV2罹患者から、特殊な波動が放出されているのは知っているか?」

「波動……?」


 顔を見合わせ首を傾げる伊織と渚に、緑川は淡々と話を続けた。

 

「ヴィラン化ウイルスによる特殊波動――《V波》を半径五百メートルで察知すると、計測機能を搭載した腕の端末が振動する。セッティングが完了した腕の端末《ステラ・ウォッチ》が震え出しているはずだが、どうだ?」

「震えてます。……なるほど、これでV2罹患者のおおよその場所が確認出来る、と」


 渚が《ステラ・ウォッチ》の画面を確認しているのを見て、伊織も恐る恐る左腕を持ち上げ画面を覗き込んだ。

 アラートを示すアイコンと共に、画面には細かな波模様が表示されている。


「左……?」


 波が左から右へと流れるように表示されているのを見て、伊織はふと、そちらに視線を向けた。


「――キャアァアアアアァ……ッ!!!!」


 複数の悲鳴、そしてガタガタと激しく何かがぶつかり合う音。


「時間がない。端末に向かって叫べ、“チェンジ・ステラ”だ。君達の音声のみに反応するよう、セッティングは完了している。君達は、我が研究所の超科学力によって強大な力を持つ戦士《エンジェルステラ》となるのだ……!!」


 緑川が力強く言い放つと、鼓舞された渚がすっくと立ち上がった。


「行くぞ、クソガキ」

「クソガキじゃねぇし」


 言い合っている合間にも、見えないところで何かが起きている。

 急かされるように、二人は同時に左手に拳を作り、グイッと眼前に突き立てた。



「――“チェンジ・ステラ”!!」



 互いに顔は合わさずに、左腕に右手を添え、肩幅に両足を開いて叫ぶ。

 途端に《ステラ・ウォッチ》から眩い光が放たれ――伊織の視界は真っ白になった。






 ……身体が、分解されていく。






 《ステラ・ウォッチ》から放たれた光の粒子が伊織と渚をそれぞれ包み込むと同時に、自身の身体や装飾品、荷物に至るまで、何もかもが光に溶けて混ざり合っていくような感覚。

 身体が光の中で再構築され、新たな姿へと作り替えられていく。


 まずは身体の輪郭が出来上がり、それから長く伸びた髪が出現した。

 光で作られた長いリボンが全身にグルグルと巻き付いて――解けていく。手の先、足の先、胴体に絡みついたリボンが消えると、胸に大きな(ステラ)が浮かび上がった。


 髪は頭の高いところで二つに結われて、羽をモチーフにした髪飾りが添えられた。

 整った小さな顔に、軽いメイク。


 光に溶けていた感覚が少しずつ自分の身体に戻ってくるのが分かって、ようやく二人は目を開ける…………!!


「来るぞ!!」


 伊織の隣で、高い声が叫んだ。

 咄嗟に構えると、腕には先ほどの《ステラ・ウォッチ》が見えたが、同時に小さな手とフリルの付いたアームカバーが目に入った。


「え? なん……」


 視界の隅っこに揺れる、ピンク色の長い髪に気を取られていた伊織は、隣の車両から突っ込んできた真っ黒い何かに吹っ飛ばされた。


「グアッ!!」


 真っ正面から突っ込まれた伊織の身体は空中で数回転し、座席の背に叩きつけられた。反動でゴロンと床に転がり落ちる。


「大丈夫か?!」


 また高い声。誰だ。

 通路に手を付き身体を起こそうと前屈みになると、今度はまるでキュアキュアのコスプレでもしてるみたいな、ボリュームのある紫色のフリルが伊織の視界に入り込んだ。


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