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TS☆魔法少女エンジェルステラ  作者: 天崎 剣
【1】魔法少女エンジェルステラ登場!/第5話 エンジェルステラ包囲網?!

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chapter.1 一千万と皮算用

 食卓に置きっぱなしにしていた伊織のスマホが、ブゥンブゥンと振動した。通知画面には羽のアイコン。“新着メッセージがあります”と書かれているのを最初に見つけたのは、伊織の妹のどかだった。

 伊織はあいにく入浴中。なのに何度も通知が来るので、のどかは仕方なしにスマホの画面を覗いたのだった。


「珍しい。優也君じゃない人からだ」


 ボソリとのどかが言うと、父の良悟がテレビを観ながらハハハと笑った。


「そんなに珍しいか?」

「珍しいと思うけどなぁ……。通知溜まってるし、お兄ちゃんに教えてくる」


 伊織のスマホを片手に洗面所の前まで行くと、のどかはコンコンとドアをノックした。


「お兄ちゃん、何か通知いっぱい来てるよ〜!」


 ドアの向こう側でゴソゴソ音がするところをみると、丁度風呂から上がったばかりらしい。


「わ、分かった! ちょっと待って!!」


 ごにょごにょと扉の向こう側で独りごちる兄の声を聞きつつ、のどかは「早くね〜」と伊織を待つ。その間にも通知がどんどん溜まっているところを見ると、相手はかなり急いでいるらしいことがうかがえた。


「あ、ありがとう、のどか」


 腰にタオルを巻いた伊織が洗面所の扉を開け、隙間から手を伸ばしてくる。


「健太郎って人からいっぱいメッセージ来てるみたい」

「け、健太郎? あ、うん」


 伊織は一瞬目を泳がせたが、気にしてないような素振りをしてスマホを受け取り、バタンと扉を閉めてしまった。

 途端にまた洗面所で独りごちる兄の声が聞こえて、のどかは大きく首を捻るのだった。


「変なの」


 昨日から兄の様子がおかしい。

 遅く帰るなんて、前は週一程度だったのに、今週は二日連続。やはりV2モンスターの襲撃で駅から出られなかったとか、人がごった返していて動けなかったとか。

 都合よく二日連続で引っ掛かるなんてあり得るのだろうか。

 それに、伊織は嘘をつくのが大の苦手だった。トランプのババ抜きでさえ、まともに勝てた試しがないほどに。

 ……どうも、最近の伊織は、動きがぎこちない気がするのだ。

 首を捻りながらリビングに戻ると、今度は父の良悟が「ひゃあ〜っ」と変な声を上げている。


「凄いな、賞金一千万!!」

「一千万もあれば、伊織とのどかの学費の足しになりそうじゃない?」

「ママは夢がないなぁ〜、旅行に行こう、旅行! みんなで北海道一周とかさ」

「旅行? だったら海外が良いなぁ〜! ヨーロッパとか」

「ヨーロッパ? フランスとかイタリアとか……悪くないな」


 両親の妙な盛り上がりに首を傾げていると、父がこれだよとスマホの画面を見せてくる。


「エンジェルステラ、正体見破ったら一千万!! 凄いな、岸社長!!」


 世間を騒がすエンジェルステラ――今日も活躍したとSNSで見たばかりだった。


「本格的に捜してみようか。都内には出没するわけだし」

「一攫千金狙うのも悪くないわよね」


 それまでエンジェルステラに殆ど興味を示さなかった両親が前のめりになっている。それが何だか妙に奇怪で、あまり心地のよろしくない、気持ちの悪いものにさえ思えてしまうのだ。


「パパ、ママ知ってる? そういうの、捕らぬ狸の皮算用……」






「いいい一千万ン…………!!!!」






 短絡的な両親を諭していると、不意に洗面所から叫び声が聞こえてくる。

 伊織もどうやら同じニュースを知ったらしかった。


「何だぁ〜、同類の友達かぁ〜」


 と、のどか。


「何が?」

「さっき、お兄ちゃんにいっぱい来てたスマホの通知。魔法少女好きの友達、優也君の他にも居たんだって思って」

「そりゃ今時、魔法少女好きの男子が居たっておかしくない」


 ハハッと笑って、父はまた母と二人で皮算用を始めた。

 のどかは何だか居心地が悪くなって、そのまま自室へと戻って行くのだった。






 *






 のどかに渡されたスマホで健太郎からのメッセージを確認した伊織は、信じられないくらい大きな声で叫んでしまったことを、すぐに後悔した。

 口を塞いで慌てて廊下を覗いたが、のどかも両親も特に反応していないようでホッとする。


「伊織〜、騒ぎ過ぎだよ〜」

「ティンクル、シーッ!!」


 洗面所の扉を閉めて、伊織は白うさぎのぬいぐるみティンクルにむかって人差し指を立てた。


「ティンクル、知ってたなら言ってよ! 何だよ懸賞金って!!」

「そういう人が出てくるのも想定内、でしょ? こんなに有名になったんだし!」

「なったんだし、じゃないって!! あいつの話だと、もうあっちこっちで大騒ぎだって……!! どうしよう、明日から学校……」


 項垂れた伊織の腰からはらりとバスタオルが落ちた。


「心配心配って、そればっか。なるようになれ、だよ! 伊織!!」


 床に落ちたバスタオルを摘まんで、ティンクルが伊織の手元まで運んでくる。


「所詮他人事なんでしょ? 知ってるよ?」

「そんなことないってば! あたしと伊織は一心同体、だからね!!」


 無責任な妖精に呆れつつ、伊織はそそくさと着替えて洗面所を後にした。

 ……が、リビングで一千万円の使い道を画策している両親を見付けて、伊織はそのまま床に崩れ落ちるのだった。

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【天屋本舗】
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