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TS☆魔法少女エンジェルステラ  作者: 天崎 剣
【1】魔法少女エンジェルステラ登場!/ 第3話 エンジェルステラ・フィーバー!!

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chapter.4 秘密基地と館花藤吾郎

「悪いけど、こうなったら徹底的にやるしかない。緑川女史が俺とお前を適任だと判断したなら、そうなんだろう。受け入れろ」


 姿勢を正し、真剣な顔で健太郎が言うと、伊織は細い肩をギュッと竦めた。


「……けど」

「辞めたい理由を探してるみたいだな。俺のせいにするのか。俺が嫌いだからやりたくない? 笑わせるな」

「そ、そんなことは一言も」


「悪いけど、俺は辞めないからな。美少女に変身して戦える、しかも魔物化したV2罹患者を一気に浄化する力を与えられた。最高だ。辞める理由が見つからないくらいにな。……お前は? お前は俺のせいにして、せっかく手に入れた力を手放したいのか?」

「ち、違っ!!」

「だったら、俺がどうの文句言うのは止めるんだな」

 

 相手は高校生。健太郎より十は歳下だ。

 声のトーンを抑え、淡々と話したが、それでも伊織には威圧的に映ったかも知れない。


「……納得はしたくない」

「お前なぁ……。たまたま同じクラスになったとか、たまたま同じ部署に配属されたとか、それでいちいち文句付けるなって話。難しいことじゃない。第一印象が最悪でも、最終的に俺に惚れるかも知れないだろ?」

「何だよ、その言い方……」


 怒りより虚しさの方が大きいような顔をして、伊織は項垂れた。

 どうしようもないことにイライラしているのだと、伊織自身気付いているのだろう。両手で頭を掻き毟り、膝の上に肘をくっつける格好で丸まって、必死に気持ちを整理しているようだ。


「魔法少女は中身の人間も清廉潔白であるべき、とか思ってんじゃないだろうな? 女子中学生が主人公のキュアキュアならともかくとして、悪いけど俺は大人だ。薄汚い人間の中で揉まれてきたし、えっちいのも大好きだし、金だってたんまり欲しい。それが人間だろ。緑川女史も分かってて俺を指名したんだ。諦めて俺と魔法少女しようぜ?」


 誘い文句としては最悪だ。

 簡単に伊織が納得する訳ではないのも、健太郎には分かっていた。

 だから彼の反応が鈍くても健太郎は動じなかったし、それは緑川も同じらしい。


「少し、所内を案内しようか。君達に与えた《ステラ・ウォッチ》の性能や、変身後のスペックについて開発担当から直接話を聞く機会があった方が良いだろうと思ってね。立ちたまえ」


 緑川はそう言って二人を廊下に連れ出した。






 *






 十九階をスルーして、エレベーターで二十階に上がる。

 緑川曰く十九階は“一般向けの研究室”らしく、伊織と健太郎には見せても意味がないのだという。


「二十階のフロア全てがエンジェルステラの開発室兼司令室になっている。ここは特別な人間だけが立ち入れる場所。掌紋認証、声紋認証、更に専用のIDカードを(かざ)さなければ入れない仕組みだ」


 エレベーターから降りると、正面の壁に二十センチ角の金属板が張り付けてある。

 板の右側には扉の形をした細い溝が走っているが、取っ手らしきものも、手を引っ掛けるような場所も見当たらない。左手側には階段室への入り口があるだけで、他には何もない、行き止まりのような空間だった。


 緑川は金属板に右手を翳し、それから「OPEN(オープン)」と呟いたあとで、胸元に下げていたIDカードを金属板にタッチした。

 ピピッと電子音、壁面の細い溝に沿って緑色の光が走り、内側の壁がズンと奥にずれる。ピーピーと機械音が続き、スライドドアのように壁の一部が右にずれ動くと、その向こう側に伊織も健太郎も予想だにしなかった光景が広がっていた――


「ひ、秘密基地……!!」


 思わず手を握る伊織。


「マジかよ……」


 健太郎は息を呑み、目を見開いた。


(ちな)みに、君達は《ステラ・ウォッチ》を翳すだけで出入り可能だ。さぁ、入りたまえ」


 緑川に言われた通りに《ステラ・ウォッチ》をパネルに翳し、健太郎、伊織の順で室内に足を踏み入れた。

 壁面をびっしり埋め尽くす複数のモニター、色とりどりのランプが取り付けられた計器類。エンジェルステラの衣装を身に付けたマネキンの入ったショーケースには、開発中だろうか、別デザインの衣装も飾ってある。


「カッコいい……!!」


 さっきまでご機嫌ななめだったのが嘘だったみたいに、伊織は目を輝かせ、キョロキョロと周囲を見渡している。


 近未来的なデザインのパネルやディスプレイ、あちこちに張り巡らされた配管、コード、正体不明の装置。あちこちにパソコンやタブレットが置かれていて、その幾つかはまだ稼働中だった。

 テーブルに無造作に置いてあったのは、ティンクルとブリンクの設定画だ。誰かの手描きだろうか、鉛筆を走らせた跡が紙に残っている。


館花(たちばな)、居るか?」


 緑川が声を掛けると、奥からバタバタと足音を立てて眼鏡を掛けた白衣の男が現れた。


「は、はい……!」


 髪の毛の薄くなった中年の彼は、白衣の下に隠した大きなお腹をたぷたぷ揺らしながら、体の割に軽い足取りで駆け寄ってくる。

 大きな体で器用にデスクや装置の間を抜けて健太郎達の真ん前まで来ると、ゼェハァと激しく息をした。


「館花、彼らが“まどか”と“なぎさ”だ」


 緑川が二人を紹介すると、館花はパアッと目を輝かせて脂ぎった顔を上げた。


「よろしくお願いします! 私が開発責任者、館花藤吾郎(とうごろう)です!!」

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