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TS☆魔法少女エンジェルステラ  作者: 天崎 剣
【1】魔法少女エンジェルステラ登場!/ 第2話 バズってる?! 絶対バレちゃダメなのに!!
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chapter.4 バズってる!!

 誰かの悲鳴、喚き声、毛むくじゃらの魔物。

 重力なんか感じなくなったみたいに素早く動く身体と、か細い手足から繰り出されているとは思えない程強烈な打撃と蹴り。


『僕らは《魔法少女エンジェルステラ》だ……!!』


 視界に揺れるピンクのツインテール、白と紫が印象的なフリルの衣装。

 隣にサッと現れた金髪ポニーテールの彼女が、伊織を指さしニヤリと笑う。


『――で、お前は“まどか”だ』

『はぁぁ?! なんで“まどか”?!』

『“魔法少女まどか”。最高じゃん』






「――最高な訳あるかっ!!」


 自分の叫び声で目が覚めた。

 伊織の全身は汗でぐっしょりだった。しっかり寝たはずなのに全然疲労感が取れていない。


「お兄ちゃんうるさい……」


 隣の部屋にも響いたらしく、のどかがドアを開けて隙間から睨んでいる。

 伊織はばつが悪そうにして、ごめんごめんとのどかに謝り、いそいそとベッドから這い出した。


「うなされてたよ? 壁越しに夜中じゅうブツブツ聞こえてたけど」

「夢見が悪くてさ……」

「やっぱり昨日の」

「どうかな」


 兄を気遣う妹の優しさに申し訳なさを感じつつ、伊織はのどかから目を逸らした。

 うっかり昨日の話を続ければ、必ずV2の話になってしまう。出来るだけ話題を変えたいが、鮮明過ぎる夢のせいもあって、伊織はなかなか他の話題を切り出せなかった。

 寝不足で機嫌の悪いフリをして、伊織はのどかを振り切るように部屋を出た。

 ……と、リビングまで足を運んだところで、


『コスプレとは思えないんですよね。このクオリティですし』

『キュアキュアとは違うって言ってましたけど』


 朝の情報番組の時間なのに、なんの話題だろう。生あくびをしつつ食卓の椅子に手を掛けたところで、伊織ははたと動きを止めた。


『そうなんですよ。キュアキュアシリーズとは一線を画しているのは、彼女らが《キュアキュア》の名前を冠していないことくらいかなぁなんて思うくらいにはクオリティは高いです。第一、単なるコスプレ美少女がこんな打撃は繰り出せない。それから、魔法……のような映像も』

『あ、これですね』

『“憐れなる子らに祝福を! 注げ!! エンジェルス・シャワ――――――ッ!!!!”』

『そう、このシーン! 現代の科学では解明出来ませんよ。魔法ですよ、魔法!!』


 思わず椅子の背を思いっ切り前に引き、そのままガクッと膝から崩れ落ちた。

 ガタガタガタッと大きな音がして、キッチンに居た母が「大丈夫?!」と声を掛け、後ろの方でのどかが「お兄ちゃん?!」と叫び、洗面所の方から父が「お~い、大丈夫かぁ~」と声を上げる。


「だだだ大丈……夫。大丈夫だよ。ちょぉ~っと、力を入れるタイミングミスっただけで」


 大丈夫ではなかった。

 椅子の背が左の膝小僧を強打して、咄嗟に床に付いた右手はビリビリと激しく痺れている。身体中の穴という穴から嫌な汗がドバッと噴き出して、まだまだ夏はコレからだというのに信じられないくらい一気に暑くなった。


『昨日の夕方、電車内で彼女らが目撃されて以降、次から次へとSNSにアップされた画像や動画がバズり始めたじゃないですか。本当にあっという間でしたよね』

『あっという間ですね。日付が変わるコロにはもうファンアートが次々投稿されてましたよね』

『そうですそうです。相田さんもご覧になりました? ファンソングなんかも投稿されたりして』

『ファンソング?! 早くないですか』

『“エンジェルステラッ♪ エェ~ンジェルステラッ♪ わたしたちっはぁ~♪”』


 もはや何が起きているのか理解出来ず、立ち上がるのに時間が掛かった。

 どうにか気を取り直して椅子を元に戻し、ゆっくりと椅子に座る。それだけのことに何分費やしたのかも分からない。


「お兄ちゃん、顔色悪いよ?」


 のどかは前の席に座って、エンジェルステラのファンソングとやらに合わせて身体を揺らしている。それどころかもう覚えたとばかりにファンソングを口ずさんでいるではないか。


「な……なに、これ。バババババズってんの?」

「昨日、お兄ちゃん、これ見て遅くなったのかと思ってたんだけど」

「いや……し、知らない、な……」


 知らないわけがなかった。

 情報番組に魔法少女姿の自分がどアップで何度も映って、うっかり気を失いかけた。


『可愛いですよね、このピンク髪の子!』

『ちょっとカメラ遠いですけど、僕はこっちの金髪の彼女が好みですね』

『どっちも素敵じゃないですかぁ~?! ところで彼女達が今後、V2対策の切り札になっていく……ということは考えられませんか?』

『もしこの魔法のような力が本当だとしたら、有り得るかも知れませんが、一種のパフォーマンス的にも見えますし……。もう少し活躍を見守る必要はあるのではないかと思いますけどね』


 食卓から良く見えるように配置されたテレビには、デカデカと“まどか”が映し出され、ファンアートと思しき美少女イラストが何枚となく紹介されていた。

 コメンテーターの会話はやたら軽快で、この現象を面白がっているように見えた。


「この子、本物のキュアキュアだよね……。お兄ちゃん、見かけたらちゃんと撮影してきてよね?」

「え……えええ?! 無理だろ。この子達、V2と戦って……」

「エンジェルステラが魔法でどうにかしてくれるみたいだから大丈夫だよ。期待してるからね」


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