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第42話:チクり

 ◇


 俺たち三人は人通りが少ない路地裏に赴き、レイヴンと互いの情報を共有することになった。ルーガスは来させていない。人数を絞ることでジルドに悟られないようにするためだ。


「え、もう全員引き込めたのか⁉︎」


 レイヴンから進捗を聞いた俺は、思わず驚いてしまった。


 『黒霧の刃』に在籍する幹部十一人の説得。残るはレイヴンたち三人を除いた八人だった。難航する者もいることを想定していたが、たった一日でもう終わらせていたとは。


「む、何か不味かったか?」


「……いや、理想的だよ。ちょっとお前たちを侮っていた」


 奴隷化状態のレイヴンが嘘をつくことはない。信用して問題ないだろう。


「スムーズにいったのは、ブラウンのおかげだよ。あの人は人望が厚いからね。……それに、もともとジルド様の命令には納得いっていなかった者も多かったんだ」


「なるほどな。しかし、だとするとかなり作戦が楽になるな」


 ここで、今度は俺たちからの情報共有とジャンさんから預かった伝言を全て伝えることにした。


 ジャンさんからの伝言は——


「……ということで、騎士団側の意向で決行は明後日になった」


「明後日⁉︎ は、早いな! それにしても、この短期間で準備を終わらせるとは……さすがはレインということか……」


「俺の貢献もあるけど、どちらかと言えば騎士団にいる『黒霧の刃』の内通者からポーションの準備が整ったことが伝わるよりも早く仕掛けたいという感じだな」


「確かに、気づかれていない今がチャンスか」


「そういうことだ。俺も奇襲できるならその方が良いと判断した。最悪、全員の説得が間に合わなくても強行するつもりだったけど、幹部全員の抵抗がないならもっと簡単になる」


 ここまで説明したところで、レイヴンが質問してきた。


「仕掛ける場所は決まっているのか? 場合によっては俺たちが誘導するが……」


「ああ、それは必要ないんだ。場所は黒霧の刃の本拠地に攻め込む」


「しかし、明後日都合よくジルド様がいるかどうかは……」


「既に騎士団が手を回してくれてる。レイヴンたちはそこで待っていてくれ」


 ここでは、敢えて詳細を語ることはしない。


 レイヴンを信用していないわけではないが、決行直前までジルドに悟られることなく事を進めたいからだ。


 こうして今日の情報共有を終え、明後日を待つこととなった。


 ◇


 二日後の午前九時。『黒霧の刃』の本拠地。


 『黒霧の刃』の幹部全十一名は、ジルドの指示で急遽上階の会議室に集められていた。


 不機嫌を隠せない様子のジルドが十一人をギロッと睨む。


「お前たちをここに集めたのは——この中に裏切り者がいることが分かったからじゃ」


 幹部たちがざわめく。


 というのも、この場にいる十一名全員が言わば裏切り者。ジルドの言葉から推測するに、誰が裏切ったかまでは発覚していないにせよ、動揺するには十分だった。


「ジルド様、裏切りとはどういうことでしょうか?」


 内心冷や汗を流しながら、ブラウンが質問する。


「闇奴隷……我々のビジネスを王国に告発した者がこの中にいることが分かったのじゃ」


「な、なるほど……」


 闇奴隷とは、素性を明らかにせず取引される奴隷。貴族等の高い身分の者を非合法に拉致する場合も多い。元勇者のミリアもこの定義に当てはまる取引だった。


「騎士団に潜入している者が報告してくれたのじゃ。闇奴隷の件はクランの中でも極秘中の極秘じゃった。知っているのはお前たちしかいない。つまり、お前たちの誰かがワシを……クランを裏切って密告したということじゃな」


 実際に闇奴隷の取引を担当していた者は幹部の中でも限られるが、全員が実態を知るところではあったし、資料を確認することもできた。退団したリーシャに関しては幹部へ昇格してから日が浅かったこともあり、知らなかった可能性が高い。そういった理由でこの場の十一人が疑われている……ということを全員が理解した。


「クランを……いや、ジルド様を裏切るとはとんでもない奴がいたものだな」


 レイヴンはそう言いながら、ジルドの元へ。膝をついた。


「ジルド様、私にお任せください。必ずや裏切り者を見つけ出し、始末します」


「必要ない。貴様が裏切り者の可能性もあるじゃろう」


「……! 私も疑われているということですか……」


 残念そうな表情を作りつつレイヴンは立ち上がり、ジルドから離れた。


 実際、レイヴンの意図はジルドの懸念通りのものだった。闇奴隷に関することは、レイヴンがレインに話したことをきっかけに発覚した可能性が高い。裏切りの張本人である自分がこの場をコントロールすることで有耶無耶にしようとしたのだ。


「さて、何か知っている者、怪しいと思う者……貴様らが知っていることを全てワシに報告するのじゃ。もし見つからなければ……分かるな?」


 裏切り者が見つからなければ、皆殺しにするということだろう。疑わしき者には死を与える……これがジルドの主義。これまでも何度も見た光景だった。


 ただし、今回は少し事情が違うのも事実。ジルドは王国を手中に収めたいと考えている。そのためには、ジルドのために働く駒が必要。


 できれば幹部たちを今この場で失いたくはないはずだ。それならば、もう少し時間を稼ぐ方法はあるはず。


 二日前にレインに伝えられた通りなら、今日は騎士団がここ、『黒霧の刃』の本拠地に攻め込む日で間違いないはず。


 騎士団が到着しさえすれば戦力差を逆転できる。


「む、レイヴン。貴様、少し足が重そうではないか?」


「……い、いえ。いつもと変わりませんが」


「ルーガス。貴様もだ。片足だけ僅かに大きく見えるな。何か隠しているのか?」


「……! い、いや……何も」


 ジルドに疑われたのは、レインを信頼させるために足に取り付けた奴隷化用の魔道具だ。これだけ疑われている状況で、しかも奴隷化していることが発覚すれば一発アウト。


(まずいな……)


 レイヴンとルーガスから、冷や汗が滴り落ちた。


「ほう、答えられぬと。では、ワシ自ら暴こうではないか!」


 疑念を抱いたジルドがレイヴンたちに詰め寄ったその時。


 ドガアアアアアアアアアンンンンッッ‼︎


 部屋の扉が爆撃を受け、白煙を上げたのだった。

更新間隔が空いてすみません。


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