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第17話:神聖再生

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 『神聖再生(ヴィーナス・ヒール)』を獲得しました!

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 どうやら、エリアボスを倒したことでレベルが上がり、新しい回復魔法を覚えたようだ。


 確か……レベル10で覚えられる全属性回復魔法だった気がする。


 ゲームのようにステータス画面は見られないが、ステータスもかなり上がったような感覚がある。


 ともかく、これにてエリアボスの討伐は完了。


 これは予定通りだが、予定通りにいかなかったこともある。


「レイン……!」


「ああ、今行く」


 勇気を出して皆を守ろうとしたシオンが大怪我を負ってしまっているのだ。


 千切れてしまった右腕から大量の血が流れている。もしかすると、内臓系にも深刻なダメージを負っているかもしれない。一刻を争う状況だ。


「シオン、しっかりして!」


「かなり傷が深い……早く街に連れて戻らないと……」


 俺が戻った時には、仲間の二人がシオンの応急処置を始めていた。


 とはいえ、狩場に持ってこられるアイテムは限られている。せいぜい、回復ポーションと包帯くらい。これほどの怪我だと、止血しながら高価な回復ポーションを湯水のように飲ませても街に戻るまで保たない。


「ちょっとどいてくれ」


 俺は、仲間の二人をかき分けてシオンの前で膝をついた。


「何するのよ⁉︎ まだ止血が終わってないのに!」


「邪魔をしないで!」


 冷静さを失っている仲間の二人が文句を言ってくる。


 だが、今は丁寧に説明している時間が勿体ない。


「その程度の処置じゃ街に戻るまでに絶対に死ぬ。無駄だ」


「……っ⁉︎」


「ちょ、あなた……そんな言い方! やってみるまで分からないじゃない!」


 と、その時だった。


「……新人の言う通りだ。ガハッ……。俺の身体が今どうなってるのか、俺が一番よくわかってる。もうこの身体は長くない。奇跡的に街まで生きて戻れたところで、この怪我を癒せる回復術師なんて世界のどこにもいねえよ……」


 シオンが文字通り血反吐を吐きながら言葉を発した。


 やはり、内臓にダメージを負っているようだ。今こうして意識を保っていられるだけで奇跡に近い状況だな……。


「そんな……」


「嫌だ、嫌だよ!」


「ガハッ……! リーン、シーア。今までありがとな。お前たちとの旅……楽しかったぜ。そして、最期まで不甲斐ないリーダーで悪かった……。俺のことは忘れてくれて構わねえ……ってかっこつけたいところだが、時々思い出してくれると助かる……」


 シオンは痛みを堪えながら、無理やりに笑顔を作っていた。


「シオンは不甲斐なくなんかないよ! 最期の挨拶みたいなのはやめて!」


「そうだよ! 諦めちゃダメだよ……!」


 やれやれ。映画のワンシーンにでもなりそうな物凄く感動的なやりとりだ。フィクションならこのままシオンは息絶え、仲間の二人は涙を流すだろう。


 だが、ここには俺がいるのでそうはならない。


「勝手に死なせねえよ」


 俺は、さっき覚えた『神聖治癒』を使用。


 眩いほどの白い光がシオンを包み込み、急速に肉体が再生していく。


 まずは外からは見えない内臓系が再生し、切れてしまった血管や神経系が次々と元に戻っていく。最後は欠損した右腕が再生し、怪我の跡は完全に消えたのだった。


 全属性回復魔法は、『再生』がキーポイントになる。単属性の回復魔法は、あくまでも対象者の自己治癒能力を促進する作用の魔法しかない。


 対して、俺が使った全属性の回復魔法は、自己治癒能力を促進するだけじゃなく、同時に失われた肉体の再生もできる。


 これは、一つの属性ではシングルタスクしかできないのに対して、二つ以上の属性なら片方を治癒促進、もう片方を肉体再生という風に仕事を割り振ることでマルチタスクが可能になるからだ。


 原理的には単属性でもリソースを分散することで、擬似的な役割分担——言わば、論理属性(スレッド)を作り出すことで、マルチタスクが可能にはなる。


 だが、単属性ではあくまでもリソースを分散するだけなので、治癒と再生のどちらも中途半端になってしまい、実用的ではない。


 ともかく、これにて治癒完了だ。


「い、痛くない……だと? あの状況から⁉︎ ど、どういうことだ……⁉︎」


 死を覚悟していたシオンは、動揺しているようだった。

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