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第12話:シャドウ

 ◇


 ——ということで、受けてきたのが『ブラックウルフ』の討伐依頼だ。


 狼型の魔物の中では『ウルフ』が最弱。『ブラックウルフ』はウルフ型の魔物の中では下から二番目に強いと言われている。


 なぜ最弱の『ウルフ』ではなく、『ブラックウルフ』なのかと言えば、さすがに『ウルフ』では弱すぎて、冒険者ではなくても倒せるので参考にならないからとのことらしい。


 今回の依頼では俺はミリアの監督に徹し、ミリア自身がこいつを倒さなきゃいけない。


 俺は危なくなった時に助けるのみ。


 ミリアには冒険者ギルドから仮のギルドカードが渡されている。このギルドカードに刻まれた文字『ブラックウルフ 0/1』を対象の魔物を倒すことで『ブラックウルフ 1/1』にすれば試験は合格になる。


 前世の記憶を失っている間は気にしなかったが、この辺は本当にゲームみたいだな。


 ところで——


「どうしてファミリーネームを『シャドウ』にしたんだ……?」


 ミリアは俺の助言を受けて本名とは別の名前で登録したわけだが、どういうわけかファミリーネームを俺と同じ『シャドウ』にしていた。


「え、ダメでしたか⁉︎」


「いや、ダメというわけではないが……。俺と同じだろ? 事情を知らない人が見れば、兄妹とか……いや、下手したら夫婦に見られるぞ?」


「そうですね。私は一向に構いませんよ?」


「ええ……?」


 俺は、思わず困惑してしまう。


 まあ、別に間違われても実害があるわけではない。ミリアさえ良いのなら構わないのだが、俺としては……少し気になるというだけの話だ。


 そんな会話をしながら歩いていたら、目的地——ノーブル山の麓に到着した。


 王都からほど近い場所にあるこの山は、標高の低い麓は弱い魔物が生息しており、標高が上がるに連れて強い魔物が出現するようになる。


 『Sieg』では、初心者から上級者に至るまで、皆が通い詰める狩場だった。


 麓は木々や草花など緑で溢れており、幻想的な雰囲気を感じる。ゲームでは飽きるほど見た光景だが、実際にこうして目にすると心動くものがあった。


「よし、じゃあさっさと『ブラックウルフ』を片付けよう」


「ですね!」


 俺とミリアは近くを目視で魔物を探す。


 ここで、問題が発生した。


「あれ? 魔物が全然いませんね……?」


「だな。……っていうか、魔物が殺されてる」


 少し遠くを見ると、至るところに素材回収済みの魔物の亡骸が転がっていた。


「他の冒険者に狩り尽くされてしまったのでしょうか……」


「多分そうだな。この様子じゃ、探しても『ブラックウルフ』が見つかるかどうか……」


「困りましたね。失敗すると罰金ですし」


 この世界は『Sieg』そっくりなのだが、魔物のリポップはゲームのように数分でポコポコとされるわけではない。どうしても魔物の数が戻るには、数日から数週間程度の時間が必要だ。


 とはいえ、今日は諦めて出直す……というわけにはいかない。主に貯金的な理由で。


 こうとき、ゲームではどうしていたかを思い出すと——やることは一つか。


 やれやれ、面倒だが仕方ないな。


「仕方ない。少し山を登ろう。標高を上げた場所にも生息していたはずだ」


 標高を上げると生息する魔物が強くなってしまうので、報酬金額が変わらない以上は無駄に労力をかけるべきではない——が、依頼を達成できなければそれこそ意味がないからな。

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