夕暮れのノスタルジー
ハーブティーとの出会いが、私を変えた。
言い方が大きいかもしれないが、夢中になれるものを見つけられると世界が変わる。
毎日、好き放題ハーブティーを作った。
初めは、作りたいだけで飲んでくれる人のことを考えてなかったのだが、屋敷の皆から徐々に口コミですごい味のするハーブティーの噂が広まり、領民からもちらほら要望を頂くようになった。
領民の多くが農作業に従事しており、肉体労働をした後のすごい味のハーブティーは、ある意味クセになるという、なんとも微妙な評判をもらっている。飲んだ翌日がすごく楽と言ってもらえるのは素直に嬉しかった。
この頃から、ハーブティーをお金を頂いて販売するという方向に切り替えた。需要が高まり、お金を払うからハーブティーが欲しいという人が徐々に増えてきたのだ。薬草も無限や無料じゃないしと売手と買手に無理のない価格設定をオルトに相談しながら決定した。
それに伴って、きちんとハーブティーを作るため、私の部屋ではなく、一部屋用意し、時間が許す限り作った。皆、手の空いた時手伝ってくれたが、特にマンドラゴラは私の助手とも呼べるほど貢献してくれた。
薬草畑の拡充も進んでおり、毎日リグさんとの朝食で進捗状況を聞く。パックとマンドラゴラが一緒になって毎日畑仕事をしてくれ、安定して収穫出来ているようだ。
ある日、マンドラゴラの葉っぱが一枚、はらりと枯れて取れてしまった。薬草畑の面倒を見ながらハーブティー作りまで、働かせすぎたとかなり反省したが、よく見ると、取れた葉っぱの後に新しい葉っぱが生えてきていた。マンドラゴラ曰く、ハーブティーを飲むようになって、更に活力が湧いてきたので、新しい葉になったとのこと。そういうものなの?と思ったが、よく見ると、全身、ハリ・ツヤが良くなっている。良かったとほっとした。
ハーブティー作りが生活の中心になってきて2ヶ月が経つ頃、叔父に散歩に誘われた。
夕暮れに染まる薬草畑は、どことなくノスタルジックで、叔父と手を繋いで歩くひと時がとても印象深いものになった。
「ソニア、疲れてない?」
叔父が握った手を軽く振り、聞いてくる。
「毎日が充実していて、疲れてはいないと思うのですが、こうして叔父様とゆっくり話せると、ほっとします。」
「そう。好きなことに取り組むことは夢中になれるし、それが楽しいのも分かるから、ソニアを応援しているけれど、時々は息を抜いてね。」
「はい、そうします。今日は一緒に散歩して頂いて、とても嬉しいです。」
「ソニアにこれを渡そうと思って。」
叔父がポケットからケースを取り出す。それを開けると、いつかのピクチャーアゲートがネックレスになって収まっていた。石の周りに銀色のツタが絡まり、美しい額縁になっている。
「わあ、きれい。」
叔父はネックレスを手に取り、私の後ろにまわり、首元にネックレスをつけてくれる。
「嬉しいです。大切にします。ありがとうございます。」
月並みな言葉しか出てこないが、正直、涙が出るほど嬉しかった。
今日は、誕生日でも何でもない普通の日。だけど、私にとって、とても思い出深く、生涯の中で大切な記念日となった。




