情熱の配合
酸っぱいハーブティーの試飲会終了から部屋に引きこもった私。
机の上は譲ってもらった薬草で溢れかえっている。薬草に関する本を片手に、黙々と調合をする。
今回は、試飲できるようにアルコールランプと三脚台、三角フラスコを叔父に借り、お湯を沸かせるよう準備した。
火事には気をつけて、と念を押された。お湯の用意をリズにお願いする方が良いのは分かっていた。
だけど、自分で好きにやってみたくて一人で作業することをお願いしたら、そばにいたマンドラゴラがシュタッと根っこを手のように上げ、見張りは任せろ的なジェスチャーをした。
それが良かったのか、私の願いは叶えられ、現在にいたる。
マンドラゴラは、薬草の近くにいると安らげるらしく、くつろいでいる。
私がむしり取って散らかした薬草の葉っぱをきれいに仕分けしてくれ、なかなか良いコンビになりつつある。
まずは単品で試飲をしてみた。単品での風味は大体、本に書かれていることと一致して、納得できたのだが、これを配合するととんでもないことになる。
「げほっ、ごほっ。」
新たに配合したものを試飲してみると、渋い。渋すぎて咳き込んでしまった。少しの量で試したのに。
見た目は、普通の黄緑色だが、侮れない。
机の上で、正座のような座り方をしたマンドラゴラは、いたって普通に試飲している。これを飲んでいると心が落ち着くそうだ。良かったね。
単品では割と普通なのに、配合するととてつもなく味にインパクトがあるのだ。薬草✕薬草の効果なのか。
これじゃあ、皆今頃大変なことになっているだろうと考える。
朝の試飲会の後、料理長から残りの小袋を試したいと言われ、プレゼントしたのだ。どんな味なのか興味が湧いたらしい。屋敷の皆にも、希望者に飲んでもらって良いと伝えたのだが、おそらく小袋全て、ぶっ飛んだ味だろう。
小袋を料理長に渡すとき、飲んだことによる苦情は受け付けませんと言っておいたが、大丈夫だろうか。
それでも、配合することは楽しい。
あの葉っぱとこの葉っぱ、色々変えながら配合していく。試飲する度、その風味に身悶えするのだが、何かに取り憑かれたように、延々と作業を繰り返していた。
気がつけば、またしても真夜中。あれ、ご飯食べそびれちゃった。多分、リズが呼びに来てくれたんだろうけれど、気が付かなかったんだろうな。
マンドラゴラも同じようにご飯抜きだ。マンドラゴラにお腹空いてないか聞いてみると、ハーブティー飲んでるから大丈夫とのこと。
このハーブティーで満足してくれるマンドラゴラはいいヤツだ。
そこから、また作業に戻る。小袋の数は数え切れないくらい。配合を書いた紙の文字が段々乱れてくる。
もっとやりたいんだけれど、眠気に襲われる。さすがに2徹はきつい。
ウトウトしながらも手を動かす。眠気を吹き飛ばすハーブティーを作ろうと思って、これまで作ったデータから特にシャキッとしそうな配合をしてみる。
これを試飲してみようとアルコールランプの芯に火をつけた時、眠気の限界が訪れ、机に突っ伏してしまった。
それを見たマンドラゴラが迅速にアルコールランプに蓋をし、火を消してくれたのは後で知った。
寝落ちした私は、朝まで目覚めなかった。
◇◇◇
ソニアが寝落ちしてすぐ、ジルとリズがそっと部屋に入る。部屋の外で待機していたのだ。
「頑張り屋さんだね、ソニア。」
ジルに抱えられ、ソニアはベッドに運ばれる。その間、マンドラゴラはリズに無表情で偉い偉いと葉っぱを撫でられ、大層恐縮していた。




