ハーブティーの効能
草木も眠る丑三つ時。
私は、部屋で一人、内職をしていた。
先日、薬草を乾燥させる作業中、ふと頭をよぎったのだ。ハーブティーが飲みたいと。
前世では、気の向いた時飲んで結構癒やされていた。ハーブを数種類配合することで、味や香りに違いが出る。様々な種類を試してみるのが楽しくて色んなお店のものを飲んでいた。
好奇心で、温室で乾燥させている薬草を使い美味しいハーブティーが出来ないか配合していたら、あっという間に真夜中になった。途中、心配して様子を見に来てくれたリズは、無心で取り組んでいる私を見て、ご無理のないようにとだけ言って部屋を出た。
やりたいことをやっていると、疲れも感じにくいようだ。
ちょっと不安なのが、薬草の香りを嗅いだり、効能を調べたりして配合しているが、味見はしていない。
何種類か作って、皆で毒見しようと考えているのだが、果たして大丈夫なのか。まあ、やってみればいいか。
気が済むまで内職をしていたら、夜が明け、空が白んできた。
前世から久しぶりの徹夜。
窓から景色を見ていると、俄にめまいが。10歳で徹夜はしんどい。倒れるようにベッドにダイブする。
目を閉じるとあっという間に意識が途絶える。
再び目を開けると、丁度朝日が登っていた。一瞬眠ったようだ。
机の上に20個ほどの小袋がある。それぞれ、配合した薬草名を書いているので比較しやすいはずだ。
この中からいくつか持って、食堂に行こう。
身支度をリズに手伝ってもらい、食堂へ。リズはなにか言いたそうだったが、スルーしてしまった。
食堂には例のごとく、パックとマンドラゴラがお行儀よく座って待っている。
「ソニア、どうしたの?目の下真っ黒だよ。」
何ですと。
黒いとは、もしやクマ?
ぼんやりしていたから鏡をちゃんとみていなかった。リズが言いたかったことはこれか。
「美味しいお茶を作ろうと思って薬草の配合に夢中になってたら、朝になってたのよね。」
苦笑いする私を見て、パックはソニア頑張ったんだねと言ってニコニコしている。マンドラゴラは心配そうにアワアワしている。持ってきた小袋を渡し、見てもらう。
「へえ〜、薬草のお茶かあ、時々、飲むことあるんだけど、大体一種類だけだから、色んな薬草を混ぜてあるのって、面白いね。」
「後で、皆に試飲してもらいたいの。」
「嬉しいな、楽しみにしてるよ。」
畑仕事から戻った叔父とリグさんにも目の下のクマを突っ込まれつつ朝食を摂る。
食後、リズにお願いして、小袋のハーブティーを淹れてもらう。
いつも無表情なリズだが、少し眉間にシワを作っている。何故だろう。
着席した皆にカップに淹れられたハーブティーが配られる。
手元にきたティーカップの中を見て、私も眉間にシワを入れる。このハーブティー、おかしい。
手に取って近くで見ると、カップの中の液体は黒よりの紫色で炭酸水のように泡立っている。青色系のハーブティーを飲んだことがあるので、色はまだ分かるのだが、発泡しているのは何だろう。飲むのが怖い。
そう思って躊躇していたら、他の皆はさっさと口に運んでいる。
「飲んで大丈夫ですか。」
不安になって聞くと、リグさんが一気にカップの中身を飲み干して言う。
「ちょっと刺激があるけど美味いぞ。」
「初めて飲む味だけど、好きだよ、これ。」
パックの言葉にマンドラゴラも頷いている。そうなの?
「小袋に書いてあった複数の薬草が混ぜ合わされて、何かの条件を満たしたら泡立つんじゃないかな。大丈夫、美味しいよ。」
優雅にお茶を飲みながら叔父が教えてくれる。
皆が飲めるって言うのなら、作った本人が飲まなきゃね。
ぐっとカップの耳を持ち、一口グビッと飲んでみる。
「ーーっ、酸っぱい!」
目に涙が浮かぶくらい酸っぱい。炭酸より酸味が強烈だ。皆何で平気なんだ。これ、大失敗じゃないか。
「ごめんなさい、これ、人様に飲ませちゃ駄目なやつでした…。」
シュンとした私に皆は優しい。
「全然、そんなことないよ、僕、前にお腹空いて生で食べた薬草あったけど、それすっごく辛くて食べた後、当分寝られなかったから。」
パック、色々大変だったんだね。
「ワシも初めて育てた薬草を試しに食べたことあったが、苦すぎて、次に何を食っても苦く感じるようになったことがある。」
「私も面白半分で調合途中の薬草舐めたことあるけど、咳が止まらなくなってね、あれは大変だった。」
皆、何かしらやらかしている。
マンドラゴラだけは、普通に美味しいとジェスチャーしてくれる。それは良かった。
酸っぱいのは、配合の量を調節することにし、また今後トライすることにした。目指した効能は”スッキリリフレッシュ出来るもの”だったので、広い意味でそこは合格だったと思うことにした。
ちなみに、リズにも飲んでもらったが、きっちり無表情で美味しいと言ってもらった。ごめんね、ありがとうリズ。




