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黒パンと干し肉スープ

 何があったのかな?


 誰に話を聞こうか見回すとアメリがいる。

 こそっとアメリの側に行き、袖を引っ張るとアメリはハッとしてこちらを見る。


 「お嬢様、大変なんですう。」


 アメリは語尾を伸ばして話すクセがあって、緊迫した状況でもそれを感じさせない。


 「何があったのですか?」


 「はい、あの怖い顔の植物が、いつの間にか調理場に入り込んでいて、食材を食い荒らしてしまったんですう。捕まえようと調理場の皆、頑張ったんですけど、うまくいかなくてえ。困って、リズ様にお願いしたら、秒殺であの状態ですう。」


 「リズはすごいですね。」


 「はい、すごいんですう。」


 無表情のリズは、葉っぱを握った手の力を強め、自分と目線が合う位置にマンドラゴラをやや持ち上げる。


 「貴方は、こちらの制止に応じず、略奪行為をやめず、果ては暴力行為に及ぼうとしましたね。」


 マンドラゴラは、まるでヘビに睨まれた蛙のようだ。滝のような汗?をかいている。


 「暴力行為とは?」


 アメリに聞いたつもりが、リズが答えてくれる。

 

 「私に捕まるまいと、魔力を用いて反撃しようとしました。その前に捕らえましたが。」


 「リズ、けがはしていない?」


 「大丈夫です。」


 リズは淡々と話してくれる。しかし、マンドラゴラをガン見したままだ。


 「食材はどの位の被害ですか?」


 「貯蔵庫のものは無事でしたが、朝食用に調理場で準備されていたものがあらかた駄目になりました。」


 料理長がリズに代わって答えてくれる。


 「今日は皆朝食抜きなのですね。」


 そう言うと、皆の視線がマンドラゴラに集まる。皆、お腹すいたよね。そばで、パックもお腹を押さえている。どこいってた。


 「ごめんね、ソニア。マンドラゴラ、鞄の中にいなくて、部屋の中探してたら、手遅れに。」


 リズとマンドラゴラを見て、申し訳無さそうな顔をするパック。


 「ねえ、マンドラゴラって私達と同じものを食べるの?」


 「いやあ、これまで一緒に旅してきてこんなことしたの、初めてだよ。ここの食事、とっても美味しいからね、よっぽど気になったんじゃないかな。」

 

 マンドラゴラがパックの方を向いて高速で何度も頷く。会話出来るの、ホントだ。

 リズは今にもマンドラゴラの葉っぱと根っこを別々にしそうだ。それで解決出来そうなのだが、うちのご飯を褒めてくれたしなあ。


 「リズ、初回限定で許してあげるのはどう?」


 「許すにあたっての信頼がありません。」


 「そうよね、朝ご飯食べられないし、お詫びに何か食べ物くれるわけでないし。リズがその手を離したら、マンドラゴラに魔力で攻撃されるかもしれないし。」


 そう言いながら、マンドラゴラをチラ見する。汗だくだ。パックに向かい何やら口をパクパクさせている。


 「ええっと、二度と盗み食いはしません。ここの人たちに攻撃もしません。ここのご飯を食べたいのでここに置いてください。薬草の面倒みるの、得意です。ってマンドラゴラが言ってる。」


 ほんとにそう言ってるのか、私には分からない。だが、マンドラゴラが超絶首を縦に振っている。


 「試してみる?」


 「お嬢様に従います。」


 リズは、ぱっと握っていた手を離す。ボトッという音とともにマンドラゴラは床に落下。

 起き上がり、リズにペコペコ頭を下げる。そこにリグさんが。


 「マンドラゴラっちゅうのは、こんなに人間臭いもんじゃとは知らんかった。わしからもお願いしたい、薬草畑にこいつがいると面白いことが起きそうじゃから、置いてやってもらえんかのう。」

 

 叔父を見るとニコニコして頷いている。


 「それでは、試してみましょうか。一緒に暮らすなら、ある程度の約束事があるからね?こっそり私の部屋に入ったりしちゃ駄目よ?」


 マンドラゴラは頷く。


 「大丈夫、ソニア。そんなことはさせない。君も分かってるよね?」


 マンドラゴラへ叔父の笑顔の圧がすごい。


 マンドラゴラの処遇が決まり、落ち着いたところで、やっぱりお腹すいたままはつらいよねということで、備蓄用の日持ちする黒パンと干し肉を使った料理長渾身の即席スープを皆で頂いた。マンドラゴラもうんうん頷きながらじっくり味わっていた。案外、いいヤツなのかもしれない。


 

 


 


 


 


 


 

 


 

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