一歩前へ
「はい、あーん。」
口を開けると、料理長イチオシのバター味のジャガイモスナックが入ってくる。オリーブ油でカラッと揚げられ、バターの香りと適度な塩気がとても良い。ジャガイモをスライスする幅にこだわってみましたと言う、うちの料理長は控えめに言って最高だ。前世のスナック菓子とは違う、けれどもこちらも大好きだ。
「あーん。」
言われるたびに口を開けている。たまにはあーんを返したいのだけれど、ジャガイモスナックの乗った皿は叔父の手にある。
ここは執務室で、現在、領地経営についての話し合いを真剣にしている。そう、とても真剣に。
「あーん。」
資料を見ながら、ペンを走らせ、口も開ける。中々大変だ。そして幸せだ。
先日入ってきた金貨で懐があたたかくなったので、領地経営の現状を見直してみた。
私としては、製薬できる環境をどんどん増やしたいと考えて金貨を求めたのだけれど、識字率の向上、医療施設の増加、災害への備蓄、領地内の道の整備等、大切で重要な事柄がいくつも出てくる。取り掛かるべき優先順位がわからなくなってきた。
頭が混乱してきて、あわあわしていると、叔父がお茶を勧めてくれる。
両手で受け取り、一口飲んでほっと一息つく。
「金貨足りないですね。」
ぽそっと言うと、叔父が頭を撫でてくれる。
「医療施設の増加、生活基盤への設備投資は予算を組んで進めております。災害への備蓄は、前年度二割増を実現しました。長期的に見て改善しています。お嬢様の仰る金貨が足りないというのは、全て一度に解決しようとした場合です。識字率につきましては、教える場を設けているのですが、農作業の合間、継続的に来られる者が少なく、難航しています。」
オルトが言う。
「これまで兄上が領地を治めてきたやり方を極力変えずにいたかったんだ。領民の税は据え置きにしておきたかったし、少しずつでも領地を発展させたかった。私の責任だよ。ソニアには、負担をかけてしまってごめんね。」
「いえ、領地運営に対する私の自覚が足りなかったのです。今、領地がまわっているのは叔父様のおかげです。叔父様からの補填あればこその現状を変えたいのです。」
極端な話、叔父からの補填の金額が領地の発展のための金額に近いのだ。叔父一人に背負わせていると考えると、とてもつらい。
しょげていると、また頭を撫でられる。正直、嬉しい。
「新しい事業を起こすことは良いことだと思うよ。ソニアが今回つくった金貨は、ソニアのやりたいことに使うのが一番だよ。」
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきます。つきましては、お願いがあります。」
腹をくくって、一歩踏み出しましよう。




