寝ている間に
真夜中、手持ち式のランプの灯りが部屋をぼんやり照らす。
リズは、発熱して倒れたソニアの為に汗を拭いたり、濡らした手拭きで頭を冷やしたり甲斐甲斐しく世話をしていた。ソニアが生まれて間もない頃から仕えているリズは、こうした突発的な出来事にも慣れている。
「さすが、手際が良いね。」
「はあ。」
リズは嬉しくもなさそうに生返事をした。
「ソニアが僕を心配して、熱まで出してくれるなんて叔父冥利に尽きるよね。僕は幸せものだよ。」
先ほどから、様子を見に来たジルがリズに話しかけるのだが、リズは正直うざいと思っていた。ついでにサイコパスっぽいとも。
ジルとソニアは仲が良い。それは間違いないのだが、ジルの言葉の端々が時々おかしい。普段は普通の人に見えるのに、とリズはジルをジト目で見た。
「金貨を集めたいって言ってたけれど。」
「ジル様が行方不明になられた間に、領地の経営状態を鑑みられて収益を上げる方法をお考えになっていました。」
あと、金貨の握り具合が好みだと言っていたことは伏せておく。
「ソニア、行動が急に大人になってない?」
「身の回りの急激な変化にご対応されたのでは。」
そっかあと言い、ジルはソニアの寝ているベッドに近づく。リズは一歩下がってジルに場所を譲る。
火照ったソニアの頬を撫で、ジルは目を閉じ、じっとする。すると青白い光が頬に添えた手から発せられソニアを包む。それは、僅かな時間だった。
「少しは楽になってくれると嬉しいけれど。」
そっとジルは手を離し、ソニアの寝顔を見る。苦しそうな眉間のしわは消え、明らかに呼吸も落ち着いている。
「ありがとうございます。」
ジルはリズが知る限り、唯一癒やしの魔法がつかえる人だった。
「ソニアの幸せの為なら何もかも破滅させて構わない。」
「生産性がある未来の方がお嬢様はお喜びになりますよ。」
リズは無表情で返答した。




