前回の犯人
「いただくわ。」
リズが香りの良い紅茶を淹れてくれ、イライザは口にする。気に入ったのか、少し笑顔だ。
立ち話も何だからと、応接室にお通しすることになった時は内心焦ったのだが、リズをはじめとした侍女たちのお陰で、こざっぱり且つお上品な部屋に仕上がっていた。さすが我が家の侍女ズ。
叔父は、身支度をするため席を外している。なので、私とイライザ、オルト、リズにシドの4人が集っていた。会話した方が良いのか、でも、余計なことはしない方が良いか迷っていた。
「この紅茶、どちらのものかしら?」
やはりイライザは気に入ったようだ。
「この紅茶は、スピネル島のものです。本日はストレートでお淹れしましたが、ミルクティーとしてお楽しみいただくのもお勧めでございます。」
リズが説明している。後でリズから聞いたのだが、イライザは非常に好奇心旺盛で、探究心があり、気になったことは気軽に侍女、従僕にも質問するそうだ。そして、いわゆる身分というものをあまり意識しないフリーダムな精神の持ち主のようだった。
「うちでも取り寄せてみるわ。」
イライザはリズに対し、頷いて見せる。
そうこうしていると、叔父が入ってきた。
「待たせたね。」
身綺麗にした叔父も素晴らしかった。白のスタンドカラーシャツに灰色のトラウザーズというあっさりした服装だが、眼福。良い匂いするし。
「オブシディアン伯爵令嬢、君の従者から大体の話は聞いた。秘密裏に我が家の動向を探り、古物商に査定を依頼したことを知った君は、偶然を装ってその場を訪れ、ソニアに君から金銭の貸付をする約束を取り付けようとしたんだね。」
シドが相変わらずしょぼんとしている。
「そうですわ。ジル様の失踪を聞いて、心配しましたの。それで、ラズーライト伯爵家の様子を知ろうとシドにお使いを頼みましたの。そしたら、お家の中身を換金しようとされてるってシドから聞きましたので、それならば私が御用達したいと考えましたの。」
偶然を装ったら、お互い気まずくならずに話が出来るんじゃないかと思いましたの、と。
言い終わったイライザは、少し居心地悪そうにしていた。
「あの、何故お金を用立てようとしてくださったのでしょう。」
思わず聞いてしまった。
「正直申しましたら、チャンスだと。私は、ジル様がいなくともラズーライト伯爵家とつながりを持っていたかったので。」
「前回の時に、伝えたはずだよ。君の行動は君の家の評価に繋がる。よくよく考えて、信頼できる人に相談してから行動しなさいと。」
叔父が穏やかに告げる。
「あの、前回とは。」
我慢できずに聞いてしまった。
「ジル様に私のもとで働いて頂きたくて、お願いしたのですが断られてしまって。諦めきれなくて一度うちにお越し頂こうとしましたら、お迎えに行った者がジル様に返り討ちされたのですわ。」
それって、拉致、あわよくば監禁?
シドがしょげきって、項垂れている。犯人は君か。




